芝瑞紀のレビュー一覧
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この本から得た学びは2つ。1つ目は、この社会では許される自由と許されない自由があることを再認識することが出来たこと。2つ目は、権威やルールに反発して盲目的に自由を主張することと、多数派の意見や慣習を鵜呑みにしてそれを「正しい」行動だとみなすことは本質的には同じだと理解出来たことだな。
1つめの学びについては言語化すると当然のことのようにも思えるが、どこに線を引くかは非常に難しい。特に昨今では、多様性という言葉が飛び交い自由な意見や考えを表明できるからこそ、極端な自由までも認容されている気がする。自分自身も少なからずそのような風潮に影響を受け、何者からも束縛されない自由を求める気持ちが芽生えるときがあるが、自由は程度問題であると断言してもらえると、少しばかりか救われた気持ちになった。
2つ目の学びについては、自由になりたい本能を理性で制御することが当然ながら正しいものだと考えていたが、主流な考え・行動の根拠を知らないままに、盲目的に慣習に従うことの危うさを再確認できた。自分の信念が今の世の中において主流なものであればあるだけ、その根拠を理解するために反対意見に耳を傾けると、自分の信念もより強固なものになりそうである。
この本では、社会が主体者となって、社会や国家がどの程度個人の自由を制限してよいかということをテーマにしている本であるが、主客を逆にして個人はどこまで自分の自由を行使してもよいのかと読むことも出来る。個人vs社会の関係性においては「危険原則」が自由の原則になるわけだが、1vs1の関係性における自由、例えば夫婦におけるそれぞれの自由など、個人間の自由の話となると、論点はまた変わってくるだろう。このあたりについては『自由論』で触れられていなかったため、個人的にもっと知りたいところである。 -
Posted by ブクログ
「ダンジョンズ&ドラゴンズ」や「マジック:ザ・ギャザリング」などのイラストなどで知られる、アメリカのイラストレーターでデザイナーのマーク・ネルソンによるファンタジー・アートを描くためのガイドブック。
幻想世界を構築するうえでの各要素毎に章立てして、そのテーマにそった自身のスケッチやイラストといったアートワークと、それに付する形でのファンタジー・アートを描く上での自身のノウハウや考え方を述べた短いテキストを並べるというスタイルで、内容は割と断片的で感覚的。具体的な技術に関する記述はやや薄め。
どちらかというと、マーク・ネルソンのアートワークを観ながら、彼のファンタジー・アートに対する考えや取り組み方、心構えを知るための本という感じが強い。そういう意味では実際に絵を描かない人でも興味を持って読み進めていける内容になっているともいえるかも。勿論、美麗な図版は豊富なのでマーク・ネルソンの画集としても愉しめる一冊。 -
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ネタバレ「ビリーは生まれたときからビリーだった」
どうやったらこんな人間が出来上がるのだろうかと思わずにはいられない。
幼少期のエピソードやホームスクール、分離不安障害や異食症、トゥレット症候群など、ネットで記事になっている情報は多数ありますが、ビリー関連の書籍ってユリイカとこれくらいなので(デビューEPが2017なので当然と言えば当然ですが)、写真も多く掲載されていたので購読。ライブの写真だけでなく、イベントに登場した際の写真も多く、多彩な髪色やファッションを堪能できるので、それだけで満足でした。
まだ10代なのに色々と背負わせすぎな心配もある反面、誰も無視できない存在でもあります。BLM関連のインスタでの発言も各メディアだけでなく、多くのファンの訳が複数シェアされていたのが印象的でした。Youtubeで、同じインタビュー内容のもの、質問を一年後にして、その対比を客観的に観れるものがあり、元気の出ないときとかにたまに観ます。彼女の端的で、飾らない、けれど芯のあるメッセージとぶれない姿勢にひかれることを強く実感します。
見た目はミーハーな作りですが、もとはイギリスのライターの訳書なので、そこまで期待を裏切るものではないかと。
髪を誤って青くしたヘアスタイリストをクビにした話とか、家族の「誰かが演奏しているときは寝ちゃいけない」ルールの話など知らないエピソードもあったので楽しく読めました。 -
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ネタバレある特別な患者
著者:エレン・デ・フィッサー
訳者:芝 瑞紀
発行:2021年12月10日
サンマーク出版
