ヤニス・バルファキスのレビュー一覧
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搾取の主導的な形態を時代の変遷に沿って、《封建制/領地/農奴/地代(レント)として差し出さねばならない生産物》、《資本主義/生産手段/労働者/利潤として巻き上げられる価値》、《テクノ封建制/クラウド領地/クラウド農奴/クラウド地代(レント)として差し出さねばならない個人情報》と描いてみせる。そして、テクノ封建制においては、クラウド領主であるGAFAMなどのプラットフォーム企業が、従来型の企業(資本家)を封臣とし、彼らが労働者から搾取した利潤からクラウド地代を吸い上げる。また人々は、デジタル空間で興味関心欲望を操作され、クラウド領主に無償で個人情報やコンテンツを差し出し続け、そこから抜け出すこと
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Posted by ブクログ
めちゃ面白く、ためになる。一気に読める。格差は余剰から生まれた。余剰が結局経済を生み出す。
映画「マトリックス」の引用が良い。人工的に与えられる幸せで人間を満足するのか?という問い。
「満足した豚であるより不満足な人間である方がよい。満足した愚者であるより不満足なソクラテスである方がよい。そして愚者や豚の意見がこれと違っていても、それは彼らがこの問題を自分の立場からしか見ていないからである」
ジョン・スチュワート・ミル
まぁつまり、自分の頭でちゃんと考えろって事。
「市場社会は見事な機械や莫大な富をつくりだすと同時に、信じられないほどの貧困と山ほどの借金を生み出す。それだけではない。市 -
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資本主義は欲望を作り、富を独占する社会
これは資本主義の後の世界を求めた思想家、経済学者、IT技術者によるSFチックな世界を妄想し、現実の史上分析からなる創造力豊かな世界を描いた小説だ。「資本主義」とは「私たちの中に欲望を作り出す世界」だから富む者はより富む社会システムであり、人々の間には様々な格差が生じる、と言う。その資本主義が滅びた後、GAFAのような独占巨大資本が失くなり銀行は中央銀行だけとなる。富の分配を公平にする世界が始まり、企業が納税者となり国民は納税の義務はなくなる。よって富の根源である投資・株市場も一変し社員が一人1株、議決権1票を持ち企業、個人を評価することで給与・ボーナスは -
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『「あんた。人が痛い目に遭ってるって時に、SF世界の夢物語は贅沢品だよ」聴衆のひとりが叫んだ。「資本主義とSFには共通点がひとつあります」コスタが冷静に答えた。「どちらも架空の通貨を使って、未来の資産を取引することです。たとえそれらのツールがいまだSF世界のものだとしても』―『第一章 現代性に敗北する/コスタ』
今年一番の刺激を受ける。オルタナ右翼という言葉を最近聞くけれど、それに対抗するのが詰まるところ新オルタナティブ・レフト(差し詰め新・新左翼という感じ?)というか民主社会主義ということであるとすれば、識者が語るその世界は専制的な政治制度に基づく共産主義よりは緩やかな社会主義に基づく統制 -
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「黒い匣(はこ)」とは、管理者側もその全容を理解できないほど巨大で多くの人に影響を多大に与える重要なシステムのこと。
金融工学者が複雑化し続けるデリバティブを隅々まで把握できないことや、グローバル銀行、グローバル企業のCEOが自身の所属組織の全容と影響力を把握しきれないなどが”「黒い匣」と権力者の関係”にあたる。
「陰謀論」では「黒い匣」の中で権力者らが「お主も悪よのぉ」と不敵な笑みを浮かべながら公共善と弱者搾取のための悪巧みをしていると語られがちだが、政府関係者やIMF高級官僚たち、グローバル企業の幹部たちの多くは職務に真面目に取り組んでいるし、結果的に公共善を毀損し弱者搾取になっていた -
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ギリシャが破綻する間際の2013年の財務大臣に任命された著者がトロイカ(IMF,EU、ECB)を相手にしてギリシャの未来を守るために侃侃諤諤の議論をして戦い抜いたノンフィクションです。小説調で進んでいくので大変読みやすいです。このノンフィクションでは、小説ではとても書けないようなギリギリの状況で交渉を行ってきたことが描かれており、まさに事実は小説より奇なりです。仲間の裏切りで追い込まれても追い込まれても、なんとかギリシャの有権者の為に尽くそうという著者の献身には尊敬に値するものがあります。この本は、のちの若い人がギリシャの破綻の経緯を知るための貴重な本だと思います。
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Posted by ブクログ
【偉大な悲劇作家たちが教えてくれたように、最高の権威とまったくの無力さの組み合わせほど、悲惨なものはないのだ】(文中より引用)
金融危機の最中にギリシャのチプラス政権の下で財務大臣を務めたヤニス・バルファキスが記した回顧録。EUエスタブリッシュメントとの行き詰まる交渉から政権内での駆け引き、そしてあるべきヨーロッパの姿に到るまでを縦横無尽に語り尽くしています。原題は、『Adults in the Room: My Battle with Europe's Deep Establishment』。
上下段組みで500頁超えという圧倒的な分量ですので、分野に興味がない読者にとってはと -
Posted by ブクログ
ネタバレ格差はどこから生まれるのか。なぜイギリス人がアボリジニを支配して、逆にアボリジニがイギリスを侵略することが起きなかったのか。本書はその問いから始まる。
人口の増加を狩猟で支えうことが出来なくなった社会は強制的に農耕へ移行するしかなくなり、農耕が余剰を生み出し、農耕が文字を、官僚制度を、軍隊を、権力を生み出したという、すべては余剰に突き動かされていた。オーストラリアはこれに従えば農地を耕さなくても生活の営みが可能だった。だから余剰を記録する文字も生まれなかった。
続いて市場社会の誕生の話に移り、かつては商品ではなかった、「労働力」、「土地」が囲い込みを通じて、かつて領主との使役関係にあった農 -
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