【感想・ネタバレ】TRUE Colors 境界線の上でのレビュー

あらすじ

生理は、将来ママになるために必要なものだから──そう本には書かれていた。でも、わたしもママにならないといけないの? 子どもが欲しい友達、怖いと言う友達。わたしは?(『To be a Mom』神戸遥真)

男子に負けない努力を重ね、中学硬式野球のエースとなったわたし。でも、甲子園には出られない。女子だから。納得なんてできない。ナックルボールを磨き続けた先に、未来はあるのか──。(『三月のグラウンド』蒼沼洋人)

元カレの葉空とは今や親友。恋人じゃないからこそ、楽に過ごせる……はずだった。でも、葉空に「好きな人ができた」と言われて、わたしの心は大混乱。しかも、相手は「彼女」じゃなくて「彼氏」!?(『親友のカレ』いとうみく)

お母さんの出張で、家事を任されたわたし。やるしかないけど、なんでわたしばっかり? 詩馬の家のダイニングテーブルでは、父さん二人が料理をしていた。家族のかたちは一つじゃない。それなら、わたしの家だって変えられる?(『ダイニングテーブル』鳥美山貴子)

新しい通学路、新しい学校、新しい生活。ある日、電車の中で尻に触れる誰かの手。満員電車だから? 勘違い? ……違う。ぼくは被害者だ。男のぼくだって、痴漢に遭う。それを認めるのが、こんなに怖いなんて。(『ぼくと体と、』ひこ・田中)

◆ ◆

令和6年埼玉夏休みすいせん図書にも選ばれた『YA!ジェンダーフリーアンソロジー TRUE Colors』から待望の第2弾が登場。
「今」を生きる児童文学作家がジェンダーと中学生をテーマに、それぞれの視点から物語をつづります。
装画は今回も『少年ノート』『ヒラエスは旅路の果て』の鎌谷悠希が担当。
ここでしか読めない、珠玉のアンソロジーです。

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Posted by ブクログ

私と同じ年代なら、この本のタイトルを見れば絶対にCyndi Lauperの名曲“True Colors”を思い出すだろう。いまこの本を手に取る中学生読者にもそのことを伝えたい。

そもそも私が中学生時代に読書に求めたのは、ひたすら“背伸び”だった。友だちが読んでいた三島由紀夫を手に取り、文庫本で薄いからと読み始めた「午後の曳航」で登場する中学生たちの早熟さにしびれた。さらに日常的な中学生活に満足できない私は三島を読み進め、「金閣寺」は難しそうだからと手にした「仮面の告白」を読み、自分の手の届かない世界の存在を感じたものの、それが自分の身近にあるとまでは考えられなかった。
つまり私にとって三島小説に描かれた世界は、現実感から隔離された“非現実”であり、私が並行して好きだった特撮テレビ番組と同様に空想世界の1つに過ぎなかった。

他方でこの5編の短編集に登場する中学生は、あくまで普通。この本を読む中学生の多くは「ふつうの話じゃん」と思うだろう。たしかに登場人物たちは普通の家族や友だち関係の中で普通の中学生活を送っている。しかしそれだけでは物語にならない。そこに仕掛けられた、日常のなかに突如姿を見せた非日常(あるいは違和感)をどう受け入れるか。
ある中学生にとってはすんなり受け入れられるかもしれないし、ある中学生にとっては成長痛のように軋みとなるかもしれない。だが読書がいいのは強制を求めないところ。そして読んだ者の心にそっと種を宿してくれるところ。

5編のあらすじは載せられている。だが私なりに“日常”と“非日常”という視点から、各テーマの仕掛けに踏み込んで紹介する。
1 To be a Mom:女子中学生が成長とともに避けえない生理(月経)、妊娠、出産がテーマ。中学生の私は生理は始まったけど、妊娠とか出産とか今から考えなきゃいけないこと? ましてや周りからこうしたらいいとかこうすべきとか言われなきゃいけないこと?

2 三月のグラウンド:中学校の卒業式が終わった。香田さくらは中学生活のほとんどを硬式野球のシニアチームで練習に費やし、得意のナックルボールは全国大会レベルだと自信もある。でも高校に進むと女子は男子と一緒に甲子園を目指せない。それが決まりだから?

3 親友のカレ:自己紹介でわたしは「大切にしているのは偏見をもたないこと」とみんなの前で言った。それを聞いてわたしを好きになってくれた彼とつきあい、ある日彼から別れを告げられた。その彼が好きな男子ができてつきあうと打ち明けてきた。そのときのわたしの感情って、正直に言って偏見だらけじゃないの?

4 ダイニングテーブル:わたしの家族って理想形じゃない。女性にばかり家事が押し付けられている。向かいに住む同級生の男子の家族はパパが2人。でも家事は分担制だし理想だなって思う。その男子にそう言うと即座に返された-「だれかんちみたく、とか。ガチで言ってんの?」

5 ぼくと、体と。:中学生からはじめた電車通学。満員電車で身動きできない中で、誰かが「ぼくの尻とチンチンと金玉」(原文ママ)を触る。ぼくができることはいろいろ試した。でも今日もぼくは痴漢に襲われた。どうすればいい?

読み終えて改めて表紙を見る。鎌谷悠希さんの女性のイラストがすばらしい。読む前は私も「目がきれいな女性だな」以上の感想はなかった。だが読後はこう思える-この女性はもしかしたら自分が将来出産することを素直に考えられていないかもしれないし、高校進学と同時に男女別になるスポーツを続ける気力が折れそうになっているかもしれないし、男子が好きな男子が同級生にいて自分にだけそれが打ち明けられているかもしれないし、家族のなかで自分だけがという不公平感を抱えているかもしれないし、痴漢にどう立ち向かうか悩んでいるかもしれない、と。少しだけ想像力が広がるようになった。

5編を読み終えたら、シンディローパーの歌を、動画サイトで聞いてほしい。
…But I see your true colors shining through/I see your true colors/And that’s why I love you/
So don’t be afraid to let them show your true colors/
true colors/
are beautiful like a rainbow

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2026年03月21日

Posted by ブクログ

シリーズ前作も大した切れ味のアンソロでしたが、今回もすごかった。今児童書やYAジャンルではかなり最先端の意識が描かれていますが、その一歩先を書く、という志を感じました。どれも良かったですが「ぼくと、体と」が選んだテーマもラストの切り方も一番凄かったかな。
なぜ自分が痴漢に遭うのか? 顔か? と思って好みのタイプを顔でジャッジする自分の価値観に気付いてしまうなど、こういう言い方はよくないんですが男子主人公だからこその物語になっていて大変よかったです。性の話がサラッとした自然な形で出てくるのも男性作家だから可能なのかもしれない。

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2025年09月29日

Posted by ブクログ

ジェンダーを切り口にした5人の作家のアンソロジー。日常生活の中の題材ばかりで読みやすく感情移入しやすい。「ダイニングテーブル」が好きだった。

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2025年12月09日

Posted by ブクログ

生理がきたら赤ちゃんを迎えるため
将来はママになって女の子はそのために家事を覚えなきゃいけないのか

甲子園に出たいでも甲子園だけは男子だけ

元彼と友達になって好きな人ができたと打ち明けられた相手は男子
男子が好きだと知って冷やかす周り黙ってる相手

家族の形はそれぞれ

痴漢に会うのは女子だけじゃない
だけど男子で痴漢に会えば声があげづらいけど勇気を出す

日常の生活の思いの違い考えたかの違いジェンダーと言われていても声を上げづらい言いづらいことはたくさんある

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2025年10月18日

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