蒼沼洋人のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
勇気を出して人生のリングに立て!
憧れたあの子から勇気をもらって一歩を踏み出す物語。
母親の再婚がちらつき、学校には心を開いて話せる友達がいない。周りの人間は好き勝手やっているのに自分は周囲の顔色を伺うばかり。
息の詰まるような日々の中、中学一年生になった主人公の心愛は近所のボクシングジムで練習に打ち込む少女を見かけ次第に興味を持つようになる。
いつものように練習風景を見ていると少女がこちらに気づいてしまい、主人公はお試しでボクシングジムへ通うことになる。
前半は主人公がボクシング少女こはくの裏表のない素直で明るい性格に惹かれていく過程が描かれている。不満だらけの現状に向き合うきっかけとして学校と家庭以外での新たな居場所を見つけた主人公が精神的に癒され、こはくから勇気をもらう。
とはいえ現代モノなので即座に全てが解決するわけではなく、学校と家庭では人間関係の悩みを抱えつつ自分なりにどうすればよいかを物語後半で模索していく。
こはくから影響を受け主人公の言動が変わっていく様がボクシング関連の出来事を中心に描かれ、自分の思いを周囲に伝えられるようになるまでの主人公の成長過程は見ていて応援したくなる。
登場人物が多彩で、徐々に変わっていくメインの三人が見ていて飽きない。
ヤングケアラーで人の顔色を伺いすぎて自分の意見が言えない主人公、型にはまった物の見方が大嫌いで裏表のない性格故に精神的な未熟さが残るこはく、こはくを尊敬しているが努力の方向性が間違っていて空回りしがちな重森。
この三人が互いに影響し合い、物語終盤ではそれぞれが抱えていた課題に進展が見られる。
こはくを格好いい憧れの女の子として描く一方で、仲良くなるにつれ彼女の抱える課題が徐々に見えてくるので完璧と思われたこはくに対しても親近感が湧く。
こはくも主人公と過ごす時間の中で気づきを得て現状打破の糸口を掴むのが友情モノとして美しい終わり方だった。
憧れを胸に新しい環境へ踏み出す主人公は、きっとこはくのように誰かを勇気づけていくのだろうなと思わせる綺麗な終わり方が見事!! -
Posted by ブクログ
私と同じ年代なら、この本のタイトルを見れば絶対にCyndi Lauperの名曲“True Colors”を思い出すだろう。いまこの本を手に取る中学生読者にもそのことを伝えたい。
そもそも私が中学生時代に読書に求めたのは、ひたすら“背伸び”だった。友だちが読んでいた三島由紀夫を手に取り、文庫本で薄いからと読み始めた「午後の曳航」で登場する中学生たちの早熟さにしびれた。さらに日常的な中学生活に満足できない私は三島を読み進め、「金閣寺」は難しそうだからと手にした「仮面の告白」を読み、自分の手の届かない世界の存在を感じたものの、それが自分の身近にあるとまでは考えられなかった。
つまり私にとって三島小説に描かれた世界は、現実感から隔離された“非現実”であり、私が並行して好きだった特撮テレビ番組と同様に空想世界の1つに過ぎなかった。
他方でこの5編の短編集に登場する中学生は、あくまで普通。この本を読む中学生の多くは「ふつうの話じゃん」と思うだろう。たしかに登場人物たちは普通の家族や友だち関係の中で普通の中学生活を送っている。しかしそれだけでは物語にならない。そこに仕掛けられた、日常のなかに突如姿を見せた非日常(あるいは違和感)をどう受け入れるか。
ある中学生にとってはすんなり受け入れられるかもしれないし、ある中学生にとっては成長痛のように軋みとなるかもしれない。だが読書がいいのは強制を求めないところ。そして読んだ者の心にそっと種を宿してくれるところ。
5編のあらすじは載せられている。だが私なりに“日常”と“非日常”という視点から、各テーマの仕掛けに踏み込んで紹介する。
1 To be a Mom:女子中学生が成長とともに避けえない生理(月経)、妊娠、出産がテーマ。中学生の私は生理は始まったけど、妊娠とか出産とか今から考えなきゃいけないこと? ましてや周りからこうしたらいいとかこうすべきとか言われなきゃいけないこと?
2 三月のグラウンド:中学校の卒業式が終わった。香田さくらは中学生活のほとんどを硬式野球のシニアチームで練習に費やし、得意のナックルボールは全国大会レベルだと自信もある。でも高校に進むと女子は男子と一緒に甲子園を目指せない。それが決まりだから?
3 親友のカレ:自己紹介でわたしは「大切にしているのは偏見をもたないこと」とみんなの前で言った。それを聞いてわたしを好きになってくれた彼とつきあい、ある日彼とは恋愛関係から友人になった。その彼が好きな男子ができて付き合うと打ち明けてきた。そのときのわたしの感情って、正直に言って偏見だらけじゃないの?
4 ダイニングテーブル:わたしの家族って理想形じゃない。女性にばかり家事が押し付けられている。向かいに住む同級生の男子の家族はパパが2人。でも家事は分担制だし理想だなって思う。その男子にそう言うと即座に返された-「だれかんちみたく、とか。ガチで言ってんの?」
5 ぼくと、体と。:中学生からはじめた電車通学。満員電車で身動きできない中で、誰かが「ぼくの尻とチンチンと金玉」(原文ママ)を触る。ぼくができることはいろいろ試した。でも今日もぼくは痴漢に襲われた。どうすればいい?
