ヨハン・ノルベリのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ進歩の代償とされる、よい職の減少、賃金の停滞、格差、などは生じていない。資本主義は常に美しい訳では無い。
市場は、価値観、才能、努力に報いてくれるわけではない。唯一、他人のために効率よく価値を作り出したものに対して報いてくれる。この自由市場の仕組みが、他の仕組みに比べて優れたものにしている。新たな価値を作り出す動機になる。
豊かさ、食事、寿命など過去よりも、ずっとよくなっている。
アフリカでも、モーリタニアやボツワナなど、大発展している国がある。他の国は支配階級が利権を温存しているから発展しない。
経済成長がなければ、他の問題も解決しない。
コロナ、戦争などの危機にも自由な対応力が発揮できる。
トップ1%が100倍生きられるわけではない。全員の生活向上に比べたら優位性は少ない。
資本主義のほうが、やりたいことができるので幸福をもたらす。
孤独死、ブルシットジョブ、ハイテク独占、SNSのデータ資本主義、なども、中国などのミッション志向主義よりも自由主義のほうが解決方法が柔軟で進んでいる。
古典的リベラリズムの立場。
左派をリベラルと呼んで、大きな政府と規制を要求するのは、本来のリベラリズムとは違う。
リベラリズムは自由主義のことだが、新自由主義やネオリベラリズムというと、右派のレッテルになっている。政府介入を拒み、規制を緩和する主張。
どちらの立場とも少し違うので、古典的リベラリズムと呼んでいる。ハイエクなどのオーストリア学派に近い。
とはいえ、規制がまったく不要ではない。警察、司法、インフラ、などは必要。エリツィン時代のロシアは、法治がなかったため、失敗した。
環境問題は、どうやって解決するか。市場の失敗を償うための方法には、規制や管理者が必要。
適切な範囲で規制が必要。適切な範囲が、人によって違う。
市場万能論は、粗雑に見える。市場の失敗をあげつらうほうが利口に見える。問題はどちらに寄るか。
同じデータを見ても、解釈が違う。
底辺層の35%の人々が脱出できている=格差は固定されていない。一方、半分以上の人は脱出できていないので肯定されている、と解釈するか。 -
Posted by ブクログ
歴史上、新たな技術などの”異質なもの”に対して「オープン」な姿勢で接した国家が成功してきた反面、それらの国々がいつしか「クローズ」になり、没落していったのはなぜか。人間の進化の過程を遡ってその要因を明らかにし、現代社会に影を落としつつある「クローズ」の脅威に立ち向かう方策を提唱する啓発書。
著者は、かつての古代ギリシャやローマ帝国から、8世紀以降のイスラム諸国、宋代の中国や近代オランダ帝国に至るまで、歴史上「帝国」と呼ばれた国々に共通する成功の根本要因は、”他所者”たちと能動的に交流する社交性や、それらがもたらす異文化や新技術などを認める寛容性と、既存の価値観に捉われずに新たなものを積極的に学び、模倣して取り入れる柔軟な精神にあったと分析する。
しかしそれらの国々が様々な要因で政治的・経済的に行き詰まると、社会生活が「ゼロサムゲーム」であった旧石器時代以来の人間の本能が呼び覚まされ、人々は”仲間”(オレたち)と”他所者”(ヤツら)を区別して後者を敵視し排外的になるとともに、未来の不確実性を嫌う一方で過去を美化し、古い安定的な価値観に執着するようになり、最終的には国全体が衰退することになるという。
著者は、17世紀以降のヨーロッパ啓蒙主義とイギリスの産業革命、それに続くアメリカを中心とした現代社会の繁栄が、今のところ歴史上「唯一の例外」であるが、それが今後も継続するかどうかは、「保守 vs リベラル」ではなく、「オープン vs クローズ」の対立軸を乗り越えられるかにかかっており、我々一人ひとりが本能的なクローズの誘惑を克服する必要があると説く。
