あらすじ
「飛ぶのが、怖いの?」
仕事で空を飛んで、この島にやってきた「僕」に人生2度目の決行のときが近づく。
無人のはずの北硫黄島に住む人々、戦争の記憶、看守と囚人、6色の風船……。人はなぜ飛ぼうとするのか、そして飛ぼうとしないのか。
文藝賞受賞第1作に書き下ろし「孤島をめぐる本と旅」を収録
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Posted by ブクログ
孤島の飛来人
2025.08.06
歴史ファンタジー?初めて読んだジャンル。歴史物が得意でない私にもかかわらず最後まで飽きずに読めた。ファンタジー要素が多いのに会社員の堅苦しい考え方もあって不思議な感覚。
ここでは軽量化こそが至上命題だった。もっと軽く。極限まで追求が求められ、ついに風頼みの域にまで達した。すでに大航海時代には、人々は風の力で世界中を渡っていたのだ。
この文章によって、吉田さんの風船での飛来という情けないことを実行している自分の部署に対し、虚しく思い馬鹿にするようなまたは嘲笑うような気持ちと誇りを持って取り組む気持ちの対立が表現されていて面白かった。
そして、『時代は繰り返す』というが現実世界も色々な方向へ進んだ結果、最終的に人類の1番初めの状態が人間のあるべき姿であり、科学技術や情報の進化は結局いらなかったという世界が訪れるのではないかとも考えさせられた。
全体的に表現が好き!
星浴び(日光浴はあるけど星は考えたことなかった)
は印象的だった。
生還していないけれど実はどこかでこのような暮らしをしている人がいるのかもしれないと感じるような素敵なテーマだったけれど、単なる物語ではなく戦争や秘密というバックグラウンドが闇なのも読み応えがあってよかった。
今日は広島に原爆の落とされた日。そこまで重くないけれど戦争について考えるきっかけとなる本なので現代の若者に歴史の導入としておすすめしたい小説である。
Posted by ブクログ
冒険的な風船飛行の果てにたどり着いた島。
そこには知られざる国が存在し、背景には戦争の時代の傷あとがあった。
奇想天外な出来事と、歴史的な現実の記憶が融合した小説。
浜辺での出会いと星浴びの情景は魅惑的。
Posted by ブクログ
面白かったー!
暗くない小説が読みたいと思い、そうだ穴を掘る物語の作者だ、と閃いた私を褒めたい。大当たり。
この作者さんの著書はまだ2冊しかないが、頭の良い人程説明が上手なように、本当に読みやすい。
そして何より真面目なのが良い。
風船で横浜から父島を目指す。
こんな設定なのに不思議な説得力。
読んでいて何故アホらしくならないのだろう。何故夢中に一気読みしてしまうのだろう。
細かいところはツッコむ気にもならない、ツッコまないで読み進めてしまう魅力がある。
海亀と満天の星空。
ひっそりと暮らす緊張感と同時に混在する安らぎ。
戦争の続きを生きている小島で閉塞感に満ちているはずが、若者は伸びやかに息をする。
この作者さんの感性、好きだわ。
新幹線での本にぴったりな一冊でした。
Posted by ブクログ
ゆったりとした休日を過ごしたい人にオススメ。
次に何が起こるかわからない展開の速さ。
没頭しやすいと感じたのは、設定の軽さと難しい言葉を使わない点にある。