ケイト・クインのレビュー一覧
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1947年、戦争中に行方不明になったいとこを探すシャーリー。手がかりは一人の女性・イヴ。尋ねてみると、イブは酔いどれ、しかも指は潰れたいた。イヴは元スパイだった。第一次大戦中、ドイツ占領下のフランス北部へ潜入。凄腕のスパイ“アリス”が無数の情報源を統括していた。イヴの過去、いとこの運命は? 傑作長編!
アリスは実在したスパイらしいです。そのアリスやオラドゥール=シュル=グラヌの悲劇とか初めて知ることが多く、歴史的なものでも私は圧倒されました、知識を得ながら興味深く読めました。タイトルはアリスなんだけれど、シャーリーとイブ(イブの活躍した過去のこと)の二人のお話で進んでいきます。絡み合って、それ -
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偶然にも似たような小説に連続して出会うことが時々あるのだが、今回もそう。
こないだ「コードネーム・ヴァリティ」を読み終わった後すぐに本作である。
女性主人公2人目線、主人公は女スパイ、舞台はヨーロッパ戦線。WW1とWW2の違いがあるとはいえ、敵役はドイツ(とそれに加担する組織や個人)
読んでいけば、味わいの違いはすぐに分かるのだが、なんという偶然か?それとも翻訳小説界ではこの辺のテーマがブームなんだろうか?どちらも傑作だというのがまた偶然。
読み始めは、なんだか貴族系上流階級女子のとっつきにくい話だなぁ、今更亜流の「風と共に去りぬ」でもあるまいし…と正直ちょっとペースも遅れ気味だったんだ -
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「リリー」イヴは衝動的に尋ねていた。「怖いと思ったことはないんですか?」
リリーが振り返る。傘の縁から滴る雨粒が、彼女とイヴのあいだに銀色の幕を張る。
「あるわよ。誰だってそうでしょ。でも怖いと思うのは、危険が去ったあとーーー危険が迫っているときに怖いと思うのは、自分を甘やかすこと」彼女がイヴの肘に手を絡ませた。
「アリス・ネットワークにようこそ」(P.117)
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第一次世界大戦の最中。ドイツ占領下のフランスで、連合軍のためにスパイ活動をする女性たちの組織、「アリス・ネットワーク」。超敏腕スパイ、コードネーム=アリス・デュボア(本名=ルイーズ・ド・ベティニ)が作り上げた組織だ。 -
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1947年、アメリカからシャーリーは戦時中に行方不明になったいとこのローズを探しにフランスにやって来た。手がかりを辿り、出会ったのは英国の元スパイのイヴだった。第一次世界大戦のとき、ドイツ占領下のフランスでスパイとして過ごしたイヴの壮絶な過去と、第二次世界大戦中の話が交互に描かれる。
これは凄まじく面白かった。
イヴはフランスにおけるスパイのリーダーアリスのもとで働くのだが、このアリスネットワークは実在したものなのだそうだ!(わお) また、第二次大戦中のドイツによる信じられないような虐殺事件も実際にあったそうだ。他にも何人もの登場人物が実在したと著者あとがきに書いてある。
イヴがスパイと -
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興奮さめません。ドキドキの連鎖反応。
第二次世界大戦が終わって数年後が現時点でアメリカ人のシャーリー・セントクレアが主人公、第一次世界大戦のときはイギリス人のイヴ・ガードナーが主人公。二人の追いかける悪魔のような男がひとつに重なって行くところはほんまにドキドキする。第一次世界大戦のことはあまり知らなかったから、読んでよかった。北フランスがドイツに侵攻されて酷い目にあっていたこととかは、第二次世界大戦のときのことしか考えたことなかった。ナチスが台頭するまでそんなに酷いことがあるなんて考えたこともなかった。実在したアリス・ネットワークの女スパイたち。戦争は本当にろくなことがない。大切な誰かの大切な -