読み終えて改めて表紙を見る。鎌谷悠希さんの女性のイラストがすばらしい。読む前は私も「目がきれいな女性だな」以上の感想はなかった。だが読後はこう思える-この女性はもしかしたら自分が将来出産することを素直に考えられていないかもしれないし、高校進学と同時に男女別になるスポーツを続ける気力が折れそうになっているかもしれないし、男子が好きな男子が同級生にいて自分にだけそれが打ち明けられているかもしれないし、家族のなかで自分だけがという不公平感を抱えているかもしれないし、痴漢にどう立ち向かうか悩んでいるかもしれない、と。少しだけ想像力が広がるようになった。
5編を読み終えたら、シンディローパーの歌を、動画サイトで聞いてほしい。
…But I see your true colors shining through/
I see your true colors/
And that’s why I love you/
So don’t be afraid to let them show your true colors/
true colors
are beautiful like a rainbow -
Posted by ブクログ
これ、最近読んだ児童書の中でも抜群に良かった。
震災を経験した海辺の町で暮らす、小学6年生の主人公。
その町では、大切な人を失った人たちが生きている。
コロナという見えない敵にも翻弄されながら、卒業を間近に控えた主人公が、亡くなった母の思い出を辿り、やがてひとつの目標を立てる。
大きな事件が起こるわけではないけれど、家族や友だちとのすれ違いや仲直りの中で、本当の強さについて考え、少しずつ答えをみつけて成長していくストーリー。
…っていうと、なんだか堅苦しい教科書的な話かと思われそうだけど、ぜんぜんそんなことはない。
登場人物たちがみんな(大人のわたしから見ても)とても魅力的な奥行きがあって、あたたかな雰囲気がずっと流れているから、物語の世界にどんどん入っていける。
舞台になっている町の風景も、その場のにおいや温度が感じられるくらい丁寧に描かれている。
自分も石巻には震災後に一度行ったことがあったので、なんとなく記憶と重ねて想像はできたけれど、物語の中ではそこに暮らす人だけが知っているような海がたしかに広がっていて、実際に見た以上に深く心に響いてくるような気がした。
エピソードのひとつずつにも、救いみたいなものがちりばめられていて、何回もじんわり泣きそうになってしまった。
人生には時に、自分の力だけではどうしようもないことも起こる。
都合の良い逆転劇なんて、現実にはなかなか起こらない。しっかり負けることもある。
それでも大切なものを大切にしていれば、いつかちゃんと笑えるようになる。
そんなことをしずかに、でもまっすぐに教えてくれるような物語だった。
読み終わったあと、ふと作者が男性だってことに気づいて、ちょっと意外だった。
なんでこんなに小学生の女の子の心の中を描いて違和感がないのか、不思議なくらい。
展開や設定に奇を衒うこともなく、地に足がついているのに子どもを置き去りにしないようなやさしい文章で、なんだか久しぶりにとても好きな児童書の作家さんを見つけた気がしました。
読めてよかった。 -
Posted by ブクログ
この本から学んだことは沢山あります。ちょっと感想が長くなってしまうけど読んでください。
この本の主人公は小6の自己主張をあまりできない引っ込み思案なめぐみ。めぐみには優希という引っ込み思案だけど自分の思ったところは相手に伝えられるような素敵な親友がいます。2人は同じクラス。そのクラスの人間関係はドロドロしていてめんどくさいけどめぐみは優希さえいれば大丈夫だと思っていました。しかし、優希がロンドンへ転校してしまうことになりめぐみはクラスで一人ぼっちになってしまいます。そんな時に仲良くなったのが直緒です。直緒は4月に転校してきたばかりで、あまりクラスの人と話そうとしなかったけど優希みたいに自己主張をはっきりできてクラスの怖い女の子に立ち向かえる勇気があります。そんな直緒と仲良くなっためぐみだけど直緒がクラスの怖めな女子、一伽に気に入られずカッターで切りつけられてしまうという事件が起きて、、、という話です。最初、直緒を切りつけた一伽はとんでもないやつだと思っていたけれど一伽の気持ちを知って寄り添っためぐみも素晴らしいなと思います。この本は繊細な人間関係を上手く言葉に表現して人と関わることの喜びや難しさなどを表しています。学校で悩んでいる全ての学生に読んでもらいたい1冊です。 -
Posted by ブクログ
両親が離婚し、仕事で帰りの遅い母に代わり家事をこなす毎日の心愛。
中学校でも部活に入っていなくて、小学からの友だちとも話す会話も減り、クラスでもグループに入っての誰かの噂話など聞くのもうんざりしていた。
母の帰りが遅いのは付き合っている男性がいるからで…そのこともモヤモヤして。
ある日、買い物帰りに見たのは、ボクシングしている同じくらいの女子。
キラキラと輝いている姿を見て…。
中学時代の友だちとの距離感や親に対して思うこと…。
悩み多き年頃のいろんな気持ちが凝縮している。
ボクシングをすることで、こはくと親しくなることで、強くなる心愛。
言いたいことの半分も言えないで思い悩んでいたことが別の居場所(ボクシング)を見つけて変わっていく様子に応援したくなる。
気持ちを強く持って、自分を信じて進んでいってほしいと思った。