誰もが頭では理解しているオープンさの重要性、それでも時にクローズになってしまう要因を、人類の歴史や人間の本能といった観点から丁寧に紐解き、説得力のある理論を展開しており、翻訳者のあと書きも含めて、「オープン」を読者一人ひとりが自分事としてより深く考えるきっかけとなる良書。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「オープンな社会の方がクローズな社会よりも望ましい」という直感的にも納得感のある主張を、歴史を振り返りながら検証していくと同時に、なぜ人類はオープンな社会を維持できないのか/維持するにはどうすればいいのかについても考察された本。
人は、共感しやすい内集団と攻撃的に振る舞いがちな外集団をつくりだすが、内集団を広げて、多様性をどこまで取り込めるかが、オープン性にかかっているような気がした。
この内集団と外集団の境界は簡単に変化するもので、外集団と接して共通点を見つけるだけでも内集団は広がるし、逆に内集団内で疑心暗鬼が広がるだけでも内集団は狭まる。
オープン性を維持する方法は、シンプルに、外集団との接点を持つことと、内集団内での風通しをよくすることかもしれない。(もちろん、組織が大きくなればなるほど、このシンプルなことをやる/やり続けることは難しくなるが。。。)
あとは、ゼロサム思考が蔓延らないようにするということかもしれない。外集団の得は内集団の損というゼロサム思考は、なんとなく正しい気がしがちだが、必ずしもそうではない。(移民という外集団によって、仕事が奪われる/犯罪が増えるといった話は、数字を見ると必ずしも正しくない)
自由貿易や感染症に対するグローバルな対応等、オープン性を追求することで非ゼロサムの実現に繋がることに注目する必要がある気がした。 -
Posted by ブクログ
資本主義を帯びたグローバル化が世界を救い続けていることがわかった。自由市場では人はいい人になる必要があり、競合からの圧力によって価格は下がり、消費者は低価格で高品質なものを選ぶことができるようになった。
国は豊かになり、人も幸福になった。
でもなぜか、違和感があるような気がしてならない。むずむずするこの感覚はなんだろうか。
確かに私は今必要なものを十分持っているし、冬に寒くて凍死することもなければ栄養不足で痩せこけることもない。そして私はいい人だと思う。自己理解の努力もしていて、大抵のことは我慢できる自信がある。孤独を楽しむこともできる。だからこそ、あえて人と関わる必要がなくなっているのが私の今のいちばんの問題だと思っている。なぜなら自分さえ良ければ幸せだと感じているからだ。人のため、何十年後の未来の人たちのため、子孫のためなんか考えていないことが、なぜか、人として1番問題なような気がしている。
資本主義は確かに世界を豊かにしてくれたし、金銭面で本当に困ることなど無い。だからこそ、そろそろこの資本主義に終わりが来るのだと思う。それは資本主義で競争社会にいるAI業界の人たちが、寝る間も惜しんで日々AIの精度を上げていき、ついに完成した暁には、資本主義の競争など必要のない社会が待っていると思う。 -
Posted by ブクログ
ヨハン・ノルベリ氏は、1973年ストックホルム生まれの歴史学者・著述家。ストックホルム大学で歴史学修士号を取得後、思想史・経済学・統計学・進化生物学などを横断的に研究。経済グローバリズムと古典的自由主義を擁護する立場で、『進歩』(原書は2016年出版)、『OPEN』(原書は2020年出版)で、英誌「エコノミスト」のブック・オブ・ザ・イヤーを連続受賞。2007年から米ケイトー研究所のシニアフェローを務め、公共テレビ向けのドキュメンタリーも多数制作。
本書は、題名の通り、資本主義によるグローバル化と自由市場の優位性を説いたもので、2024年に出版された。原書は『THE CAPITALIST MANIFESTO』(2023年)。
私がポイントと思った点を列挙すると概ね以下である。
