春暮康一のレビュー一覧
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ネタバレむちゃくちゃおもしろいだけでなく、ミステリーの中核となるテーマがわたしの関心ごとにベストマッチしており、驚き満載だった。作者の年齢を見てまた驚き。
「主観者」については、巻末ノートの内容もかなり興味深い。「そういうところから発想するんや〜」という驚き。ただ、光学的サトラレが単独で存在することは可能と思われる。言語の発生を研究している学者はこれに似たようなことを考えているらしく、“言語の出現“とは、話す能力が先か、聴く能力が先かというニワトリ卵問題があげられる。主流派?の見解では、「聴く能力が先に現れる」と考えられているらしい。なぜなら、他人の行動を観察して、「今あいつおなかすいてるな〜」と考 -
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ファーストコンタクトをテーマとした短編3篇。筆者のペンネームはあのハル・クレメントからいただいたそうで、異星人だけでなくその住む世界も丸ごと構築してスケールの大きいヴィジョンを描くのが得意だったハル・クレメントばりの、実に直球ストレートなSFです。清々しいですね。
ただし、異星人と人類の交流を通して血湧き肉躍る冒険譚を繰り広げるハル・クレメントの作風とは、全く異なります。
この短編集においても、異星生物と人類の接触は描かれますが、人類側は異星生物の生態環境に悪影響を与えないよう厳しいルールの下で異星生物との接触を慎重に行っており、それにも関わらず悲劇的な展開となる場面が描かれます。異星生物の -
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作者のペンネームは、ハル・クレメントに由来するそうだ。短編2中編1からなる中短編集。ツボにはまれば、気に入るだろう。
人類は太陽系外にその目と手を伸ばしていた未来の物語。作者命名の《系外進出》(インフレーション)シリーズ。
異種生物への危害を禁ずる<人類の憲章>により異星の生物へのコンタクトは超限定的で、観察が主となっていた…
本書の解説にもあるとおり、堀晃氏の作品を読んだ時と同じ印象を持った。ペンネームの由来からしても、ハードSF作家と呼んで差し支えないだろう。あ、この山岸真氏の解説は必読です。表紙カバーイラストが加藤直之氏なのも嬉しい。 -
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なんとか最後まで読み切った。
SF初心者としてはかなりハードな内容でした。終盤までは退屈さを感じながら読んでいたので、読み終わった時には酷評してやろうと考えていました。だけど終盤につれてしっかりと引き込まれる物語にされていたので、全体としては良かったと思います。
SF小説を紹介している雑誌でランキング1位になっていたので、試しに買ってみたものの自分の好みでは無かったと感じました。銀河系全体を股にかける壮大なスケールなので、ただただついていくので必死で物語に深く入り込めないのもきつかったです。
まあ評価的には中間ってところです。誰にでもおすすめって感じではなくて、玄人好みではないかと思いま -
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ネタバレ観測できる世界は宇宙からまた違う果ての宇宙までどこまでも広がっていて、想像以上に多くの生命体が存在して、その生命体を観測することで社会を知り、また大きな別の生命体が存在することがわかったのならどうするか。地球人はちっぽけな情報体のひとつにすぎないし、宇宙旅行を安全なコースで行ったって新たに掴める情報は少ない。観測しなければ何も見つからないから、遠くへ行き観測をすることを繰り返す。主人公は望む、その名は遠くを見ることと親に与えられたとおりに。疲れるような長い話だが、望は情報の全てを使って延々と観測する。観測し終える日は来ないと理解して全てを注ぎ込んでいる。
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昔の宇宙ものでは、未知の惑星に降り立った宇宙船の乗組員が、「酸素がある」の一言で宇宙服まで脱いでしまうという描写が結構あった。今の感覚ではとんでもないが、映像系ではやっぱり宇宙服はジャマだ。というので「危険な微生物は存在しない」とエクスキューズを付け加える場合もあった。つまり此方が汚染する方は気にもしないというわけだ。元々ある種の宇宙SFが抱えていた植民地主義的な感覚がこの辺に表れてると、告発調で言ってもいいのかも知れない。この短編集に登場する科学者たちは、そうしたことに極めて自覚的で、細心の注意を払って、異性の生態系に接触する。それでも、ややこしいことは幾らでもおきてしまう、というお話が続く