トマトスープのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「その血と記憶はいつだって 征服者(モンゴル)を見ているぞ」(p133)
とうとう出たね。理念と武力で抑え込んだかのように見えても、その大地に染み込んだ血は乾くことはなく、首を垂れて近侍するその者の記憶は塗り替えられることはない。
英雄チンギス・カンの子のひとり〈コルゲン〉は庶出であり、母はメルキトから降ったダイル・ウスンの娘クラン。彼の中には征服した者と降った者の両方の血が流れており、その血の記憶が彼個人を繊細にせしめている。「母上はメルキト族の人々を守るために父上に嫁いだ その末に僕が生まれて 今こうして別の人々を組み伏している…」(p98)と西征の途上で想いを馳せるコルゲン。当時の人々がどんな思いで弓を取っていたのかは想像する他ないのだが、本作では共感する力の豊かな魅力的人物として描かれている。
今際の際に彼はドレゲネにとっての‘救い’を汲み取り、彼女の中の復讐心に気がつく。併せて、ドレゲネのそばに侍るファーティマの復讐心をも捉えるほど広い視野で物事を悟り、ドレゲネの子・グユクに「君にしかできない」(p134)と遺して世を去る。
この巻の圧倒的MVPはコルゲンでしょう。素晴らしいキャラ。
そしてそう、気が弱くて他の後継候補から遅れを取っていたグユクは「モンゴルのもとで今も生き続ける怨讐の血と記憶」(p148)と真っ向から向き合う覚悟を固めるのだった。顔つきが違う。
次の巻ではペルシア総督府で一波乱ありそうな気配。そう、ペルシアが復興を遂げていくという事はモンゴルの手で作り替えられていくということ。そんな事はファーティマにとって耐えられない屈辱。彼女の内の怒りは未だ鎮まる事はなく。
ドレゲネの息がかかったアルグンがこの後どういった顛末を迎えるのか。
彼の元主人・イルチダイとの軋轢はどう傾くのか。
ボラクチンとモゲも健在。
次巻がとっても楽しみ。
1刷
2026.7.27 -
Posted by ブクログ
「新しいモンゴルを作る」(p22)
オゴタイにはそのための素養は備わっており彼自身にもそれが見えているのだろう。
皇后ボラクチンも聡明であり、帝業を妨げるものは排さんとする。
「今やモンゴルは広大な世界を手に入れた」(p61)
帝国の都「カラコルム」の建造にも着手し、街道が整備され遠く離れた人と物が行き交うようになった。
「交易の「道」 生産の「都市」 これこそ大カアンが望んだモンゴルの姿だ」(g80)とボラクチンが語るように、歴史上でも未曾有の大国家建設は着々と進んでゆく。
華々しく発展を遂げるモンゴルだが、憂いが無いわけではない。
「後継者だ 大カアンの そして私の」(p84)
いつの世も適切な後継問題は明暗を分ける一大事である。ボラクチンは第三皇子である〈クチュ〉を推す。大カアンも彼をほぼ勝ち確である南宋征伐の総司令官に任じ、その功をもって後継に据えるつもりであった。のだが。
ここで我らがファーティマがクチュと接点を持つのである!なんという大胆なifストーリー。
確かに史実の流れではこののち、クチュが遠征途上で急死し、そこへドレゲネの介入が起こるのだが…。この史実の出来事を膨らませて、二人の女性の野望譚へ昇華するとは寒気がするぜ。
オゴタイは過去に語った。「お前たちがここで幸せになったら俺の勝ちだ」と。
ファーティマとドレゲネは栄えてゆくモンゴルで幸せを、満ち足りたと感じてはならない。それは彼女らにとって‘負け’となるからだ。
「私はきっと負けないだろう たとえ私が負けを望んでも」(p67)とファーティマは自答する。
そしてこの「負けない」という感情こそが、拡がりゆくモンゴルのあちこちで、やがて国を傾ける火種となるのである。
