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Posted by ブクログ
佐藤厚志『荒地の家族』新潮文庫。
第168回芥川賞受賞作。
様々な形の別れや喪失を淡々と描きながら、読者に生きることの意味を問いかけるような生々しい小説だった。
自分の経験からすれば、死別よりも生き別れの方が悲しみと苦しみが深いように思う。本作の主人公である坂井祐治が会わせてもらえないことが解っているのに、何度も元妻の職場を訪ねて行くことも理解出来る。自分にもそういうことがあった。
また、この歳になってみると、自ら生命を断つことが如何に卑怯で家族や知人にどれほど迷惑を掛けるかよく解る。数年前に風の噂で、以前勤めていた会社で同じように出世を重ねていた同期が自殺したと聞いたが、不思議と心が痛まなかった。その同期が自殺するに至った理由も何となく解った。自分はそうなる前にその会社を辞めたのだ。
さて本作。舞台になる阿武隈川の河口の荒浜の近くというと、東日本大震災で壊滅的な被害を受けた地域である。大震災の発震した日の夜、毛布に包まりながらラジオに耳を傾けていると『荒浜で2、3百体の遺体が……』という、とても信じられないニュースを聞いたことを覚えている。
そんな海辺の街で40歳の植木職人である坂井祐治は十数年前の東日本大震災の津波で2トントラックに積んだ仕事道具を全て失い、その2年後には妻を病気で失う。その後、祐治は知人の紹介で再婚するが、その妻は出奔し、一方的に離婚届を送り付けて来た。
以来、息子と母親と3人で暮らしていた祐治であるが、息子との関係はぎこちなく、自分の肉体を痛めつけるかのように仕事に没頭していた。目にするのは巨大な防潮堤。再び海が膨張すれば、そんな防潮堤も意味をなさぬはずなのに……
生きるというよりも、何かに追い立てられながら、逃げるように彷徨い続ける淋しい男の物語。
本体価格520円
★★★★★
Posted by ブクログ
2022年下半期芥川賞受賞作
東日本大震災で家族を失い残された人達の話
妻を失い、後妻の流産、その後三行半。
なんとなく始めた仕事、シゴキに遭うも独立。
不器用な裕治は母と子供の3人で暮らす。
・(貴方は無事)生き残って良かったね
・(貴方が悪いわけじゃない)自分を責めないで
・前を向いていこう
自分の周りの人の身に起こった事だとしたら…やはりこんな事は言えないな…と。ただ見守るだけ。
裕治の母、和子。明夫の父、六郎の様に。
残された側になってみれば、ただ進む(動く)だけになるよね。裕治や明夫の様に…それが正しいとか悪いとか関係なく。
芥川賞作品の特徴は押さえつつ、中身が入ってくるのは、父親として男として共感できるとこがあるからだろう
Posted by ブクログ
仙台の丸善(作者の元職場)で購入
→しかし、帰りの高速バスに置き忘れる・・・
妻の実家が物語の舞台でもある宮城県の亘理町で、何度も行ったことがあるので読みながら『あの辺かな』『この辺かなぁ』と思いながら読むことができました。
震災をテーマにする場合『再生』をテーマにするか『再生』でオチをつける物語が多く見受けられます。しかし解説で小川洋子も言ってるとおり本書に『再生』はありません・・・
一度壊れてしまっても再生する物もありますが、再生しない物もあります。
形の無いものは、あの日あの時『壊してしまった』と後から自覚する事はあっても、その時に『壊した』という自覚は無いものです。
自分だけの物を壊してしまっても、誰かとのモノは壊したく無いと本書を読んで思いました!
植木職人の坂井祐治は東日本大震災で商売道具が流され、その二年後妻をインフルエンザで失う・・・
その後再婚するものの・・・
祐治は肉体を酷使する事で仕事に没頭する。
息子との関係はイマイチで何をどうしていたらと悩む・・・
仕事に没頭しながら悩み続ける男の物語。
舞台となる亘理町には郷土料理の【はらこ飯】があります!
本書を秋口までに読み終えて是非【はらこ飯】をご堪能ください!
Posted by ブクログ
芥川賞のわりに(?)それほど尖ったところがない。読者は物語の中でいくつもの死に遭遇するが、そのすべてが震災に直接結びつくわけではなく、震災はあくまでも背景として抑制的に描かれるのみである。
死を待つ行列に並ぶ一人である、との主人公の述懐に象徴されるように、生も死も一つの偶然であり、その無意味さが故に残されたものは自責を苦しみ抜く。
季節や草木、海といった風土や自然、そこに根を張ってきた老人たち、やがてはそこに溶け込んでいくであろう主人公とその肉体が事実そこにあるものとして素朴に淡々と描かれ、巨大な防潮堤や重機で均された何もない空地との対照が死と生を区切る壁と重ねられているように感じた。
Posted by ブクログ
佐藤厚志、初読み。
『芥川賞』受賞作品。
40歳の植木職人・祐治。東日本大震災で仕事道具を失い、その2年後、妻・晴海を病気で亡くす。再婚し、妻・知加子との間に子どもを授かるも、生きて産まれてくることはなかった…そして、知加子は、祐治と啓太のもとを去る。
幼馴染・明夫は妻と娘を震災で亡くし、みずからはがんを患っていた…
元の生活に戻りたい…
が、戻れない…
その思いを打ち消すように、身を粉にして、働く祐治。
同じ時代なのに、なぜだか昭和三十年代のような感じを受ける。
白黒でしか言い表せないような、薄暗い世界が広がっている。
そんな中、息子・啓太のために懸命に働く祐治。思春期を迎えた啓太との関係はぎこちない…
震災から10年以上が経った今も、震災から立ち直れない人たちはたくさんいるのだろう。
祐治のように、なんとか、なんとかして生きている人たちが。
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