89人の医療従事者に、自分にとって特別な患者となった人との思い出についてインタビュー。著者はジャーナリストだが、各編はすべて取材を受けた医療従事者の一人称で書かれている。ほとんどが医師だが、看護師も少し、また、歯科医師、獣医師、医療ソーシャルワーカー、元医大生、救命救急士も各1名。日本と大きく違うのは、英語版出版に際して追加取材した人以外はオランダ人ばかりであるため、かかりつけ医の制度があること、そして、安楽死が認められていること。
医師として、看護師として、それまでの考え方や姿勢が変わったような強烈なエピソードや出会いなどが語られていて、どれを読んでもずしんとくるが、さすがに89編ともなると飽きてくる面もある。最も印象に残ったのは、生まれながらにして容姿が〝普通ではない〟患者の事例だった。
22.鏡の中~小児・頭部変形
7歳になるケイティは、母胎の中でいくつかのパーツに分かれるはずの頭蓋骨が癒着し、脳の成長が妨げられていた。眼窩の容積が小さく離れた位置に。上顎が後退し正常な呼吸ができない。既に数々の手術を受けてきたが、顔を完全に作り変えることに。額と眼窩と顎を二つに切り離し、中央に寄せながら結合させ、同時に前方に(顔の中心部を)引っ張り出す。
無事成功。「とても可愛くなったでしょ?」と彼女の新しい顔をほめちぎった。両親も嬉しそうだったが、ただひとりケイティだけ幸せな気持ちになれなかった。鏡に映る全く知らない顔を見て、アイデンティティを見失ってしまった。「私はみんなとまったくおなじようにいきなくちゃいけないの?」と彼女。彼女はカウンセリングの結果、悩みを解消したが、医師たちは大いに驚かされた。以後、「見た目がよくなる」とは絶対に言わないようにしている。
これと似たようなエピソードはもう一つあった。
48.闘志~頭蓋骨異常
その子は生まれたときに眼窩が浅く、目が飛び出ていた。頭蓋骨のつなぎ目が通常よりも早い時期に癒合する病気。頭蓋骨の容積が狭く、顔の形も普通の子供とは随分異なっている。彼女は何度も手術を受けたが、どこに行ってもじろじろと見られた。一度、近くを通ったバスが道の真ん中で急に止まり、運転手と乗客が身を乗り出して彼女の顔を見ていたことがあったほど。彼女は周囲の人たちが自分の陰口を叩いているのに気づいていたが、とても明るい子でその表情からはこんなメッセージが伝わってきた。「見て、これが私の顔なの。何か問題あるかしら?」。彼女は看護師になった。
ミステリー小説のようなこんな話も二つあった。
54.早とちり~落下事故
夜10時頃に女性がERに運び込まれる。8階のアパートから飛び降り(自殺だろうと彼女の夫)、全身血まみれ、顔は原形をとどめず、全身のいたるところが骨折。大規模手術チームが編成され、外科医たちが手術、かかりつけ医、血管外科医、形成外科医、耳鼻咽喉科医、神経外科医、歯科医・・・多くの医師が出入り。麻酔科医研修2年目のロブは、こんなことして何になるのだろうという考えが頭をよぎる。自ら望んで人生を終わらせようとした女性なのに。
朝8時に彼は帰宅、午後6時にまた来ると手術はまだ続いていた。長時間麻酔は危険だと告げる。そのため24時間で手術は終了、彼女は人工呼吸器につながれたが、麻酔による後遺症はなし。ロブは彼女のことを少しずつ忘れていたが、2ヶ月後にまだ集中治療室で意識不明であることが判明、なんという時間と資源の浪費だろうと心の中でつぶやいたが、数ヶ月後に容体が回復し始め、人工呼吸器が取れそうになった。しかし、妙なことに、それから夫の来院回数が減り始めた。人工呼吸器が外された日、彼女は意識を取り戻して言った。「夫が私をバルコニーから突き落とした」。夫は逮捕され、殺人未遂を自供した。
80.ピーナツバター・サンドウィッチ
職場でとつぜん倒れた女性が運ばれた。脳のスキャンをしても異常なし。しかし、心停止。両親とボーイフレンドも駆けつける。ボーイフレンドが彼女のカバンをかき回してドナーカードを探し出し、臓器提供の意思表示、両親もなんとか納得。
臓器を取り出す前に、瓶10本分の血液を採取し、大学病院に送って彼女の「組織型」を確認してもらう。臓器適合者を見つけやすくするため。毒性学者にも血液サンプルを送った。すると、謎の物質を採取した形跡が見られると連絡があった。法医学研究所に遺体が移されたものの、遺体に血液が残っておらず、それ以上調べられない。でも、「組織型」用の血液サンプルが大学病院にまだ残っていた。調べると「シアン化合物」が出た。ボーイフレンドが作ったピーナツバターチョコのサンドウィッチに毒が盛られた疑い。しかし、シアン化合物はそこからは発見されず。やがて、彼が自白した。彼が研究室で使っていた防腐剤を入れたのだった。そこに含まれる化学物質が体内でシアン化合物に変化することを、化学者である彼は知っていた。サンドウィッチからは防腐剤が検出され、彼は逮捕。彼には境界性パーソナリティ障害があった。彼女の臓器提供の意思が、彼の完全犯罪を見抜くきっかけとなった。
一歩間違えば・・・という体験も
66.内なる声~帝王切開
