【感想・ネタバレ】法治の獣のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

めちゃめちゃハードSFで、文系脳には全てを理解したとは言えないが、SF好きとしては非常に楽しめた。
スタニスワフ・レムのソラリスをなんとなく想起させる1作目。
ハードSF×スペキュレイティブ・フィクションのような2作目。これが文系頭には非常に面白かった。
新たな知性体系の可能性を提示した3作目。
すすめです。

0
2023年08月12日

Posted by ブクログ

SFにはビックリドッキリ(宇宙)生物が出てくる話には枚挙がない。植物が異常進化しただの、タイヤ生物だの、血液が強酸になっているだの。
この小説ではなんじゃそりゃという奇想と、進化学生態学的に納得できる(少なくとも一般人には)を両立した科学的に納得できるビックリドッキリ生物が出てくる。しかも、中編3編全部である。
この宇宙生物の設定だけでも面白いが、そこから紡がれるストーリーの妙もまた素晴らしい。
八方隙の無い生物SFなので読む以外の選択肢なぞない。

0
2023年05月05日

Posted by ブクログ

春暮康一との出会い方は、最近出会った上田早夕里と全く同じだった。カバーの色も同じ青緑色。現在、この2人の過去の作品を順序だてて読む準備を進めている。これもアンソロジーに積極的に取り組んだ結果である。今後の読書生活に潤いを提供して戴き、本当に2人には感謝している。

春暮康一といえば地球外生命とのファーストコンタクトのオーソリティー、しかもコンタクトに当たっては緻密で複雑な検討・思考実験を行っており、臆病なくらい相手の生命体の尊厳を考えているという設定。JAXAとは雲泥の差、爪の垢を煎じて濃縮して大量に飲んで欲しいものだ。リュウグウに剣を突き刺してサンプルを持ち帰るとは・・・微生物の親子が突然爆撃を受け、どちらが異星人に拉致されたかもしれないぞ。これは北朝鮮が行っている行為と何ら変わりがない。そこらへん、JAXAは全く配慮していない、研究のためなら、人間の単なる興味・知的満足のためなら、何をやっても許される団体なのだから。

脱線はほどほどにして、各作品については最後に作品ノートがあり、作者の意図は明確に記載されているので、ここでは所感を述べるに留める。

〇主観者
遠く離れた宇宙でなくとも、身近な所と言った方が良いのか、深海に住む動物に対しても同じことが言える。外部からの光が殆ど無い世界で微弱な光を使って意思疎通をはかる動物に対して、突然強力なサーチライトを持った潜水艦がうろうろと調査するとどうなるのか。人間は深海生物の姿を捉えることができるが、深海生物の受光器はどうなるか?もしかしたら、その強力な光は深海生物のセンサーを破壊してしまうのではと考えた。サーチライトを当てられた深海生物はその後どうなったのか?今でも元気で深海をすいすいと泳いでいるのだろうか。

〇法治の獣
法律の自立性とは何だろうかと考えさせられる作品。日本国憲法、戦後アメリカによって作られたと言っても過言ではない現在の日本国憲法は改正することは至難の業だが、自民党の特にアベによって歪められた憲法の拡大解釈がすぐに頭をよぎった。アベというシエジーが自分の欲望のままに民意を意識もせず憲法の拡大解釈を繰り広げる。そして、その様な民意を蔑ろにしたウソツキキシダの勇み足国葬により日本国民が分断、Xデーには日比谷公園・国会議事堂前で暴動が起きるのか。日本の法律を政治家主導で改正するのは非常に危険だ。なぜなら、現在の政治家は常識が無さすぎる、この無能な政治家が日本を沈没させる。小松左京もビックリだな。

