貴堂嘉之のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「今」全ての日本人が読むべき本だと思った。
内容はタイトル通り、もちろん「ヘイトに抗するアメリカ史」である。
なぜトランプ元大統領が一部のアメリカ人に熱狂的に支持されたのか?逆差別は本当に差別なのか?BLM(ブラック・ライブズ・マター)運動について、移民問題について、ヘイトはなぜこんなにも根強いのか?…などなど、ニュースでよく見る、けどなぜそんな運動が起こっているのか深くはわからない、そんな疑問だらけのアメリカ史におけるさまざまな問題を、アメリカ史に詳しい専門家たちがさまざまな視点から詳しく、分かりやすく論じる。
このさまざまな視点から「ヘイトに抗するアメリカ史」について学べるのが本書の良い -
Posted by ブクログ
本書は「白人の心の弱さ」という著者の白人性研究の中で培われた概念をベースに、現代の人種差別の形を非常に明瞭に指摘する著作です。
人種の差が無いかのように振る舞い、「私はレイシストでは無い」と言うリベラルな人々はレイシズムという制度の中で社会化された自らを顧みることなく、レイシズムを無かったことにしてしまうという議論はレイシズムに限らず、女性差別、外国人差別、障害者差別、LGBT差別など全ての差別に通ずる議論です。
「私は一切差別をしない」と考えている人がいかに多く、それを指摘して話し合うことがいかに難しいかは日本にいても女性差別や障害者差別等の場で日々体験していることです。自分もまた差別的行為 -
Posted by ブクログ
おーもしろかった!自分は差別しないし差別意識がない、なぜなら。。と挙げる理由が既に差別意識に基づいているし問題に向き合っていない、という主張。リベラルを明言している親が自分の娘の恋人がブラックと知ると半狂乱になる的な話はよくある。あと、差別の話はマジョリティ側の問題なのにいつも被差別側の話ばかりなのはなぜか、とか(「黒人の問題なんていうものはないのです。あるのは白人の問題だけです」)マジョリティ側個人に話を向け、深掘りすると100%取り乱し「自分は差別なんかしていない」と感情的に話を遮りそれ以上議論が進まない、とか。それはたとえば、交通事故の対応にきた警官が事故を起こしてしまった罪悪感でショッ
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Posted by ブクログ
大変面白かった。
解説者の解説にもあったが、この脆弱性というのはマジョリティとマイノリティとの関係において圧倒的に優位に立つマジョリティ側が持つ脆弱性であると思われる。そのため、アメリカにおける白人だけでなく、日本における日本人にももちろん当てはまるし、各国における主要民族となるマジョリティ側は全て当てはまるのではないだろうか。
逆に言えば、歴史的には支配層が被支配層に対して持っていた特権が、そのまま現代社会においても社会制度として残存しており、その特権について突っ込まれるとマジョリティの脆弱性が表面化するのかもしれない。
現代そして未来の日本において移民や混血などLGBTなどの多様性の問題は -
Posted by ブクログ
非常に耳の痛い話。でも自分の中でなんとなく違和感があった「俺わかっている」的な感覚を改めて戒めてもらえてすごくよかった。ここから進めなければいけない。
今のところ本年ベスト3に入る書籍。これは読んでよかった。
「わたしたちはなぜレイシズムに向き合えないのか」と白人に向けて書かれた本ではあるが、これを少し日本人の視点に変えて読んでみると、我々の中にもしっかりと様々な差別が潜んでいることがわかる。
・レイシズムは「個人主義」的視点で、簡単に解決できるような「個人」の問題ではなく、構造的に「社会化」されたものであることをまず受け止める必要があることを著者は訴える。
・そして日本でも姿形は違えど -
Posted by ブクログ
アメリカという国を「移民」という観点から覗き、建国から近代、現代へと繋がる過程の中で、彼の国は移民をどのように捉え、時には受け入れ、排除し、動員してきたかについて見事に纏めている。
その中で果たして「移民」とは何であるのか、本当にアメリカは移民の国と言えるのか(伝統の創造)、ということは大きな学びとなった。
(その他にも多々重要な観点はあるものの、本当に重要な文章が度々出てくるので1-2ページごとにマーカーを引いてしまい、遅々として進まなかった)
