佐藤厚志のレビュー一覧
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ネタバレアトピー故に幼少期からその見た目を非難され続けてきた凜さん。
両親ですらアトピーのことを気合が足りないせいと理解してもらえず、兄弟からもからかわれ育ち、現在凜さんは非正規雇用の書店員として働く日々。
癖の強すぎる書店の社員とパートたち。
入り組む男女関係にちょっとだけ巻き込まれたこと。
震災が起きて、書店の復旧まで、大変だったイベント。
全て肯定してくれるバーチャル彼氏。
凜さん、現実を一生懸命生きてる。
アトピーといえば、昔ディズニーランドでイッツアスモールワールドに並んでいるときだったか、
並びながら一緒に来ている友達としゃべっている男の人が、首筋をずっと掻いていて、赤くかさついた皮膚とか、印象的。アトピーって大変だな。 -
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生まれつきの重度のアトピー性皮膚炎で幼い頃から家族にも同級生にも教師にも疎まれ、そんな周りの人のことも疎んでいる主人公の五十嵐凛。
大人になって、書店で契約社員として働き、日々同僚や上司との人間関係や困った客を相手に過ごしている。その最中に東日本大地震が起きる。店の片付けをする中で、あるいは営業を再開する中で垣間見える人間の本性。
まだライフラインも復旧しない中で営業を再開した書店に押しよせ、「なぜ新刊が手に入らないんだ!」と怒号を浴びせる客、「なぜこんな時に営業を再開するんだ!」というクレーム、チャリティーで訪れる歌手の対応に苦しむ書店員たちの姿に悲しみや諦め、憤りを感じるけれどこれがリアルなのだろう、という気にさせられる。
非正規で働き余裕のない生活、家族からも受け入れられない孤独感、アトピーで痒い身体を掻きたい、でも掻けない、という苦しみ、震災後、薬も食料も思うように手に入らないという辛さ、という主人公の描写から、この作品は震災後小説であり、光の当たりにくい社会の一片を切り取った作品だと感じた。 -
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ネタバレ◼️ 佐藤厚志「荒地の家族」
宮城県が舞台。震災を挟み、空虚な風景が包む中、男の過去がフラッシュバックし現在の心に影を落とす。2023年芥川賞。
著者さんは仙台出身でずっと仙台在住のようだ。震災でつぶさに感じたことをも小説に落とし込んでいる、と推測する。それだけ、重い気がする。芥川賞受賞時、書店員として働いていて話題になったとのこと。
造園業者の祐治は震災の2年後、息子の啓太が幼い頃に最初の妻を病気で亡くした。人の紹介で再婚した相手は流産して半年後に家を出、接触を完全に拒絶されている。啓太は小学6年生となり、最近会話が少なくなった。震災で昔と変わってしまった海岸を逍遥しながら、うまくいかなかった人生の記憶がよみがえるー。
主人公は、社会生活に誠実に向き合おうと、実際に向き合っているつもりであるのに、社会や人に伝わらなかったり、理解されない者。さらに様々な人生上の災厄、苦難が降り掛かりもがいている人間だ。
年老いた母や息子が身近にいるものの、また仕事はまだバリバリこなしているものの、老いを意識せざるを得ない世代の孤独を背負っている。震災は大きなショックを与えた出来事で、実際、主人公に影響を与える幼なじみの妻子は津波で亡くなっている。ただ、この作品では間接的に大きな要素として入ってきているように見える。
人知れず、悩みもがき生活に煩わされる。人間関係が影響を及ぼしていく。人の生の姿が繰り返し描かれる。人は些細なことで気分が左右される。さらに本人的に大きな出来事は蝕むように、逃げようもなく心理的に作用する。話せる相手がたとえいたとしても、他人がすべて理解するのは不可能だし、手を施すこともできない。
津波被災地では自治体が土地を買い上げて、昔は町があった地域もだだっ広い更地になったり、巨大な防波堤が設置されたりしている。読んで改めて驚く。こうしたいまの風景を織り込みながら、等身大の姿をリアルに描きだしている。
とはいえ、とりわけ佳作にはあるものだが、読後感にはちょっと出来すぎかな・・なんて思っちゃうのが読み手の正直なとこではありました。 -
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芥川賞のわりに(?)それほど尖ったところがない。読者は物語の中でいくつもの死に遭遇するが、そのすべてが震災に直接結びつくわけではなく、震災はあくまでも背景として抑制的に描かれるのみである。
死を待つ行列に並ぶ一人である、との主人公の述懐に象徴されるように、生も死も一つの偶然であり、その無意味さが故に残されたものは自責を苦しみ抜く。
季節や草木、海といった風土や自然、そこに根を張ってきた老人たち、やがてはそこに溶け込んでいくであろう主人公とその肉体が事実そこにあるものとして素朴に淡々と描かれ、巨大な防潮堤や重機で均された何もない空地との対照が死と生を区切る壁と重ねられているように感じた。 -
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ネタバレ何の予備知識もなく「団地に魔神とはこれ如何に!?」と読み始める
勝手にミステリーを想像していたが、
少年の日常と少しずつ変わる心の変化が描かれた物語だったので魔神の正体も期待していたものとは少し違っていた
勝手に騙されて勝手に期待を外した
庭師は何かのメタファーなのかな
団地のピンチにどこからともなく現れて
悪者を成敗して消えていく
ここだけ妙にフィクション味があり
団地のディストピア感を際立たせていて印象的だった
ヒーローのようであり、ふれてはいけない危ない存在のようでもあった
親から暴力がなにごとも無く当たり前の日常のように描かれていることが少し悲しかった -
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正しくないことが許せない、仕事に誇りを持っているホテルマン、大山茂(推定48歳)。従業員への、無自覚のパワハラ、セクハラ、客に対する毅然とし過ぎた対応。自己認識と、現実の乖離が、見ていてひやひやする。というか、完全にヤバい人。支配人には認められているようで、まったく認められておらず、妻はパチンコ狂いで、夫に対して口もきかなければ、何の反応も示さない。行きつけの書店でのカスハラ行為に、げんなりするものの、世間が自分を理解してくれていないと、完全に思い込んで、あくまで己の正義を肯定、貫き通そうとするこの男が、どんどん気の毒になる。そして自滅。
世間に眉を潜められ、疎まれても、こんな生き方をする人間は幸せだな、ということなのか。滑稽でいて、ほのかに悲しい。芥川賞受賞作、『荒地の家族』との作風の違いに、おどろいた。 -
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佐藤厚志、初読み。
『芥川賞』受賞作品。
40歳の植木職人・祐治。東日本大震災で仕事道具を失い、その2年後、妻・晴海を病気で亡くす。再婚し、妻・知加子との間に子どもを授かるも、生きて産まれてくることはなかった…そして、知加子は、祐治と啓太のもとを去る。
幼馴染・明夫は妻と娘を震災で亡くし、みずからはがんを患っていた…
元の生活に戻りたい…
が、戻れない…
その思いを打ち消すように、身を粉にして、働く祐治。
同じ時代なのに、なぜだか昭和三十年代のような感じを受ける。
白黒でしか言い表せないような、薄暗い世界が広がっている。
そんな中、息子・啓太のために懸命に働く祐治。思春期を迎えた啓太との関係はぎこちない…
震災から10年以上が経った今も、震災から立ち直れない人たちはたくさんいるのだろう。
祐治のように、なんとか、なんとかして生きている人たちが。