世にいう「バトゥの西征」がいよいよ始まり、ルーシ圏にも版図を伸ばそうとする前夜。
ペルシア総督府では現総督が急死、〈コルグズ〉が総督を継ぐ。
華北をオゴタイ領へ取り込もうとする動きと、反発するトルイ家(ソルコクタニ・ベキ)。トルイ家の当主は〈モンケ〉。クリルタイでもソルコクタニは不穏を見せる。
ジュチ家当主のバトゥも西域へ派遣され、足元である華北に隙が生じる。
俄かに存在感を増し始めるドレゲネの子、〈グユク〉。
いやー、面白すぎる。
世界史の授業や受験勉強では覚えるのに必死で「どうしてこうなった」なんて考える余裕はなかったけど、確かに何故このタイミングでドレゲネが出てくるのか、グユクなのか、等々よく考えたら不思議。
5巻の表紙を飾っているモゲ。彼女がこの先物語へどんな影響を及ぼすのか。「あたし…嘘はわかるんだ」(p171)って、意味深な台詞。
アニメも楽しみですな。
1刷
2026.7.25 -
Posted by ブクログ
以前、Xで1話の試し読みを読んだことがあり、「面白いなぁ〜」という印象があった。
今季アニメ化されると知り、1〜最新刊までまとめて購入。そして一気読み。やはり第一印象から変わらずおっもしれ〜〜〜。
高校受験レベルの世界史知識しかない私でも、「見たことある名前だな…」がたくさん出てくる。学生の時にこの漫画があったら、世界史の授業がもっともっと楽しいものになっていただろうなぁ。
現在の世界史の教科書に、数ページ、もしくは1行・1単語しか載っていないかもしれない。
けど、その数行にはシタラたちが、今の私たちと同じように考え、悩み、苦しみ、そして復讐に生きた数十年があることを思う。
最期を見届ける気持ちで読んでいる。
個人的には、トルイが某Jリーグクラブチームのキャプテンに似ていて好き。 -
Posted by ブクログ
アニメが放送されているのは知っていましたが、観てはいませんでした。
ところが、先日(中森明菜さんを観ようと)Mステを観ていましたら、SEKAI NO OWARIさんが本作アニメのオープニングテーマを歌ってらして、そのあまりの素晴らしさに感動して、アニメを観始めましたw
そしたら、面白かったんですよw♡
で、原作本も読み進めています。
まずタイトルの「天幕」ですが、この場合はモンゴル人のテントを指します。そして、「ジャードゥーガル」とはペルシャ語で「魔女」という意味だそうです。
なぜモンゴル人のテントで、なぜペルシャ語なのかは、物語上のポイントです(ので秘密ですw)。
そして、このお話の主人公は、13世紀イラン東部の都市トゥースにやってきた天涯孤独の奴隷少女シタラです。
コミック第1巻の表紙に描かれている可愛い少女が彼女です。そして、彼女が開いている本は、エウクレイデス(ユークリッド)の幾何学の本「原論」です。
(実は、この本を巡って起こる恐ろしい出来事がシタラの運命を大きく動かすのですが、それはぜひ本作でお確かめください。)
シタラは奴隷なので奴隷市場にいたのですが、なんと他の奴隷を半額にする代わりにシタラを預かるという条件で、ファーティマ奥様に預けられることになります。
ファーティマ奥様の旦那様は学者さんでしたが亡くなっていました。ファーティマ奥様には12歳のムハンマドというとても優秀な息子くんがいました。
賢いムハンマドくんが、勉強を嫌がるシタラに、勉強する意義を語る場面があるのですが、とてもとても素敵なので引用しますね。
「君は今、自分の身がどこにあるかも、何が起こっているかも、この先どんなことが起きるのかもまるでわからないでいる。~中略~ でも勉強して賢くなれば、どんなに困ったことが起きたって、何をすれば一番いいかわかるんだ。それは絶対に悪いことじゃない。」
いかがでしょうか? ムハンマドぼっちゃん、スゴイですね!
