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Posted by ブクログ
仙台の郊外に実在する高さ100mの白亜の大観音像。その像が傾いて危険だと騒ぐ住民と、事なかれ主義で対応する市役所の担当者と課長。最初の方を読んでいると、何だかあり得ない様な設定と、変なリアクションの登場人物に「何だこの作家は、ド素人か?」という印象。ところが、半ばあたりからガラッと変わります。
バックに流れる3.11の記憶。声高に叫ぶわけでもなく、静かな諦念の中で語られる震災体験者たちの言葉は、穏やかながら非常に深く、心に染み込んできます。そして大観音が抱くの慙愧の念。
シュールがリアルに、リアルがシュールに切り替わりながら進む物語は、この作家さんの特徴でしょうか。
独特のユーモアをまとった、なんだか不思議な、しかし良い物語でした。
Posted by ブクログ
東北の大きな街の丘の上にそびえ立つ、巨大な全身純白の大観音。その大観音が傾いていると言って大観音の足元を懸命に押して傾きを直そうとしている老人達。市役所に勤める新人の修司は市民の声を聞くために大観音を訪れ、様々な人達と触れ合っていく……最初は奇想天外な発想の市民たちの苦情に振り回される新人職員のお仕事小説かと思っていました。完全に笑おうと思って読み始めた物語。結果、全く違うトーンの物語でした。
そもそもなぜ大観音が傾いていると思う人達が現れたかというと、その背景には東日本大震災があるのです。大観音を取り巻く人達の話を聞いていると、震災での辛い経験がポロポロと出てくる。皆がそれぞれ何かを抱えていてその苦しみの象徴が大観音のような気がします。
だから傾いた大観音を元に戻したいという人もいれば、壊してしまいたいという人、遠くから眺める人、そのままでいいという人、捉え方は人それぞれなのかな、と思ったりしました。
修司と大観音が交互に語り手になるのですが、大観音もあの日、ただ立って見ているだけで何もしてあげられなかったことを苦しく思っています。
設定はユニークでコミカルなのだけれど、全体にもの悲しさが漂っている物語でした。
Posted by ブクログ
ユーモアと愛情に溢れる風変わりなお仕事小説。
主人公の高村修司は、東北の大きな街の市役所に新入職員として採用される。彼のいる出張所の近くには、異様に大きな観音像が立っている。あの大震災をきっかけに、住民のなかに「大観音が傾いた」という者たちが現れ、その足元を押す者、爆破することを進める者が出てくる。修司はさまざまな人々に出会い、対応策に奔走する。
大観音の傾きについて、大真面目に対応を考えるというユーモアさがベースにありつつ、震災で受けた悲しみがリアルに迫り、なんとも言えない不思議な感情になりました。作中で大観音の心の声が聞こえてきますが、東北弁の温かさの中に心中の切なさが混ざり、涙なしでは読めませんでした。
特に老婆が大観音に向けてかける言葉に号泣です。
笑えて泣けて、心に沁みる温かい作品でした。
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