春暮康一のレビュー一覧
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ネタバレ電波望遠鏡の仕組み自体は単純で、実際現代でも普通に使われているくらいなのだけど、その数と配置を工夫することでどんな遠くまでも見に行ける…というのは素晴らしいアイディアだね。複数のドローンを使って空に映像を浮かべるショーに似ている。まさに数は力なり、というわけだ。
宇宙全体を変えた主人公の始まりが、父親から語れた名付けの(もしかしたら与太話かもしれない)由来というエッセンスがよかった。
坂を転がるボールのように、行くべき道が偶然でも決まっていく。
時間も空間も因果も飛び越えて、未知を見つめる少年のお話。SFというよりは冒険譚にちょっと近いかな。 -
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久々のSF。初読み作家さん。
ファーストコンタクトものということで読んだんだけれど、そもそも地球外生命、いえ地球外の環境にコンタクトを取ること、干渉することの善悪を問われるような内容だった。
収録されている三篇のうち、最後の「方舟は荒野を渡る」が一番好きかな。まだ希望がある気がする終わり方で、前二篇との繋がりきちんとあって連作中編なんだなーと分かる感じがいい。
割と翻訳ものっぽさを意識している文体なのかな?と感じた。この辺は読む人の好みだと思うけれど私は割と好きな文体でしたよ。
少しネタバレ。
「方舟は荒野を渡る」の大きな知的生命の中に小さな知的生命が息づいているという構造が好きだった -
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ネタバレ現在 過去 未来 3つの時間軸により、物語は展開されていく。
望 新 縁の3人が夢見た遠くを見に行くという情熱は冷めることなく、宇宙探査は続いていく。探査の中で様々な生命体と邂逅し、交流を深めていく様は読んでいてワクワクさせてくれた。また、探査を続けていると既に絶滅した(厳密には保護されている)文明の残骸なども荒廃的な世界観があってとても良かった。
締めの8~9部は望がブラックホールの特異点の先にあるものを見に行くということで、今までとてつもない時間を旅した仲間との別れなどが描かれており、この先どのような結末が待っているのかと読み進む手が止まらなかった。
望が見てきた一億年と共に仲間と -
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『三体』が前提とする宇宙観が、私はどうにも許せなかった。
「許せない」と言うのは「正しくないと思っている」とは違う。
正しい正しくないはこの際議論すまい。
ただただ許せなかったのだ。
三体の宇宙観は、
”宇宙で、ある程度の安定した存在は自身の再生産を目指す。再生産を目指すものしか宇宙では安定しえない。再生産するためには資源が必要となり、しかし無限の安定性を目指す存在に対して資源は有限である。そういった前提のあるが故に宇宙とは闘争か逃走の舞台である”
だ。
本作はそういった宇宙観とまったく異なる宇宙を提示する。
『三体』は揺らぎようのない確固たる前提を暴き出しその上に楼閣を築いた。 -
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ネタバレこれは純文学では。。。?とくに【主観者】
国語の教科書にでてきそう。
この本の収録作は3つとも共通の世界が舞台になっていて、人類は太陽系外に生命や知性の存在を求め、たまには移住先を求めて、各地に調査の手を伸ばしている。
とはいうものの、探索にあたってのモラルと言うか考え方はいろいろあって、基本的に客観者として他の生態系に大きく影響を与えないというのが大前提となっている。(今の考え方と近い)
しかし、人間は好奇心に抗えず、そんな前提を無視して度々問題を起こしてきている。そんなどうしようもない人間について3章では
"私達は与えるものも持たずに何かを見つけては、与える代わりに奪ってい -
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ネタバレ全体として、SFを基にした科学技術検討に使えそうなお話。異星生物へのコンタクト方法 知りたいという好奇心と他の種族に危害を与えることは避けたいという自制心を どうやって折り合わせるかを考え抜いている(本作品の検討結果は当分の間は使われることはないだろうが)。作者はとっても頭の良い人だと思います。
主観者:サトラレを元ネタに、種族全体として集合的精神を持つ生き物ルミナスを発見した宇宙探査計画アルゴの調査隊の失敗のお話。失敗の過程が良く考えられている。見られてもダメなんだ!
法治の獣:不快衰弱というルールのもと繁栄しているシエジーの種としてのルールを人類のスペースコロニーがマネしているという設定 -
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「主観者」「法治の獣」「方舟は荒野を渡る」の3作品収録のSF中篇集。
未知との遭遇が基本におかれた3作品です。
ファーストコンタクトの際、無意識下にあるコンタクトした側のマウントが何をもたらすのか、ということを書き出したかったのかなと思います。
蟻の行列をいじくりまわす子供のような振る舞いをしないようにと戒めているのですが、結果としていじくり回すことになってしまう「主観者」と「方舟は荒野を渡る」。
対象の観察から何かを学ぶことができる、と考えるがゆえに、いつの間にか依存してしまって崩壊してゆく「法治の獣」。
本能と知性という相反する存在が、実は繋がっていて連動しているということへの気づき、を -
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オ―ラリメイカー:壮大なスケールで物語が展開され、最初は理解するのに精一杯だったが、最後は何とかなった。星系のスケールで播種をめざす生命体のアイデアは昔からあるが、本能で播種を行う生命体とそれを観察する知性体というのは面白い。惑星間航行を容易にする惑星エレベータとか、恒星系を丸ごと船にするというアイデアは初めて知った。太陽系惑星まで、銀河系内、他の銀河で宇宙旅行の難易度は大きく違うのですね。ヤマトだとワープがあれば同じなのですが・・・
虹色の蛇:稲妻の惑星での生意気な少年と外交官の話。誘雷樹と彩雲が見えるよう。短編アニメ向きのおはなし。
文庫本では改訂されているらしい。読まねば。 -
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ファーストコンタクトにおける常識を問うような展開が面白い!そうですよね、SF作品では当たり前になっているからスルーしてしまいますけど、冷静に考えれば地球外生命体が二足歩行したり、話しかけてきたりと、こちらの常識で計り知れる存在であると信じてしまうことがおかしいんです。そんなことに気づかせてくれたことが衝撃でした。
そして、こちらの常識を疑うような生物(特に「方舟は荒野をわたる」に出てくるまさに方舟と呼ぶしかない生物群)に対する考察の深さや、コミュニケーションの是非を問うような物語の展開がとてもユニークで、非常に面白かったです。
総評として、三体にまったく引けを取らない読み応えの生物学メイン