タンザニアで牛車に乗って村から病院に運ばれた妊婦。足の間からは真っ青な手とへその緒が垂れ下がっていた。牛車に乗せられてすでに10時間。へその緒に脈拍はなく、胎児の心音もなし。念のため助産婦にも確認、やはり同じ結果。帝王切開で出す場合、土や砂で汚れた胎児の手を子宮内に押し戻さないといけないが、子宮内感染の恐れあり。残された道はおぞましい方法、膣から取り出せるように胎児の身体をぐしゃぐしゃに潰す方法。
しかし、考えを変えて帝王切開することに。お腹から取り出した胎児は、一度小さく息を吸ったかと思うと、大声で鳴き始めた。生きている!ようやく手の震えが止まったのは、最後の縫合が終わってからだった。
74.寝不足~大動脈瘤
あと1ヶ月で卒業という医大生、かかりつけ医の卵として活動していた。夜間の往診を終えてベッドに入りかけた朝5時に呼び出された。9時半まで待ってもらい、少し寝て患者のところへ。腹痛は消え、顔色もいい。念のためにかかりつけ医で尿検査をしてくださいと言って帰ろうとした時、「ここに変なこぶがあるのだが」と患者から言われる。大動脈瘤の症状だった。破裂したら終わり、すぐに救急車で運ばれて手術は成功。外科医からも患者からも適切な診断と手配を称賛された。しかし、彼はあのまま帰っていれば死なせていたと深く反省、卒業して学位は取ったが、医師になることはやめて毒物学者に。
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5.自転車競技選手グレン
10ヶ月前に大腸癌の手術、他の臓器に転移。医師に全く敬意を払わず、率直な物言いをする。しかし、彼の皮肉やユーモアに惹かれる。彼のお陰で、病院で行うエクササイズ・プログラムができた。非常に親しくなったが、安楽死を頼まれ、結局は引き受ける。以前にサイクリング用のジャージをくれると言ってきたことがあったが、患者からものをもらうことに抵抗があって断った。彼の死後、奥さんが小包を持ってきてくれた。中身はサイクリングウェア一式と短い手紙。「どうだ?今度こそ受け取ってくれよ」と書かれていた。
6.適応力~虐待
家庭内暴力の解決が難しいのは、被害者が加害者を「愛している」場合が多いから。
20.お人好し~強迫性パーソナリティ
婦人科医ミークはその女性の出産後になにかと親切にしてあげたら、VIP待遇だと勘違いされた。病院の受付に手紙を置いていくようになった。お誘いの手紙。ミークは一線を引き、病院法務部と相談して手紙のやりとりを終わらせた。すると、性的なニュアンスを感じる内容の想像を絶する量の匿名メールが届くようになり、不安を越して恐怖を感じ、警察に届けると言うとやっと止まった。1年ほど続いた。彼女からだとは夢にも思っていなかったが、あるとき、その女性の主治医である精神科医から連絡があって、彼女と一度だけ話し合って欲しいといわれた。彼女はストーカーしていたことを告白した。
51.難題~腸壁破裂
妊娠20週目の胎児がエコー検査の結果、腸壁破裂を起こしていることが判明。心臓異常も判明。婦人科医はその若い夫婦に「妊娠を終わらせるつもりはありますか?」と聞くと、怒りのこもった声で「妊娠を終わらせるなんて論外、二度とそんなことを言わないで」と返した。医師は、働き盛りの若い夫婦が障害のある子を受け入れるはずがないと考えていたが、それは大きな間違いだった。何事も第一印象で判断してはならない、他人がどんな船体をするかは誰にも予測できない、ことを学んだ。
61.透明人間~胃縮小手術
肥満解消に胃の縮小手術をせざるを得ない患者。外科医アーノルドが手術した7番目の患者(女性)が、手術1年後に60キロ減量して訪ねてきた。彼女の変貌ぶりにびっくり。職場の人にさえ「新人さん?」と声をかけられるほどになったとのこと。しかし、残酷な真実も。周囲の人々が、太っていたころの彼女の存在に気づいていなかったということが明らかになった。減量したため、彼女のことなど知りもしなかった人たちがとつぜん積極的に近づいてくるようになった。「太っている人は、他人の目に映らないんです」と彼女。アーノルドは1000人以上にその手術をしている。
78.死の予言~パラチフス
畜産業を営んでいた初老の男性がパラチフスで入院、看護師のアーノルドは彼から死の予言を聞かされる。「私は7日以内に死ぬ。そのとき、きみは私の近くにいるだろう」。不安になったが、命に関わるほどの症状ではなかった。やがて、「明日の朝6時までに私は死ぬ」と。内科医に相談し、診てもらうが特に異常なし。6時15分前に呼び出しがあったので行くと、彼はベッドで白目をむいて苦しそうにもだえていた。そして、本当に死んだ。
85.囚われて~遺伝子異変
遺伝子疾患で段々体が動かなくなる少年。彼は勉強して美大にいきたいと。しかし、今のままではむり。何もできない医師。そんな中、看護師が自動車メーカーに何通も手紙を送り、彼のために手動運転装置を備え、音声操作も可能な自動車を手に入れた。彼は優秀な成績で美大へ、さらに大学院へ。会社を立ちあげて大活躍。患者の人生を変えるためには、薬や治療ではない「別の何か」が必要なことも。彼にとっての最高の治療は1台の車だった。