本書は「新書」というジャンルにも関わらず、わずか250ページほどでこれだけ広範囲なテーマを扱い、尚且つ「アメリカにおけるアジア移民」という観点か -
Posted by ブクログ
1812年の米英戦争を通じて、アイデンティティをより強固なものにしたアメリカ。その後領土を西に拡張し、先住民を追いやりながらついには太平洋へと到達する。大陸横断鉄道も開通し、巨大な市場を形成するものの、独立時から棚上げにしていた奴隷制という社会の矛盾が国家を分断する。皮肉なことにその自己矛盾は黒人奴隷側から突きつけられるのではなく、北部・南部の産業及び政府の在り方に基づくものである。その時点で、奴隷制に関する問題は一市民や団体レベルでは人道的な面もあるが、基本的には政治的な問題であるといえる。奴隷制そのものではなく、領土が拡張し各地が州に昇格する中、新たな州が奴隷州となるか自由州となるかが国政
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Posted by ブクログ
本書は一番知りたかったアメリカという国の歴史の部分かも知れない。
世界の抑圧された民衆の新天地として
移民を受け入れ開拓されて行く大陸。
そこは移民、先住民、奴隷民が暮らす
大地となった。
理想を掲げる者の中に、人権の自由、経済の自由、宗教の自由、置かれている状況で、
いろいろ求めているものが異なる。
この人たちを満足させる国づくりの過程は
困難なことなのは、想像できる。
結果、求める体制が異なる南と北で戦争に至る。
これを舞台にした映画が「風と共に去りぬ」ということなので、この作品を観ておくことにした。
この時の大統領がリンカンで、
「人民の人民のための・・・」の名文句の
至った経緯を知るこ -
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Posted by ブクログ
『移民国家アメリカの歴史』貴堂嘉之、2018年、岩波書店
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アジア系に焦点を当てたアメリカ移民の歴史。私はアリージャンス見るかわからないけど観劇の予習や復習にもよさそう。その出来事だけでなく、それがどこからどうつながって起こり、どこへ向かっているのかを知ることができる。
始めに来た中国系移民への差別、日系アメリカ人の第二次世界大戦時の経験、戦後の当事者の沈黙、公民権運動におけるブラックパワーとイエローパワー、「モデル・マイノリティ」というステレオタイプとの葛藤、同時多発テロ後の「愛国者法」への抗議、多様化する -
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Posted by ブクログ
なるほど…改めて、南北戦争前後の歴史を知らずして、アメリカという国は全く語れないな…と再認識。よく南北戦争は「奴隷制の存否」を巡っての戦いであった、と言われますが、ではなぜ「奴隷制廃止」を主張した北軍、リンカン・共和党側が勝利したにも関わらず、真の黒人への差別撤廃(少なくとも法的な)までにはさらに100年もの時間が必要だったのか…?という、アメリカ史の表面を学ぶと生じる問いや、トランプ支持者はなぜ南軍旗を掲げていたのか…?等々、まさに本書の著者が「おわりに」で書かれているように、「アメリカは建国以来、南北戦争に向けて流れ、南北戦争から(現在まで)すべてが流れ出している」というのは言い得て妙と感
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Posted by ブクログ
非白人不在の白人による白人のための差別論。
筆者は構造的に組み込まれた差別を突きつけるセミナーを行っている。内容や記載を見るに多くは白人が対象なのではないかと推察する。
推察通りであれなかれ、非白人の存在や主張についてはこの本には出てこない。人物や像が不在であるという印象を持つ。構造的に差別が社会に組み込まれているというのは事実だろう。構造を自己強化している力は両側にあることが多く、白人へのアプローチという方式が効果を出すのかが大きな論点であると考えるが、そのようには個人的には見えなかった。
多くのこのような本を読む人物はリベラルな思考を持っているだろう。筆者が『ある日同僚の前で突然差別者に分