物語は、ムハンマドくんが勉強のためにニーシャプールという町に行ってしまったあとに大きく動きます。
遊牧民がトゥース軍を破って、街に侵入してきたのです。
ファーティマ奥様とシタラは、旦那様が残した本とともに地下に隠れますが。。。
アニメはまだ4回目が終わったところ、原作では2巻に入ったところです。
展開は早いですが、まだまだ追いつきます。まずは素晴らしいOPテーマとともにアニメでご覧いただくことをオススメします♡
〔作品紹介・あらすじ〕
後宮では賢さこそが美しさ。13世紀、地上最強の大帝国「モンゴル帝国」の捕虜となり、後宮に仕えることになった女・ファーティマは、当時世界最高レベルの医療技術や科学知識を誇るイランの出身。その知識と知恵を持ち、自分の才能を発揮できる世界を求めていたファーティマは、第2代皇帝・オゴタイの第6夫人でモンゴル帝国に複雑な思いを抱く女・ドレゲネと出会う──。
歴史マンガの麒麟児・トマトスープが紡ぐ、大帝国を揺るがす女ふたりのモンゴル後宮譚! -
Posted by ブクログ
ネタバレめちゃくちゃ面白かったので感想。
これは、モンゴルに征服されたペルシャの少女が復讐を誓い、「知恵」を武器に帝国を内側から崩壊させるため暗躍する物語。
復讐もの自体は定番のテーマだけど、この作品の何が面白いって、複数陣営が入り乱れる政争を見事に描き切っているところ。
巨大なモンゴル帝国は、当然一枚岩じゃない。
誰が悪で誰が善という単純な話でもなく、全員がそれぞれの目的や野望を持って動いていて、その無数の思惑が重なって「歴史」という大きな流れができていく。
その中で主人公は、モンゴルが積み重ねてきた征服の歴史に人生を奪われた一人として、復讐を胸に暗躍していく。
もちろん、そんな大帝国を維持している王族たちも一筋縄ではいかない。
主人公一人の策略ですべてが思い通りになるわけじゃない。だけど、誰かの思惑と誰かの思惑がぶつかって、そこに偶然が重なって、やがて誰にも止められない大きな流れになって時代そのものを変えていく。
主人公が全てを手繰り寄せて未来を変えていける訳じゃないのが、この作品の面白いところだと思う。
そんな巨大な歴史の流れの中で、一人の少女がどうやって復讐を果たしていくのか。政争とか策略とか、知恵で戦う暗躍系主人公が好きな人にはめちゃくちゃおすすめです。 -
Posted by ブクログ
物語に振り落とされぬように!
モンゴル内で最大軍事力を誇っていたトルイが没し、その妻であるソルコクタニ・ベキから悲願の『原論』を取り戻したファーティマ。
ソルコクタニ・ベキはこのままドレゲネとオゴタイの子・グユクと結婚して歴史の表舞台から退場するかと思われたが、機略によってトルイ‘家’を守ることに成功する。ここ、テストに出るからね。
出身であるメルキト族を滅ぼしたモンゴルに沸々と叛意を抱くドレゲネはファーティマと結託し、夫・オゴタイならびにモンゴルへの敵意を深める。その宿願を果たすべく皇后ボラクチンに近づき、握った弱みをちらつかせて第二妃の地位を手に入れる。ここも、テストに出るからね。
更に更に、暗躍するファーティマはモンゴル支配下のオイラト族へ流言を放ち足元をぐらつかせる。
政争・暗闘が展開される今巻は全体的に地味かも知れないが物語的には重要なターニングポイントがいくつも描かれる。特に、ファーティマがどの陣営に属しているのかを把握することが大切。
闇夜に閃く剣筋が拓くものはなにか。
次巻へつづく。
追記:2巻の自分の感想を読み返したらドレゲネの出身はメルキトじゃなくてナイマンと書いてるな。いかん、わからなくなっている…。
追記2:出自はナイマン族でいいのか。(ウハズ・)メルキト族のダイル・ウスンに嫁いだってことね。
1刷
2026.4.13 -
Posted by ブクログ
とんでもなく美しい絵。版画のようなタッチで、中東の少女の人生を描くのにこんなにマッチした絵柄はないと思った…!
奴隷という身分にありながらも、「知」を武器に孤独に戦うシテラがどのようにして復讐を遂げるのか遂げないのか、いつまで孤独でなければならないのかが気になる。
ストーリーは描くべきところに集中して描かれている印象で、冗長なところが全くない。
結果、テンポも良くて非常に読みやすい!
チンギスカンの息子を見せつつ、「原典」を求めるに至った経緯を説明するところなんて、複数の情報提示を兼ねていて説明上手な漫画だなと思った。
ストーリーのわかりやすさや読みやすさも勉強になりそうb -
Posted by ブクログ
揺るぎ無く面白すぎる!
