関口涼子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
パリ在住の著者がレバノンの大都市ベイルートに滞在し、「他者を内部に入れる」行為である食事と料理を通じて考えた、街と戦争と生活にまつわる321章。
フランス語の著作が高く評価されているパリ在住の日本人が書いたレバノン滞在記。本書も元々フランス語で発表したものを著者自ら日本語に書き換えている。
関口さんは1ヶ月半のベイルート生活にあたり、料理をテーマに本を書く決めた。滞在中は自炊せず、三食すべて土地の人と同じものを食べたという。他国での食事は「他者を自らの内部に入れ、受け入れられるか否か」を問う行為だからだ。
並行してレストランガイドも作ったというから沢山の店に行ったのだろうが、本書はその食体 -
Posted by ブクログ
2021年にフランスで出版され翌年に邦訳版が刊行…という、逆輸入のような本書。
副題の「321皿の料理」だが、全て料理のレシピが書いてあるわけではなく、著者(作家・翻訳家。仏語と日本語で創作活動を展開)が現在住まうパリや取材で訪れたベイルート、日本での幼少期の出来事が321項目列挙されている。
そんな不思議な番号の振り方・統一感がないようにも見える書き方に当初は違和感を覚えたが、次第に話の続きが気になるように気持ちが向いていた。
「ベイルートの住民が食べる料理」をテーマに、2018年4月6日-5月15日まで取材・滞在することになった著者。滞在中はベイルートの人々が作るものしか口にしないとル -
Posted by ブクログ
ベイルート作家協会に招かれたパリ在住の日本人作家が、1か月半の滞在についてフランス語で綴った本を自ら日本語に訳した本。
副題の321皿の料理とは、レシピではなく、短く分けられた321の章のことだ。
度重なる戦乱に街も文化も歴史も人心も破壊され尽くし、それでもなお「食べる」ことに心を砕き、生を楽しむベイルートの人々の生き方を、自らの祖母や母から伝えられた料理の記憶を繙き、からめながら語っていく。
やがてそれは、ベイルートの人々と日本人との共通点への考察に及び、また、現代日本のあり方へのゆるやかな批判も含んでいく…というか、自らを顧みる材料になってくれる。
とてもとても引き込まれた。
彼女は資料に -
Posted by ブクログ
サヴァブッククラブで選書いただいた作品。
自分では出会えなかったであろう一冊であり、出会えなかったら後悔したであろう一冊。
半世紀以上の時を経て刊行されたふたりの物語に圧倒される。
解説にもある通り、古臭いのは書かれている時代であって、描かれた友愛は決して古くなくむしろ普遍だ。
アンドレはどうしたって死に向かってしまい、シルヴィーのほうが自由なのに彼女は彼女でアンドレに向かって見返りを求めない愛を注いでしまう。
生まれる時代が違ったなら、ふたりはきっと思うままに生きられたのに。
彼女たちがのような人がいつの時代もいたからこそ、こうして現代に繋がっているのかもしれない。
2021年に