◆資本主義はこれまで、世界の貧困率を劇的に下げてきた。経済的に自由な国は、平均寿命が長く、経済成長が高く、賃金が高く、貧困削減が大きく、投資が多く、汚職が少なく、主観的な厚生が高く、民主的で、人権が尊重されている。
◆「成長」とはGDPの水準が上がること。成長と進歩はほぼ確実に相関している。世界の貧困をなくすための最高の方法は、全体の成長を生み出すことであり、ケーキの大きさの方が分配よりも重要。自由市場は、意図せずとも多くの人が協力することになるため、あらゆる中央管理のシステムよりも生産力を向上させる。自由市場の価格は、人々の求めるものの情報を伝え、かつそれに適応するような行動を促す、経済の「GPS」である。市場経済は、他人のために最善を尽くし、代わりに他人に最善を尽くしてもらう、互恵のシステム。
◆自由市場に反対する人々は、かつては、貧困国を貧しくすると考える左派が多かったが、今では、貧困国を豊かにするが、富裕国を貧しくすると考える右派ナショナリストが多い。しかし実際は、多くの中産階級の所得は増え、労働時間は減り、仕事の満足度は上がっている。自由貿易のために失業した人を救う方策として保護主義(関税)は逆効果。
◆資本主義において富が公平に分配されないのは事実だが、資本家は利益を出したこと自体が社会還元なのであり、自らの取り分は決して多過ぎるとは言えない。むしろ、現代はかつてないほど、重要な多くの財・サービスが平等に分配されている。世界の億万長者2,153人は、最も貧しい46億人を合わせたよりも多くの資産を持っているが、仮にそれを配ったとしても、46億人の年間所得を1年だけ60%押し上げるに過ぎない。よって、貧困を減らすには、既にある繁栄を再分配するのではなく、投資によりもっと多くの繁栄を生み出すことが必要。
◆GAFAなどの大企業は、イノベーションの主体であり、労働条件もよく、我々にとってむしろ有益。資本主義は、消費者が資本家を監督する手段としても機能する。資本主義のデメリットとされる、計画的陳腐化は言われているほど多くはなし、流行を追う行動も、商業的に作られたものではなく、進化で身についた本能。
◆偉大なイノベーションは、政府の計画や孤高の天才から生まれるものではなく、民間の相互協力から生まれる。
◆地球温暖化とその影響を減らすには大規模な変化が必要。しかし、多くのエコ論者がいう「脱成長」は全く無意味で、それは、コロナ禍のロックダウンで減ったCO2排出量がわずか6%だったことからも明らか。温暖化に対応するには、繁栄と技術が必要。これまでの環境問題は、天然資源の枯渇リスクなども、上手く対処されてきた。近年では、資源の消費量と人口・経済規模において、絶対的デカップリングが起こっている。気候・環境問題を解決できる技術やイノベーションは、今の段階では誰にもわからず、だからこそ、できるだけ多くの人々を動員してそれに取り組まなければならないのであり、脱成長は解決策ではない。
◆自由市場と個人主義的な社会は、人間関係やコミュニティ等の私たちを人間たらしめるものの対極にあるのではないか、人を幸福にしないのではないか、という指摘がある。しかし実際は、心を病む現代人は増えておらず、金銭的インセンティブが私たちの公共心を損なうことはなく、市場主義社会の方が人助けの意欲が高く、経済成長が幸福に貢献することが明らかになっている。
私は、著者とは反対に、最近の(行き過ぎた)資本主義による、格差の拡大、気候・環境への影響等は看過できないと考えており、斎藤幸平氏が『人新世の「資本論」』で提案した「脱成長」に基本的に賛同する立場で、セルジュ・ラトゥールの『脱成長』、ジェイソン・ヒッケルの『資本主義の次に来る世界』等の本も読んできた。そして、こうした意見の対立の大きなテーマにおいては、逆の立場の考えを知ることは不可欠であり、本書を読んでみた。(以前に、柿埜真吾氏の『自由と成長の経済学』等も読んではいるが)