〇方舟は荒野をわたる
この方舟は地球のことだと考えた。今は人間が地球の代表者で、地球の命運を握っている。代表者の特権で人間にとって住みやすくするため炭酸ガスを極度に排出して地球温暖化を促進し、その結果特定の国家が消滅するのは小さい話、数多くの種が滅びる、そのうち人間自体も滅亡させる言わば自業自得との予測も立っている。早く人間に代わる高い知性を持ったミズグモが地球を統率する未来が来るのを願っている。そうなれば、地球外生命と建設的で素晴らしいコンタクトができるだろう。

0
2022年09月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

全体として、SFを基にした科学技術検討に使えそうなお話。異星生物へのコンタクト方法 知りたいという好奇心と他の種族に危害を与えることは避けたいという自制心を どうやって折り合わせるかを考え抜いている(本作品の検討結果は当分の間は使われることはないだろうが)。作者はとっても頭の良い人だと思います。

主観者:サトラレを元ネタに、種族全体として集合的精神を持つ生き物ルミナスを発見した宇宙探査計画アルゴの調査隊の失敗のお話。失敗の過程が良く考えられている。見られてもダメなんだ!
法治の獣:不快衰弱というルールのもと繁栄しているシエジーの種としてのルールを人類のスペースコロニーがマネしているという設定。設定自体がぶっ飛んでいるなあ。主人公たちのドタバタ劇はいまいちだったが、人類は自己複製の手段に遺伝子よりも模倣子(ミーム)を重視している(ので 同じ考えの人と群れ、違う考えの人を排除する)というのは秀逸な視点だ!
方舟は荒野をわたる:物語としては、これが一番面白かった。方舟サイズの生態系が全体で知性を持つ。生態系の生物も知性を持つ。人間が生態系の知性生物なら、方舟としての地球も全体で知性をもっているのかも。人間が細胞や微生物の方舟ととして知性を持っているなら、個々微生物が知性を持っていても不思議ではない。知性を持つ生物を探しだして会話できたら とっても面白いだろうなというのが読後感。

0
2024年02月03日

Posted by ブクログ

「主観者」「法治の獣」「方舟は荒野を渡る」の3作品収録のSF中篇集。
未知との遭遇が基本におかれた3作品です。

ファーストコンタクトの際、無意識下にあるコンタクトした側のマウントが何をもたらすのか、ということを書き出したかったのかなと思います。
蟻の行列をいじくりまわす子供のような振る舞いをしないようにと戒めているのですが、結果としていじくり回すことになってしまう「主観者」と「方舟は荒野を渡る」。
対象の観察から何かを学ぶことができる、と考えるがゆえに、いつの間にか依存してしまって崩壊してゆく「法治の獣」。
本能と知性という相反する存在が、実は繋がっていて連動しているということへの気づき、を記そうとしたのかな。

どんな形であれ、未知との遭遇という行為自体が、彼我双方に何かの影響を与えることからは避けられないという物語だったのかな。あるものをあるがままに、ということを保つには、他者とのコミュニティ外との接触を完全に遮らなければならない。それはコンタクトすることを盲目的に善としてはいけないよ、ということか。
そこまで振りかざしてはいないけども、短絡的に感じてしまったのも事実。それを戒めている物語でもあるか。

「法治の獣」のモデルは一角獣がメガテンに登場するカイチだそうで。読んでいる最中から、勝手にビジュアルイメージをカイチと想像していたので、思わぬところで正解をもらいました。変にシンクロ感じて嬉しい。

0
2023年08月14日

Posted by ブクログ

ファーストコンタクトにおける常識を問うような展開が面白い!そうですよね、SF作品では当たり前になっているからスルーしてしまいますけど、冷静に考えれば地球外生命体が二足歩行したり、話しかけてきたりと、こちらの常識で計り知れる存在であると信じてしまうことがおかしいんです。そんなことに気づかせてくれたことが衝撃でした。

そして、こちらの常識を疑うような生物(特に「方舟は荒野をわたる」に出てくるまさに方舟と呼ぶしかない生物群)に対する考察の深さや、コミュニケーションの是非を問うような物語の展開がとてもユニークで、非常に面白かったです。