率直にかなりディープな歴史マンガだから絶対に万人には受けないと思うけど、多少なりとも歴史が好きとか、『大奥』みたいな女性同士が権力を争う群像劇が好きとか、アジアンテイストのファンタジーに興味があるとか、もしもそれらに多少でも引っかかるものを感じたならば是非とも一読を薦めたい作品。
個人的にはむやみやたらなアニメ化や実写化はNo thank you.な方なんだけども、本作は今夏のアニメ化では是非とも大大大ブレイクを果たしてもらいたい。楽しみにしています!
今巻での大きな出来事といえば、チンギス・カンの四男にして才気煥発「炉の主」であるトルイの死でしょう。トマトスープ先生のかわいいタッチに誤魔化されますが、40歳くらいのれっきとした中年です、はいー。
炉の主は慣習により先帝が築き上げたモンゴル帝国の軍事力や知識層の大半を相続することができるので、国を継いだ2代皇帝のオゴタイとはその力関係に於いて大変なねじれが生じている訳です。で、そこをなんとかせい、ということで二重スパイ的に暗躍するのが主人公・ファーティマな訳ですね。
トルイの正妃〈ソルコクタニ・ベキ〉の手からモンゴル帝国に掠奪された元主人の本『原論』を取り戻すことが人生の目的だったファーティマは、果たしてその本をその手にしても止まることはなかった。
主を喪ったトルイ家は没落を辿るのだろうが、一応の恩人であるソルコクタニ・ベキに特段の感情を見せる事もなくファーティマは上昇を続けてゆく。
ここのクールさがたまらない。
もう一つの嵐の予感、チンギス・カンの弟〈テムゲ〉の不穏な振る舞いが気になりますよね。
史実を知っていればさもありなんなんですが、こんなに扱いづらい先帝の親族もないでしょう。波乱の予感しかしない。
てか、〈ボラクチン〉がこんな目立つポジションになるなんて予想しないですよね。歴史ファンでも意表をついた人事じゃないですか?
すんごくどうでも良いのですが、世界史年号で屈指の覚えやすさ「1234年 金 滅亡」は覚えとくと良いことあるかもしれませんぜ…!
人物名や地名の馴染みなさに毛嫌いしないで!
面白いよ!!
1刷
2026.1.16 -
Posted by ブクログ
1巻では主人公であるシタラがファーティマになるまでを丁寧に描いていたが、2巻でもう1人の重要人物であるナイマン族の娘〈ドレゲネ〉がモンゴル帝国の大カアンの妃に収まるまでを濃密に描き上げている。
ふたりに共通しているのは、大事な居場所や親しい人達をモンゴル族に奪われており、その憎しみや怒りが未だに心中を吹き荒れていること。
暴風雨を呪いで起こすことができるという「ジャダ石」を偶然にも手にしたファーティマが偶然にもジャダ石を捜していたドレゲネと出逢うことになるのはもはや運命。
草原の覇者・モンゴル族がいよいよ金国征伐に乗り出す前夜。帝国の内外に嵐の気配が迫りつつある。
1巻でも象徴的だったが、ファーティマの笑顔(p66)が彼女自身の運命を変えてきた。
2巻のラストシーン、ファーティマが暗闇に向かって歩み出す場面(p172)では彼女の表情は描かれていないが、きっと笑っているのではないかと思う。「覚悟なさいモンゴル」(p148)の時もそうであったように。
今後もう登場することはないだろうが、モンゴル族に滅ぼされたウハズ・メルキト族の長〈ダイル・ウスン〉の娘である〈クラン〉が仇敵・テムジン(チンギス・カン)に嫁ぐ場面(p107)ではそれまでの彼女が備えていた文化だとか習慣といったパーソナルなもの全てが書き換わってしまうこと、それが敵に降るということなんだな、と改めて実感。
それでも彼女が父の訃報に接した時に笑顔を見せた(p123)のは何故か。彼女こそがウハズ・メルキト族の血を正統に後世へ残す事が出来る存在であり、だから父を安心させたかったのだろう。
密かな名場面であると思う。
2刷
2025.9.26 -
Posted by ブクログ
あたくし、中学生時分に『蒼き狼と白き雌鹿Ⅳ』という歴史シミュレーションゲームにドドドハマりしたことがありまして、それがきっかけのひとつで大学の史学科を選んだくらいの影響を受けまして、なんなら在学中も一番興味があったのはモンゴル帝国史だったりしました。
それから早ウン十年、社会人デビューと共にすっかり勉強する習慣がなくなったあたくしはあれだけ覚えた年号もなんもかんも抜け去ってしまいましたが、それでもこの作品はあたくしの意識の奥底に眠る、歴史好きの血を沸騰させてくれたんだ!!