一読して、内容は概ね予想通りだったのだが、この考え方の違いはどこから生じるものなのか、しばらく思案して、思い至ったのは、「足るを知る」ことに対する考え方の違いである。つまり、本書に賛同する人々は、物質的な豊かさや便利さ(今日よりも明日という意味でも、他人よりも自分という意味でも)を求める気持ちが強く、よって、何か問題があっても、それは解決されるに違いないと希望的に考え、一方、賛同しない人々は、物質的な豊かさや便利さはもう十分なので、よって、何か問題があるなら、豊かさや便利さを引き換えにしてでもそれを解決するべきと考えるのではないか。。。実際、本書の主張を振り返ってみると、多くは驚くほど楽観的である。
また、本書では論じられてもいないが、私が強く懸念しているのは、資本主義(=成長至上主義)が科学万能主義とつながり、人間が人間らしさを失っていくことである。生命工学やAIの技術は、使い方を間違えれば、オルダス・ハクスリーの『すばらしい新世界』やフィリップ・K・ディックの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』(映画「ブレードランナー」の原作)のような、ディストピアに繋がりかねないのだ。人間は過去に、原子力技術の使い方を間違う過ちを犯していることを忘れてはいけない。
まだ別の道を選ぶことができる今(もう遅いのかもしれないが)、それぞれが、自分事として、他人の意見を鵜吞みにするのではなく、自分の頭で考えることが必要なのだ。
(2025年11月了) -
Posted by ブクログ
多少極端かなと思うところもあるし、このデータって本当に全体を見たとき、また違う視点から見たときに正しいのだろうかと思う点もあるが、資本主義がこの世界の中で主流となっていることや、今起きている世界に対してある1つの見方を知るという意味ではよかった。
資本主義は人間の欲と密接に結びついており、よく=より良い生活をしたいより、お金を得たいと言う欲求をもとに成り立っている。
そのため、資本主義はあらゆる経済や産業に対して発展をもたらす。それは何かの発明であったり改革と言うわけではなく、そこに対してのエネルギーが注がれていた結果だと私は思う
資本主義があらゆる世界で広まったことによって、人々の経済水準が上がって、より良い暮らしになったと言われている。これは本当のデータ本当に相関性があるのかと言われると断定はできないが、確かに一理あるかと思う。何よりこの本で話していたのは人が強制ではなく、自由に働く場所や住む場所であったり、どのように生きるかと言うことを選択できることと書いてあった。確かにこれは今までの制度ではなかった仕組みだったと思うので、私の中では参考になった。 -
Posted by ブクログ
資本主義の良い面の指摘は納得。環境問題は環境税の導入が前提となっているが未達成。
資本主義の批判主体が左派から右派に変化したのは興味深い。
・資本主義は儲けのために、人種差別を拒否する。
例)1900年米国南部の人種分離州法導入時の反対訴訟
・ラストベルトの貧困はグローバル化と相関しない。補助が複雑で稼ぐ、貯蓄すると手取りが減る。移動の自由がないこと。
・ゾンビ企業が1ポイント増えると、経済の生産性上昇率は0.1ポイント下がる
・中国の改革プロセスは「自発的な力の利用に習熟し、自発的な力を意識的な政策に変える」という話だった。
・2010年以降も専制化 -
Posted by ブクログ
■■概要・感想■■
○人類の歴史を振り返ったときに、OPENさを基調とした組織は発展し、クローズドな組織は発展しなかった。その実例たんまりで解説した本。
○これとFACTFULLNESSとを続けて読んだことで、自分の常識が古くて間違ったていたり、懐古主義だったりすることに気づくヒントを得られた。
○OPENであることの重要さとともに、Closedになってしまう心境、本能、実例などがある。両方の側面から見ることで、それでもOPENでいることは大事。というか、今まで成功した事例は、ホントはclosedにしたかったけど、openにせざるを得なかったという状況が、全体のレベルアップに貢献したということになったのだと感じた。