総評として、三体にまったく引けを取らない読み応えの生物学メインのハードSFであり、ここまで本格的なSF小説を日本人作家が書けるということに衝撃と感動を覚えました。素晴らしい。

0
2023年03月11日

Posted by ブクログ

部分を切り取り、そこだけで評価する傲慢な人間という印象を受けました。
また、海外や日本でも、人間にとって不都合な面がある動物を減らすためその動物の捕食者を恣意的に野生に放った結果、生態系が崩れ人間が暮らすのが困難な土地になったというニュースを思い出しました。

「残念だけど、正しいかどうかは関係ないの。適応したものが広まるだけ。」

0
2022年12月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

むちゃくちゃおもしろいだけでなく、ミステリーの中核となるテーマがわたしの関心ごとにベストマッチしており、驚き満載だった。作者の年齢を見てまた驚き。

「主観者」については、巻末ノートの内容もかなり興味深い。「そういうところから発想するんや〜」という驚き。ただ、光学的サトラレが単独で存在することは可能と思われる。言語の発生を研究している学者はこれに似たようなことを考えているらしく、“言語の出現“とは、話す能力が先か、聴く能力が先かというニワトリ卵問題があげられる。主流派?の見解では、「聴く能力が先に現れる」と考えられているらしい。なぜなら、他人の行動を観察して、「今あいつおなかすいてるな〜」と考えるだけですでに原始的な聴く能力が芽生えており、なおかつそのこと自体が生存に極めて有利な能力だからである。ルミナスにたとえると、自分は発光せず、または意図的に発光せず?、他人の発光を見てばかりいてその意味を解釈しようとするものたちがまずグループ内で優勢になる可能性がある。
だが実際のところわたしは、ルミナスは生物ではないと思っている。あれはおそらく人間かそれに似た別の知的生命体が作り上げた有機構造物かロボットのようなものなのではないか。というのもルミナスの迎えた結末は、わたしが想定している生物と似ても似つかない動きだった。生物はエラーを前提にできている。自分で発光をうまく制御できないルミナスが生まれたり、後天的にそうなったりする可能性は常にあり、特に原始ルミナスは大いにそうであった可能性が高い。であれば、そういうルミナスが多少存在しても全体としてはノイズを排除して群を生かせるようなメカニズムを持って進化していなければならないはず。そうではなくたった一つのエラーが瞬く間に伝播して系全体が停止してしまうというのは、人工物の特徴のように見える。

「法治の獣」の巻末ノートには一箇所文句をつけておきたい。シエジーについても似たようなことを思ったが、ビーバーに知性がないと言うのはさすがに失礼である。あのダムを見せつけられて、これをつくる行動は遺伝子でプログラムされておりその行動を書き換えることはできず…うんぬんと考えるのは人間中心すぎではないか。いや、そう考えるのはいいが、であれば人間もその仲間に入れるべき。個々の人間がいかに無力か考えてみればそれも納得できる。
ちなみにほとんどのビーバーはこじんまりとした巣をつくるだけででかいダムは作らない。使命感に駆られるのか、安全のために必要だと判断するのか、つくる奴らは必死につくる。なぜつくるものとつくらないものがおり、いつどのようにダムをつくろうと思うビーバーが現れるのか想像を巡らせてみてほしい。だいたいどんな理由を考えようが人間が何かするときと大して変わらない理由だろう。「家族のため」かもしれないし、「名誉のため」かもしれないし、「そこに川があるから」だけかもしれない。そう考えていくと当初ニコラがシエジーに対して向けていた感情もよくわかると思う。

0
2022年07月20日

Posted by ブクログ

ファーストコンタクトをテーマとした短編3篇。筆者のペンネームはあのハル・クレメントからいただいたそうで、異星人だけでなくその住む世界も丸ごと構築してスケールの大きいヴィジョンを描くのが得意だったハル・クレメントばりの、実に直球ストレートなSFです。清々しいですね。

