荒井裕樹のレビュー一覧
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ネタバレ差別について考える時、いつも浮かぶ私の実体験がある。
昔、3歳の娘と手を繋いで歩いていた時、向かいから黒人の方が歩いて来てすれ違った。娘は明らかに顔をしかめて通りすがり際にその方を避けて、ウェッ だったか なんだったか 侮辱的な反応をした。
私は ただただ ビックリして 落ち着いて娘と話ができる場所で先ほどの行為がどれだけいけない事なのか 混乱しながらも一生懸命幼い彼女に説明した。
3歳の娘はテレビ以外で見る初めての黒人が奇異に感じて反射的にそういった反応をしてしまったんだろう。「知らない」という事の恐ろしさ。そこから始まる差別的感情についてずっと考えていた。多くの差別は無知から始まってい -
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ネタバレまとまらない言葉を生きる
「言葉が壊されている」そんな危機感?焦燥感?を抱いた文学者が書いた本。
人の、主には障害者たちの生き様をのせた言葉、その言葉が出るに至った背景などのエピソードを紹介することで、何か簡単には言葉にできないはずのものが端的に効率よく要約されてしまう、という現象に抗っている。
心地よいのは、著者の言葉がとても平易であり、言葉を壊している人(あるいはそういう時代の趨勢のようなもの)への批判というより、自分の中に生じた違和感について深掘りしていくスタイルだということ。
個人的に印象的だったのは「障害者に生きる意味はない、という言葉に抗おうとすると、障がい者の生きる意味についての -
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ネタバレ"でも、私が心から望んでいるのは、「障害者とはなにか」や「障害者とはだれのことか」について、私と一緒に悩み、モヤモヤと考え続けてくれる人が少しでも増えてくれることなんです。
本書のサブタイトル「『わからない』からはじめよう」の「から」には、「理由」と「出発点」の両方の意味をこめました。"(p.220)
中学生向けの体裁だけど、中学生『以上』向けってことで、当事者でも非当事者でも読めるなら読んだ方がいい(自分は精神・発達障害者で、身体は無)。
著者の荒井裕樹が「青い芝の会」の本を出しているだけあって、第2章からギアが上がる印象。障害者を取り上げる本でも、この集団の話に -
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タイトル通り、感想をまとめることも非常に難しいのですが、読んで良かったと思える本でした。
自分自信を概ね「マジョリティ」側であることを自覚した上で、たくさんの「マイノリティ」に触れてきた筆者だからこそ持てる視点と葛藤がほんのりとあたたかく、それでいて居心地悪く響いてくる内容でした。
「弱者」を弱者たらしめているものは一体何なのか。
「自己責任」と他人に向けて吐いた言葉は自分を呪う。
内容はとても重たく、考えさせられるものばかりなのですが、筆者の柔らかい言葉遣いのお陰でサラサラと読めました。
たくさんの本や言葉が紹介されていて、次に読むリストがどんどん膨らんでしまいました。 -
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ネタバレ簡単にまとめられない言葉や感情、どうやっても伝えることができない、理解してもらえないだろうと思うことがままあります。
本書は言葉について注意深く繊細に語ろうと努力した本というふうに感じました。理解を求めるというよりかは、著者自身が出会って考えさせられたり、人生が変わっていくきっかけになったり、お守りになったりしたような言葉について書き留めている印象がありました。
p13何かをきれいにまとめようとすると、そこからスルリと落ちるものがある。(略)「伝えられることの総和」が目減りする。
p27「生きづらさ」の重さ比べをしても決して楽にならない。むしろ、結果的に「黙らせる圧力」を高めてしまうだけだ -
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率直にいえば、簡単に読んでいいような本ではないと感じた。そして、感想を書くのがとても難しかった。
私は、本書は『短い言葉や伝わりやすい言葉が重視されがちな現代において、短くできない言葉が存在しないものとされることや、本来の意味が理解されず言葉が軽く扱われていることに対して警鐘を鳴らすもの』だと理解した。
著者は「被抑圧者の自己表現」を専門としていることもあり、各エピソードは障がい者に関する内容も多くなっている。
特に第七話『「お国の役」に立たなかった人』を読んでいて、現在も同様の状況になっているのではと恐怖を感じた。
この章では、戦時中、”お国の役に立た”ず迫害の対象となった障がい者たちが -
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p.3 日々の生活の場でも、その生活を作る政治の場でも、負の力に満ち満ちた言葉というか、人の心を削る言葉というか、とにかく「生きる」ということを楽にも楽しくもさせてくれないような言葉が増えて、言葉の役割や存在感が変わってしまったように思うのだ。
p.8 こうした議論の打ち切り方は「議論の際は根拠を示して丁寧に説明すること」と教室で叫び続けているぼく
からすれば「学生に見せられない議論」そのもので、教育に関わる者の一人として耐えがたいものがあった。
更にいえば、「〇〇と言ったことはない」といった発言や、いわゆる「ご飯論法」といった議論の仕方も、恩師から「学者の発言に時効はないからな」と教わ -
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感想さえもまとまらない
終話がとてもいい
荒井さんの「自分の言葉」がいちばんいい
まとまらない日々が愛おしくなる
生きるのに遠慮はいらないんだ
自分以外の誰かに対して硬直した像を押し付けることと、自分自身を堅苦しい像に閉じ込めることは表裏一体
そもそもその像って正しいの?
「自己責任」と言い捨てることで、他人の痛みへの想像力を削いでいく
速く慌ただしくなった社会で、膨大な出来事はどこか遠くで起きたことになる
人間の在り方とかを考える時間も取れてない
流れてしまう毎日
黙ることで逃げる
近くの人も思いやる余裕のある余裕がない
うわべだけの言葉
本当に大切なことは何か?
大切な人を思い -
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障害者とは何か? 障害者差別とは何か? ということを考える本。こうした問いに対して、「答え」を出すのではなく、これから差別に出会った時に、一つひとつの問題を考えるための「考え方」を書こうとする筆者の立場が素敵だった。
この本では、第一部で「障害とは何か?」「障害者とは誰か?」について、法律と制度、理論と理屈、社会的イメージの三つの点から考える。しかし、まさに「考える」のであって、最初にも言った通り、その結果、何かしらの答えが出るわけではない。
「歩く」という例では、全く立ち上がることもできない人から、車イスから普通のイスに座るくらいなら自分で歩ける人。杖があって、人混みでなければ歩ける人。膝 -
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タイトルとまえがきから、
政治家に顕著に見られる「日本語の乱れ」について
掘り下げる本なのかと思って読み始めた。
違った。
障害者の声、ハンセン病患者の声、
届かない弱者の声を取り上げた本だった。
といってもテーマが一貫しているわけではない。
少数派が声をあげることに意味があることを訴える部分、
これを読んだときは、ひとつ前に読んだトランスジェンダーに
共通することから、本が本を呼んだのかなあと思ったり。
でもそればかりではなかった。
「川の字に寝るって言うんだね」とぽつりとつぶやいた方から見える
らい病患者に対する親戚の冷たさ。いないことにするから、と。
相模原事件で私が持った違和感はこ