山野辺太郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレこれは、単にトンデモ計画に振り回される人々の話として読むか、SFとして世界観を受け入れるかでかなり印象が変わる本だと思った。
SFであると感じた理由として、作中に登場した登場人物は皆(基礎研究者ですら)、この計画は「原理的に無理」とは言わず、「やってみないとわからない」と考えているというところにある。もし通常の世界であれば、義務教育で地球に穴を開けられないことを理解できるだろうし、こんな計画もアイデアも、初期の段階で「〜だから無理」と1人でもいえば終わっていただろう。「上がやれと言ったから」という理由ができる前(計画が走る前)ですら誰もそれを指摘しなかったのは、もしかしたら本当にやってみないと -
Posted by ブクログ
面白かったー!
暗くない小説が読みたいと思い、そうだ穴を掘る物語の作者だ、と閃いた私を褒めたい。大当たり。
この作者さんの著書はまだ2冊しかないが、頭の良い人程説明が上手なように、本当に読みやすい。
そして何より真面目なのが良い。
風船で横浜から父島を目指す。
こんな設定なのに不思議な説得力。
読んでいて何故アホらしくならないのだろう。何故夢中に一気読みしてしまうのだろう。
細かいところはツッコむ気にもならない、ツッコまないで読み進めてしまう魅力がある。
海亀と満天の星空。
ひっそりと暮らす緊張感と同時に混在する安らぎ。
戦争の続きを生きている小島で閉塞感に満ちているはずが、若者は伸びや -
Posted by ブクログ
東北の大きな街の丘の上にそびえ立つ、巨大な全身純白の大観音。その大観音が傾いていると言って大観音の足元を懸命に押して傾きを直そうとしている老人達。市役所に勤める新人の修司は市民の声を聞くために大観音を訪れ、様々な人達と触れ合っていく……最初は奇想天外な発想の市民たちの苦情に振り回される新人職員のお仕事小説かと思っていました。完全に笑おうと思って読み始めた物語。結果、全く違うトーンの物語でした。
そもそもなぜ大観音が傾いていると思う人達が現れたかというと、その背景には東日本大震災があるのです。大観音を取り巻く人達の話を聞いていると、震災での辛い経験がポロポロと出てくる。皆がそれぞれ何かを抱えてい -
Posted by ブクログ
ユーモアと愛情に溢れる風変わりなお仕事小説。
主人公の高村修司は、東北の大きな街の市役所に新入職員として採用される。彼のいる出張所の近くには、異様に大きな観音像が立っている。あの大震災をきっかけに、住民のなかに「大観音が傾いた」という者たちが現れ、その足元を押す者、爆破することを進める者が出てくる。修司はさまざまな人々に出会い、対応策に奔走する。
大観音の傾きについて、大真面目に対応を考えるというユーモアさがベースにありつつ、震災で受けた悲しみがリアルに迫り、なんとも言えない不思議な感情になりました。作中で大観音の心の声が聞こえてきますが、東北弁の温かさの中に心中の切なさが混ざり、涙なしでは読 -
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ネタバレ彼は上司に話を持ちかけた。我が国の大地に、ブラジルへと続く、底のない穴を空けましょう、と。
「なせ、そんな穴を?」
「だって、近道じゃありませんか」
戦後、闇市のやきとり屋で運輸省の官僚が思いついた、日本とブラジルを結ぶ穴を掘るという計画は、数十年の歳月を経てようやく着工されることになった。工事の請負企業に入社した鈴木一夫は、発案者の山本清晴についての取材、ポーランド人スパイとの接待温泉旅行、日本語通訳の香港人とのロマンス、外国人労働者との交流など、広報係として奔走する。そして三十数年後、ついに穴が開通する。鈴木は水着姿で穴に飛び込むのだった。
地球を貫く穴を掘るという事業を描いた、フィク