佐藤厚志のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
震災の被害は日本に居ればいつその厄災
に巻き込まれるかは誰もわからない。
この本に出てくる亘理にはよく行く店が
あり鳥の海の無くなっ行き付けの店の
暖簾が店は影も形もないのに吹きさらに
耐え残っていたのを覚えている。
その鳥の海の背後には山と化した無惨な
ゴミの山が高く積み上がっていて
その場に立ち尽くして動けなかった。
植木の穴は土で埋められるが、失った
心の穴は埋められず周りの景色も人も
全て無に期してしまった。
それでも海は変わらず凪いている、
そこに住んで生きて行く日々は心を無
にして前に進むしかないのだ。
町は少しづつ変わって行くが、失った日々は
戻って来ないが最後の啓太の久しぶりの -
Posted by ブクログ
芥川賞らしい、感情の揺れ幅を丁寧に描いた作品。
最初にパラパラとページをめくった時は割と余白も多く、また本自体も割と薄い方だったのであまり期待はしていなかったが(失礼すぎてすみません)、そんな私の軽率な予測とは裏腹に何とも奥深い作品だった。
未曾有の震災で失ったものはあまりにも多く、それでも生きていくしかない。また震災とは関係がなかったとしても、その前後に起こった悲しい出来事はどうしても震災と関連付けて思い起こされる。個人の心情とはおかまいなしに街も人も生きていく。そうするしかない。その流れについていけなくても、過去に囚われる日々だったとしても、ほんの小さな喜びや、喜びとは認識できないものを糧 -
Posted by ブクログ
ネタバレアトピー故に幼少期からその見た目を非難され続けてきた凜さん。
両親ですらアトピーのことを気合が足りないせいと理解してもらえず、兄弟からもからかわれ育ち、現在凜さんは非正規雇用の書店員として働く日々。
癖の強すぎる書店の社員とパートたち。
入り組む男女関係にちょっとだけ巻き込まれたこと。
震災が起きて、書店の復旧まで、大変だったイベント。
全て肯定してくれるバーチャル彼氏。
凜さん、現実を一生懸命生きてる。
アトピーといえば、昔ディズニーランドでイッツアスモールワールドに並んでいるときだったか、
並びながら一緒に来ている友達としゃべっている男の人が、首筋をずっと掻いていて、赤くかさついた皮 -
Posted by ブクログ
ネタバレ造園業を独立して一人で切り盛りする祐治。
震災が起きて、津波で何もかもを失った街。
それから妻を病気で亡くし、幼かった息子はもう中学生になろうとしている。
再婚相手の知加子との間に出来た新しい命はこの世に生まれる前に流産し、知加子は祐治の元を去っていった。
かつて子供時代に一緒に遊んだ明夫は、震災で妻子を失い、職を転々として病気に体を蝕まれ、密漁に手を出し、自ら命を絶った。
色んなことがあった。失って、再建されていく街。
陰鬱な雰囲気で、ああやだなーやだなーと思いながらもすいすい読んでいた。
人生の苦労と悲しみと、幸せ。
象の皮膚の作者と一緒だったとは! -
ネタバレ 購入済み
「荒地の家族」を読んで
東日本大震災を題材にした小説で、10年以上も経ったというのに未だ被災者の心が癒えない現実を重々しく物語る。
主人公、祐治は造園業を営み生計を立てている。造園会社から独立した直後に震災に遭い、造園道具全てを津波に浚われた経験をした。高校を卒業して入った会社が造園業の会社だった。本人の希望とする職業では無いようだが、辛抱強く仕事に励んで造園の仕事を覚えた。その甲斐あって、独立を果たしたが、震災に全てを壊されて、将に裸一貫の出発になった。造園とは関係の無い様々な仕事をして、妻と息子を養うのである。しかし、妻は近所の老人の生活の手助けしていたが、無理がたたり病気で亡くなった。
祐治は、しばらくして