ケイト・クインのレビュー一覧
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第一次世界大戦中に対ドイツのスパイ網「アリスネットワーク」を築き上げた女性スパイがいた…という史実を下敷きにした話。
第二次世界大戦後、行方不明の従姉妹を探すアメリカ人女性のシャーリーが、元アリスネットワーク所属の老女イヴとともにフランス中を探し回るという探索行。
イヴが現役のスパイだった過去のパートと、シャーリーが従姉妹を探している現在のパートとが、交互に語られる。
本は厚いが、過去パートはハラハラしっぱなしで、現在パートも尻上がり的にドキドキハラハラ感が上がってくる(おまけにロマンス成分もあり)という良質エンタメ作品でした。
ハッピーエンドなのも良い。 -
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毎年一冊邦訳されるペースで、しかも間違いなく傑作で力作と言われて恥じない作品を供給し続けている女流作家ケイト・クイン第五作の本書は、何と台湾生まれの歴史小説家ジェイニー・チャンとの共作である。毎作、歴史に材を取りながら、驚くべき着眼点に驚愕させられっ放しのケイト・クインだが、本書では1906年サンフランシスコで実際に起こった壊滅的大地震を背景に、許しがたき権力の刃を振るう実業家の許し難き犯罪と、震災後パリに舞台を移した四人の女性たちによる復讐劇を描き切った、いつもながら骨太の歴史冒険大作である。
着目すべきは、本書がケイト・クインとしては初の二人の女性作家による共作であること。オペラ歌手 -
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ネタバレケイト・クインの本邦初訳、歴史ミステリ。現在まで本作を含め4作品出版されている(全てハーパーBOOKS)。
二人の女性が主人公。
第二次世界大戦後、ある目的のために母親とスイスに向かう途中、密かに行方不明のいとこを探す決意をするシャーリー。
第一次世界大戦中、アリスネットワークと呼ばれるスパイ組織に配属となったイヴ。
戦後と戦中の二人の人生が交わった時、意外な敵が見えてきて。。。
名作。600ページ以上で非常に分厚いが、苦にならないほど引き込まれる作品だった。
イブ視点の戦中の場面は重苦しくハラハラさせられる一方、中盤以降のシャーリーとイブ、イブに雇われているフィンのロードノベル感も良く。 -
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大学生のシャーリーは母親に連れられて墮胎手術を受ける旅行を抜け出し、戦時中に行方不明となったいとこのローズを探すたびに出た。彼女の働き口の報告書にあったイヴリンという名前を手がかりに彼女の家へと訪ねる。彼女は最初はシャーリーを追い払おうとしたがローズの働き口のレストランの名前を聞くと一緒に旅に出ることにした。
終盤の抜粋を読むまで実際の人物をもとにしているとは知らずに読んでいた。物語はシャーリーと戦時中の若かりし頃のイヴリンを回顧を交互に進める。2時代をつなげるのがローズが働いていたレストランのオーナー、ルネだ。悪役だが魅力的な小物で最後のカタルシスをより強くしてくれる。そして何よりもアリスの -
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現在、現時点で、数少ない正統派冒険小説の担い手のトップ・ランナーは、間違いなくケイト・クインという女性作家である。印象的なヒロインと、緻密な考証に基づいて描かれるスケールの大きな戦争時代の冒険とロマン。かつての冒険小説のほとんどが男性作家であったことを思うと、今、この時代だからこそ、戦争の物語の渦中を駆け抜ける女性たちの存在が際立って見えてくる。
現在の女性であったかもしれない過酷な戦争の時代を生きた女性たちの日々を、この作家はいつも活き活きと力強く描き切ってくれる。そして、ぼくのような男性読者であれ、戦争という最も過酷な状況を背景に、この作家が作品毎にこれでもか、これでもかと言わんばか -
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この作品にはどこにもブレーキが付いていない。読み出したら止まることができない。約750ページに渡る長大な本なのに、どこにも。それだけでも凄いのだけど、この作家の歴史に材を取った取材能力も努力も凄い。あらゆる歴史的事実の上に重ねてゆく個の物語は、途轍もないエネルギーを持つ。それを抱えた主人公たちは、実在の人であれ、架空の人であれ存在感が半端じゃない。そこがケイト・クインという作家の最大の強みなんだ、と三作目でも改めて再認識。
そもそも複数主人公を並行させ、それぞれの物語を疾走感たっぷりに交錯させたスケールの大きい物語を作るのが上手い作家なのだが、本作では、大戦中の英国を舞台に、個性豊かな三 -