まだまだ全然冒頭だし可愛らしい画風に騙されていたけど、めっちゃ丁寧に練られているであろう考証とトマトスープ先生の中世ユーラシア史に対する造詣の深さがうかがえる、非常に読み応えのあるストーリー。
とにかく着眼点が渋い。
歴史を学んでいれば1巻に続く史実の流れは判る通り、チンギス=カンが一代で基盤を築き上げた大帝国は子孫達によってバラバラに解体されやがて消滅という末路を辿るが、その子息達の妃による視点で歴史を捉える試みは大変興味深い。
本作の主人公〈ファーティマ(旧名はシタラ、「星」の意)〉という史実の人物のことは知らなかった(なにかで読んだ気もするがどのみち詳しく覚えていないのでヨシ)のだが、これはもっけの幸い。
これは絶対に事前情報なしで読み進める方が良いに決まっていますね。これから読まれるかたがいらしたら是非、予備知識を入れずにチャレンジしてみて下さいね。
そして、人物については細かくメモを取りながら読む方が良いです。馴染みがない名前ばかりなのでどれが誰の関係者かわからなくなりがちなので。一応巻末に簡潔なチンギス=カン一族略図は収録されておりますが。
さて、このシタラという人物がなかなかに曲者。まず奴隷身分が自分で名前を付けられるという制度に驚いたが、よりによって「星」とは。秀吉の幼名「日吉丸」みたいに権力を手にした後から箔の付く名前を設定したのかな。
運良く学者の家に拾われた為に教養と知識を身につけつつも歴史の大波に翻弄される少女期、まだ何者でもない彼女であるがふと垣間見せる幼い野心にゾクゾクする。そもそもモンゴル軍に殺害されてしまった主人の名〈ファーティマ奥様〉の名を名乗り直している時点でその執念の凄まじさがうかがえるのであるが。p129の「……だったら」以前と以降でまさに別人に生まれ変わった彼女。元々のシタラが持っていた表情はp8の「ニコッ」とした顔だったりファーティマ奥様の息子〈ムハンマド〉を慕うp61の頬を染めた顔だったりと少女相応のものであったのが、後半では隙の無さや烈しさのようなものが感じられる表情が多い。
目的を果たす為「だったら」自分の名や過去くらい、いくらでも捨ててやるわ、みたいな。
これまた良いところで終わるなあ。
さらりと重要人物・幼少期の〈クビライ〉が登場しているのもポイント。
波瀾の気配を醸し出しつつの2巻へ。
ちなみに、いまのところ交戦や占領の描写なんかはかなりマイルド。というよりもそこはほとんど描かれていない。この画風で凌辱とか拷問とか描かれたら…泣いちゃうかも。
7刷
2025.8.30
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ネタバレ
知らなかった事を後悔する面白さ
世界史の教科書ではさらりと触れただけの、モンゴル帝国のイスラム世界侵略。当時の奴隷身分だった主人公シタラの境遇や、主人である奥様との絆によってめちゃくちゃ感情移入させられるし、ムハンマドの「学び」に対する考え方に共感もさせられます。
見捨てればいいだけの奴隷を命懸けで庇った奥様……
「私の娘」という最後の言葉に涙腺が緩みました。
シタラの当面の目的は奥様の本を取り返す事でしょうが、シタラが仕える事になる「ソルコクタル・ベキ」もまた聡明かつ優しくて、シタラは奥様と同じ様に、いつの間にか彼女を慕うようになりそう。
知らなかった「世界史の裏のリアル」が知れる、読んでなかった事を後悔する面白さです!