佐藤厚志のレビュー一覧

  • 荒地の家族

    「荒地の家族」を読んで

    東日本大震災を題材にした小説で、10年以上も経ったというのに未だ被災者の心が癒えない現実を重々しく物語る。
    主人公、祐治は造園業を営み生計を立てている。造園会社から独立した直後に震災に遭い、造園道具全てを津波に浚われた経験をした。高校を卒業して入った会社が造園業の会社だった。本人の希望とする職業で...続きを読む
  • 象の皮膚
    生まれつきの重度のアトピー性皮膚炎で幼い頃から家族にも同級生にも教師にも疎まれ、そんな周りの人のことも疎んでいる主人公の五十嵐凛。
    大人になって、書店で契約社員として働き、日々同僚や上司との人間関係や困った客を相手に過ごしている。その最中に東日本大地震が起きる。店の片付けをする中で、あるいは営業を再...続きを読む
  • 象の皮膚
    淡々とした語りでリアル。圧倒的な救いではなく、ほんの少しだけ何かを解放したような終わり方がいいと思った。ものすごくいい人もものすごく悪い人もいない。でも皆んなちょっとずつ狂っている感じ。きっと現実ってこんなもん。
  • 象の皮膚
    人にされて嫌だったことをしてしまうかもしれない。
    人にされて嬉しかったことをできないかもしれない。
    人の振り見て我が振り直せないかもしれない。
    それでも、
    めんどくさい人に負けず、
    体の痒みにも負けず、
    災害にも負けず、
    どうにかこうにかもがいて生きてる。
  • 荒地の家族
    震災が起こって何もかもが変わるが、時間だけは生きている人間全員に平等に流れていく。
    何か劇的な変化が起こるわけでもないので、単調な話で退屈になったが、それこそが日常なのかと思った。
  • 荒地の家族
    表現の仕方が面白い。私は海辺に現れる年老いた男性(たきびをたいている方)は時空と生死を分ける存在なのではないかと感じた。たきびの煙はその有耶無耶な視界が悪いような、そんな居心地の悪さ、その中にあるどこか落ち着くところを表現していると思った。
  • 荒地の家族
    主人公には近い人の死が多く起こり、その度に辛い思いをしたと思う。その時の感情を静かに表現することで、強さを感じるとともに、生きることに対しての諦めや妥協のようなものも感じた。生きている上で死は避けられないことである。悲しみと向き合いながら、自分はどう生きていくのかを静かに教えてくれた。
    最後の物静か...続きを読む
  • 荒地の家族
    意外にもお仕事シーンが多く、日頃の疲れをポジティブに受け取れる気持ちになった。
    震災のシーンと、癇癪を起こす知加子が特に印象に残った。一緒に逃げながら助からなかった被災者や、怒りの持って行き所がない妻など、見えているようで見えていない人について自分事のように考えさせられた。
    現地を生きた作者が、何も...続きを読む
  • 荒地の家族
    厄災により、家族を失った悲痛さが語られている。
    その中で、主人公は生きている間に気付けなかった妻や家族への思いが綴られている。
    主人公の幼馴染も同じ境遇を受け、大切なものを失ってから気付く後悔がたくさんあった。
    記憶と言うものは、いい記憶が1連としてあるわけではなく、恐怖・悲しみなど嫌な記憶が頭の中...続きを読む
  • 荒地の家族
    震災前は子どもを連れて鳥の海で釣りを、荒浜では海水浴をしていました。近くのショッピングセンターにも家族で何度も行きました。サイクリング施設やサイクリングロードを自転車で走りました。今は空港をよく利用するのでこの周辺には年に何度も行っています。確かにあの辺りの海は何もなくて暗い海です。しかし、私の感覚...続きを読む
  • 荒地の家族
    悲しいお話だった。描写がすごくリアルに描かれていた。震災で歯車が狂って、不運も重なって、何もかもうまく行かなくなったのかな。いろいろ苦しいことはあるが、子供の存在は大きいなと思った。守るべきものがあるのとないのとでは、気持ちが全然違う。自分自身、今の生活を大切にしたいと感じた。
  • 荒地の家族
     最初から最後まで、ずっと息苦しい、やりきれない物語だった。
     特に主人公の祐治が、進学か就職かを決める時、逃れられない世間を知った場面は辛さが伝わってきた。
     孤独感に潰されそうになりながらも、最後に祐治に放たれた言葉に、どうでもいいから生きるんだ、とメッセージを受け取った。
  • 荒地の家族
    荒地の家族
    このタイトルが意味するものを読後、改めて理解した。主人公である坂井祐治は無骨な男である。言葉足らずで自分の思いを表現できず、ただ日々を精一杯生きている。
    荒地となってしまった街と、元に戻ることのない家族。愛情表現が不器用な祐治に個人的感情移入した作品で、終始、祐治は決して悪い男ではなかっ...続きを読む
  • 象の皮膚
    読んでいて楽しい気分には決してならないが、主人公の抱える問題が「皮膚」感覚で伝わってくる表現は読み応えがある。

    なかなか救いのない彼女の下降線が、最後のところでクッと上に向き、微かな光明を見せる。

    職場の人間模様や、人物造形がリアルだ。
    いるいる、こんなひとたち…。
  • 荒地の家族
    実際に東日本大震災を経験していたら感想が出るのかもしれない。わたしじゃ想像力が追いつかなかった、暗い感じがする作品でした。

    大切にすべきものは仕事じゃない、というメッセージがあったように思いました。
  • 荒地の家族
    震災を体験した人にしか分からない閉塞感と生活への行き詰まり。諦念。心に負った傷が巧く表現されていた。
  • 荒地の家族
    震災後、宮城県、造園業、ひとり親方。妻を亡くし、再婚した妻にも去られ、一人息子と母親と暮らす主人公の、日常と独白とも取れる内面を綴った物語。初めから終わりまで、陰鬱で、希望も見えない。読み続けるのも辛いばかりなのに、それでも、読むのをやめられない。どこへ向かうとも、出口も見えないそんなお話。
  • 荒地の家族
    終始鬱屈とした暗い世界観。
    ずっと曇り空な印象。

    震災という大災害から一変した主人公の生活。

    小さな事件がありながらも、主人公家族の日々は続いていく。
    田舎の閉塞感が文章から痛いほど伝わってくる。
    これは地元の人じゃないと描けない。

    派手な話ではない。後味も良いとは言えない。

    この物語に出て...続きを読む
  • 荒地の家族
    重いけど日本人として忘れてはいけないことだと感じた。
    東日本大震災当時は小学5年生だった。
    大きなサイレンがなりその後すぐ家に着いてテレビをつけると津波の映像が。
    最初は何を見ているのか分からなかった。
    とてつもない「海の膨張」だと瞬時に理解できなかった。

    震災を経験した人そうでない人。
    明らかに...続きを読む
  • 象の皮膚
    アトピーの痒みに支配された女性書店員、五十嵐凛の生きづらい日常である。

    本人にしかわからない痒みと日々たたかっているのがとてもわかる。

    物心つく頃だろうか、兄も弟も丈夫で綺麗な皮膚なのに自分だけが…という思い。
    小学校で「あいつはカビ」だと言われて級友や教員を避けて、教室の隅でじっとしていた我慢...続きを読む