山野辺太郎のレビュー一覧
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仙台の郊外に実在する高さ100mの白亜の大観音像。その像が傾いて危険だと騒ぐ住民と、事なかれ主義で対応する市役所の担当者と課長。最初の方を読んでいると、何だかあり得ない様な設定と、変なリアクションの登場人物に「何だこの作家は、ド素人か?」という印象。ところが、半ばあたりからガラッと変わります。
バックに流れる3.11の記憶。声高に叫ぶわけでもなく、静かな諦念の中で語られる震災体験者たちの言葉は、穏やかながら非常に深く、心に染み込んできます。そして大観音が抱くの慙愧の念。
シュールがリアルに、リアルがシュールに切り替わりながら進む物語は、この作家さんの特徴でしょうか。
独特のユーモアをまとった、なんだか不思議な、しかし良い物語でした。 -
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これはSFなのか、はたまた壮大なコントなのか…
いや、すごいわ。
文章だけみれば、非常に真面目で熱いものがあり一見熱血サラリーマン小説を読んでいるのかと錯覚してしまいます。
しかし根底にあるバカバカしさが常に脳裏を過ぎり、ワタシは一体何を読まされているのだろうと…。
筆者のデビュー作とあるが、文章は非常に巧みで上手。が、その上手さがバカバカしさに一層の拍車をかけているのが余計にタチが悪いなと。
しかし、何はともあれめちゃくちゃオモロいです。
人を選ぶ小説だとは思いますが、普通の読書に飽きた方はぜひ一読あれ。唯一無二の読後感を味わえます。
未曾有の読書体験をさせてくれた本書に感謝感謝。 -
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孤島の飛来人
2025.08.06
歴史ファンタジー?初めて読んだジャンル。歴史物が得意でない私にもかかわらず最後まで飽きずに読めた。ファンタジー要素が多いのに会社員の堅苦しい考え方もあって不思議な感覚。
ここでは軽量化こそが至上命題だった。もっと軽く。極限まで追求が求められ、ついに風頼みの域にまで達した。すでに大航海時代には、人々は風の力で世界中を渡っていたのだ。
この文章によって、吉田さんの風船での飛来という情けないことを実行している自分の部署に対し、虚しく思い馬鹿にするようなまたは嘲笑うような気持ちと誇りを持って取り組む気持ちの対立が表現されていて面白かった。
そして、『時代は繰り返す』というが現実世界も色々な方向へ進んだ結果、最終的に人類の1番初めの状態が人間のあるべき姿であり、科学技術や情報の進化は結局いらなかったという世界が訪れるのではないかとも考えさせられた。
全体的に表現が好き!
星浴び(日光浴はあるけど星は考えたことなかった)
は印象的だった。
生還していないけれど実はどこかでこのような暮らしをしている人がいるのかもしれないと感じるような素敵なテーマだったけれど、単なる物語ではなく戦争や秘密というバックグラウンドが闇なのも読み応えがあってよかった。
今日は広島に原爆の落とされた日。そこまで重くないけれど戦争について考えるきっかけとなる本なので現代の若者に歴史の導入としておすすめしたい小説である。 -
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奇想天外のお仕事小説。おバカ計画「日本ーブラジル間をつなぐ穴」のプロジェクトに挑む大人たち。「そんなん無理って小学生でもわかるやん!」なのだけれど、もし実現したらという世界線を極めて冷静に真摯に描き切ったのがこの作品。
裏金とも言える予算をつけてもらい、極秘プロジェクトとして進められる計画。その広報係として、真面目に仕事に向き合う主人公・鈴木。
極秘プロジェクトの広報係というのがポイントで、世間に発表できることが何もない。自分は果たして必要なのか。広報にすら知らされない進捗状況に頭を悩ませながら、穴まわりで起こる出来事や出会いを日記という形で文字に残し続ける。果たして勤勉だと言えるのか、仕事というものに向き合う姿勢を問う小説でもある。
戦後から現代へ続く壮大な物語だった。
あらすじ。
戦後、新橋の闇市で酒を飲んでいた山本。戦争から生き残った自分には「なさねばならぬことがあるはずだ」という使命に駆られている。焼き鳥を食べながら思いついたのは、串に貫かれた肉のように「日本からブラジルまで穴を貫通させる」ということ。理由は近道だから。ブラジル側からのOKの返事、幾度も運輸省で行われた会議を通して、極秘プロジェクトとして事業化が決定したのは山本が亡くなった二ヶ月後だった。
主人公は、新卒すぐ極秘プロジェクトの広報係としてアサインされた鈴木一夫。本作は彼の生涯をかけた長いプロジェクトの広報係に選ばれる。それから計画の前史を調べ、現在まで続く工事の進捗を記録していく。ついに「穴」が開通したとの報告を受けるが……。 -
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ある1人の男性の半生を、いろんな目線で楽しめるお話だと感じました。
所々で視点が変わり、一つの物語、一つの人生には様々な人の想いや考え、それこそ人生が関わっていて、読者である私もこの本の中で誰かとなって生きていたんだと読んだ後に何となく感じました。
主人公のラストは衝撃的で、すんなりと納得がいくものではありませんでした。
でも、ある意味それは人が生きてる上で、
誰かの期待通りには進まなくて、終わらなくて、でもたまに好きな展開もあるけれど、終わりは期待を裏切られることもある。
つまり、人(物語)の終わりには、その後の物語を自分なりに紡げるんじゃないかって考えたんです。
その物語の続編が気になる「おわり」が、この本にはたくさんありました。
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ネタバレ誰もが一度は思う、ブラジルまで穴を掘っていけるのかと。そのバカバカしさを真面目に小説にした本書だが、最後の最後までその冗談めかしたトーンは続く。だが、穴を掘っていく過程の所々に散りばめられる実話っぽい挿話や情報。それは戦時中の人間魚雷や戦後の南米からの日系人出稼ぎの話であったり、中国からの研修生やはたまた東日本震災後の実情であったりと、必ずしも明るい話題ではないのだが、これらが事実に裏打ちされているだけに、バカバカしさが度を越さずに現実の範疇にとどまっていそうに思わせてくれる。
それにしてもバカバカしいと思いながら読み進めさせてくれた愛すべき主人公の最後がこれって。いきなり虚無感に突き落とされた。ブラジルに行った主人公は、見事網でキャッチされる、もしくはリオ五輪に現れた安倍総理は本当に穴を通って行った、というバカ話路線をいって欲しかったのか、それともそこは現実的であって然るべきなのかわからない。とにかく、結末がとても悲しく脱力してしまった。