ただし、異星人と人類の交流を通して血湧き肉躍る冒険譚を繰り広げるハル・クレメントの作風とは、全く異なります。
この短編集においても、異星生物と人類の接触は描かれますが、人類側は異星生物の生態環境に悪影響を与えないよう厳しいルールの下で異星生物との接触を慎重に行っており、それにも関わらず悲劇的な展開となる場面が描かれます。異星生物の物の考え方や行動原理は人類とは全く異なり、その異質さを”理解”することにより、人類が自らを省みてある時は悲嘆に暮れ、ある時は未来の希望に繋げます。
たいへんクールで内省的な、まさに今現在のファーストコンタクトものハードSFです。

ただ、気になるところもあってですね・・・。
人類が異星生物と接触し、その行動や世界観から学ぶところあり、自省して再び前を見て進み始める、その物語の在り方はSFとしてとても美しいのですが、美し過ぎて鼻白むというか、ちょっと物足りなさを感じてしまうのですね。例えば登場人物の価値観がステロタイプなところであったり、議論のシーンが予定調和的であったりとか、そういったところが鴨的にはもっと踏み込んで欲しかったなと思います。
ただ、これはもぅ本当に好みの問題だと思います。如何にもSF的な未知のヴィジョンを楽しみたい方には、文句なくお勧めできます!

0
2022年06月18日

Posted by ブクログ

 作者のペンネームは、ハル・クレメントに由来するそうだ。短編2中編1からなる中短編集。ツボにはまれば、気に入るだろう。

 人類は太陽系外にその目と手を伸ばしていた未来の物語。作者命名の《系外進出》(インフレーション)シリーズ。
 異種生物への危害を禁ずる<人類の憲章>により異星の生物へのコンタクトは超限定的で、観察が主となっていた…

 本書の解説にもあるとおり、堀晃氏の作品を読んだ時と同じ印象を持った。ペンネームの由来からしても、ハードSF作家と呼んで差し支えないだろう。あ、この山岸真氏の解説は必読です。表紙カバーイラストが加藤直之氏なのも嬉しい。

0
2022年06月01日

Posted by ブクログ

少し硬いかな。ファーストコンタクトの短編集。20世紀のファーストコンタクトに比べると、生物がかなり凝っていて、コンタクトをとるルールが随分と科学であっても倫理的。

0
2023年07月22日

Posted by ブクログ

2022-05-27
ファーストコンタクトしない短編集
文化汚染の問題を見事に生体汚染にまで外抽した佳作。集合知性ってもうそれだけではアイデアにはならないネタを丁寧にポチっちゃったよ
思わずデビュー作「オーラリメイカー」ぽちっちゃったよ

0
2022年05月27日

Posted by ブクログ

昔の宇宙ものでは、未知の惑星に降り立った宇宙船の乗組員が、「酸素がある」の一言で宇宙服まで脱いでしまうという描写が結構あった。今の感覚ではとんでもないが、映像系ではやっぱり宇宙服はジャマだ。というので「危険な微生物は存在しない」とエクスキューズを付け加える場合もあった。つまり此方が汚染する方は気にもしないというわけだ。元々ある種の宇宙SFが抱えていた植民地主義的な感覚がこの辺に表れてると、告発調で言ってもいいのかも知れない。この短編集に登場する科学者たちは、そうしたことに極めて自覚的で、細心の注意を払って、異性の生態系に接触する。それでも、ややこしいことは幾らでもおきてしまう、というお話が続く。そのなわけで、ヒューマンインタレストには乏しく、物語的な盛り上がりには欠けるきらいがある。例えば、「法治の獣」のクライマックス近く、シエジーに異変が起こるのだが、ヒロインたちはコロニーからそれを見下ろしてるだけ。やっぱり現地にいないと盛り上がらないわな、とか思う。とはいえ、SF好きを自認するならマスト。異性の生態系の謎を理詰めで解いていく過程に酔えるはず。

0
2022年04月29日

「SF・ファンタジー」ランキング