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最初に手ごわそうな予感。一見して、気難しい貴婦人のように見えるこの物語は、大抵の魅力的な女性がそうであるように、時間とともにようやく心からの笑顔を浮かべ始める。最初の100ページは、とりすましたよそ行きの表情を浮かべるばかりか、興が乗らないでいると、今にも、構えたルガーの引き金を引きそうな、緊張感に満ちた険悪な悪女との出会いといったところだ。しかし、とっつきくい女ほど、後になって味が出てくる。そして情が濃い。本書はそんな、ファム・ファタルみたいな、いい女を思わせる、とても魅力的で奥深い作品なのだった。
第一次大戦時、ドイツ占領下のフランスで、深く静かに潜航しつつ情報を収拾する、女スパイの -
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WW1、イヴはアリス・ネットワークのリリーの下で対ドイツのスパイ活動に身を投じる。一方WW2後に行方不明になったローズを探すシャーリーはイヴと出会い、二人の運命が交錯する。
「狙撃手ミラの告白」で重厚な筆致と史実をベースに組み立てたミステリを読ませてくれたケイト・クインの邦訳第一作です。第一次大戦にフランスを舞台にイギリスのスパイとして活躍したアリス・ネットワークは実在ですし、多くの登場人物も実在です。それら戦争期に実在した出来事をベースに創作を乗せて小説にするのはケイトの十八番ですが、今回はスパイが題材ということで、概ね怖いし痛いし辛いし、読んでいて大変しんどい作品になっていました。最後に -
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第二次大戦中のイギリスでドイツ軍やイタリア軍の暗号解読をしていた施設ブレッチリーパークを舞台に、そこで働く3人の女性を描いた物語。物語といっても事実に基づいていて、実在の人物をモデルにした登場人物も多いとのことに驚いた。ロマンス比重高めなのは個人的にはあまり好みではなく、それよりもっとクリブやボンブ・マシーンなどの説明を詳しく書いてくれたらよかったのにとは思うが、なんとなく華々しいイメージのある暗号解読が実際には分業で地道な作業(なかには力仕事も)を行うものであり、口外できないことによる苦悩や、それでも愛国心から誓約を守り仕事を続ける様子、女性は男性と対等に働けることを喜んでいたということなど
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作品の舞台は1904年、サンフランシスコ…
この年ここで大きな出来事が起こる
(これは実際に起きたことなので、ピン!とくる人もいるかもしれない)
この年、画家の親友を頼ってそこにやってきたのは、オペラ歌手のジェマ…
ひどい偏頭痛持ちの彼女はそのせいで舞台に上がれないこともしばしば…
しかし実業家のソーントンにその美声を買われ、千載一遇のチャンスを得る
一方、サンフランシスコのチャイナタウンに住むお針子のスーリンは、身売り同然の結婚から逃れるためサンフランシスコから遁走しようと画策していた
二人はそれぞれに大切な親友、恋人を探していたが、やがてそれが繋がりある男の大きな陰謀を知ることになり…
そ -
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伝説のスナイパー、リュドミラ・パブリチェンコの戦争と、大統領暗殺の陰謀。
リュドミラ・パヴリチェンコは独ソ戦を戦ったソ連の伝説的な女性スナイパーで、確認戦果309という脅威的な記録の持ち主です。そのリューダをモデルに、伝記的ながらサスペンスを織り交ぜた半フィクションに仕立ててあります。だいたい、前半2/3を戦記、後半1/3をサスペンスのフィクションという構成ですが、圧巻だったのは戦記の部分でした。リューダは回想録も出版しており、そこからの引用が多いので実際の出来事や登場人物を多用しつつ、戦争へと踏み込んでいく国と人々をとてもリアルに描いているのが印象的でした。特に開戦時、美しいオデッサの街が -
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コロナ社会になってのここ二年、北欧東欧ソ連ものが大半を占めている。特にナチ発掘の作品。
「戦場のアリス」でそれまで雑駁にしか認識できていなかった「血の通った戦争ストーリー」を読み、構成の素晴らしさ似た作品にない完成度に驚きを覚えた。続いてのこの作品も厚みは全く感じさせない 素材を撚り併せた結果に来る「造形の妙」を感じる。
ニーナ~1920から/ジョーダン~1946から/現代(1950)の3本の時間軸
そしてフィクションながら実在のモデルを筆者の飛翔で造形したキャラクターがせめぎ、生き、涙する。
ハンター→ハントレス 女性であるため の意すら深く考えていなかっただけに ルースの存在を通した