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ネタバレめちゃくちゃ良かった。
ところで第二次大戦を舞台にした女性同性愛者の物語を2冊続けて読むことになったんだけど、偶然?今の流行?2冊とも想定していなかったからびっくりした。いい意味で。同性愛者の方は嬉しかったと思う。恋愛の一つとして、普通に描かれるのは素晴らしい。これまではなかったことにされてきたわけだから。
視点がコロコロ変わる。そこがいい。
ハントレスが誰かはすぐにわかる。隠しきれないものがある、という描写なのだろう。
イアンたちがナチ戦犯を見つけると、みんな怯え、命令されただけ、知らなかった…と言う。本気なのだろう。そう自分で信じ込んでいるのだろう。
イアンが言っている通り、戦争で -
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今年の後半は、第一次・第二次世界大戦の時代に展開した作品を、いつになく多く読んだ気がしている。しかも現在を描くものより、むしろ戦争を描く作品に良作が多いようにも思う。P・ルメートル、S・ハンターと続き、このケイト・クインがダメ押しであった。
ケイト・クインは、前作も『戦場のアリス』で印象的な世界大戦の裏話を繰り広げてくれたが、本書はそれを上回るスケールで描かれている。簡単に言うといわゆるナチ・ハンターものである。実在のナチ・ハンターに材を取り、そこから派生した作者造形による三人の主人公の三種の異なる時代の物語が、章毎に綴られる。一瞬、躊躇われるほど分厚い、重量級の国際ミステリー。大丈夫。 -
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第一次世界大戦1914〜1918、
死者1000万人以上
第二次世界大戦1939〜1945、
死者6000万人以上
この二つの戦争が二十世紀前半に、
嵐のように吹き荒れた。
自暴自棄となりながらも、戦時中に行方不明になった従姉妹のローズを探すシャーリー。
戦時中スパイだった、アル中の中年女性イヴ。
復員後犯罪者になり、その後定職につかずイヴの世話をするフィン。
三人は、ローズを探すと同時に、それぞれの心の底にある過去に向き合っていく。
ボソボソと車の後部座席から繰り出される、第一次大戦でのイヴのスパイ活動の様子は、息をするのも忘れるほどの緊迫感を持つ。
派手な戦闘シーンは無い。
アジトや -
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こちら「おすすめ文庫王国2020」の第1位。
それを見た時からずっと読もうと思っていたのだけれど、650余頁の厚さに躊躇したまま1年以上経ってしまった。
買った後も暫く積読していたが、この前に読んだ「革命前夜」に触発されて、引続きヨーロッパの話にしてみる。
1915年に始まるイブの話と1947年のシャーリーにイブとフィンが絡む話が交互に語られるが、かつてのイブと現在のシャーリーに共通した意志の強い女性像を見る一方、かつてのイブと現在のイブの繋がりと落差が鮮やかで、過去と現在が絡まり合うように進む物語は分厚い頁を飽きさせない。
前半は、スパイになってドイツ占領下のフランスに入るイブと、いとこ -
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好きなセリフ「飢えは思考を研ぎ澄ます」
スパイの心意気がカッコいい。
心を隠し演じて騙し、相手の表情の揺らぎを読む。スリル感はスパイ小説ならでは醍醐味。
第一次世界大戦下フランスへ、ドイツ軍の情報を得るためにスパイとして派遣されたイヴ。イヴは、ドイツに協力する暴利商人ルネ・ボルデロンの元でウェイトレス兼愛人として振る舞い、最高級の情報を引き出す優秀なスパイだった。戦後のイヴと出会った現役大学生シャーリーのいとこ探しは、イヴの過去が明らかになるにつれ真実に近づいていく。
イヴに降りかかる危機は、身の毛もよだつほど凄まじい気迫がありハラハラドキドキする。
謎解きミステリーのようなすべての駒がつ -
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女同士の真の友情は無いとも言われるが、この小説の中では第一次世界大戦でフランス軍のスパイとして活躍したリリー、イブの真の友情と第一次世界大戦で全てを失ったイブと第二次世界大戦で大切な人二人を失ったシャーリーの間の真の友情、硬い絆が確かめられる。
リリーとイブは、女性に能力などないと信じられている社会という戦場の中で、そして本当の戦場の中で敵の目を何度もすり抜け味方のために命がけで情報を送っていた。失敗すれば射殺されるか牢獄で見殺しにされるか…戦後に勲章など送られても意味がない。
なぜ真の友情が芽生えたのか。それはリリーやイブが、味方のために命をかけて戦い、仕事をやり通し、それ以外の幸せは