井手英策のレビュー一覧
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《人を雑に扱う社会を「革命」する》
国家資格である「社会福祉士」を英語で"Social Worker(SW)"、「精神保健福祉士」を"Psychiatric Social Worker(PSW)"と訳しカッコ内を略称として使用する。
では2つの資格を持つものは「ソーシャルワーカー」なのか?
「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」での「ソーシャルワーカー」から『物申す』を引いたものが社会福祉士である。
カリキュラムには政府の都合が良い仕事だけ覚えて仕事しろという意図があり『物申す』が省かれている。
『物申す』ことこそがソーシャルワーカーには必要である。
帯にある【人を雑に扱う社会はもういらない!】というフレーズを心に留めて、「身近な革命する人たち」の一員となる、そのために社会福祉士国家資格を取得しスタートラインに立つ! -
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ネタバレ<目次>
はじめに(今野晴貴)
第1章 生活困窮者を絶え間なく生む社会(藤田孝典)
第2章 引き裂かれる日本社会(井出英策)
第3章 日本の「労働」はなぜこれほど苦しいのか?(今野晴貴)
第4章 身近な世界を政策につなぐために~「ベーシック・サービス」の提唱(井出英策)
第5章 限定的で狭小な社会福祉からの脱却(藤田孝典)
第6章 「職業の再建」で分断を乗り越える(今野晴貴)
第7章 未来を再建せよ(井出英策)
あとがき(藤田孝典)
<内容>
日本の現代社会の問題を示した本。この本の優れているところは、3人の知恵者が、彼らなりに解決策を提案していることだ。それも実現不可能な夢物語ではない。現状の自民党と財界からは(そしてアメリカからは)、評価されない、足を引っ張られるものだろうが…。近頃の労働組合の不甲斐なさに疑問を感じている私に、この本の今野氏の指摘はよくわかった。労働組合がいかに「職業の再建」に取り組めるかは、大事なところだ。 -
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大学の先生が、大人のために、個人主義とかGDPとか多数決とか公正や信頼などについて解説してくれる本。
多数決は何かを決めるときに必ずしもベストな手段ではないとか、なるほど。
利己主義は昔からあるけれど、個人主義は比較的新しいもので、国によって発生過程が異なり、「フランス革命に反対する勢力が、社会を解体する良くないものだと否定する文脈から登場し、19世紀半ば以降の英国では、個人の自由な経済活動が『小さな政府』とセットで強調されるようになり、哲学と文学が盛んだったドイツでは多様な個性を重んじる個人主義が重んじられ、アメリカでは他人の力を借りず一人でやりとげる『セルフ・メイド・マン』の概念と結びついた」という話。
統計的に言えば、一定の社会的属性に入る人たちが例えば失業という共通のピンチに瀕していても、一人ひとりにとっては自分だけの問題のように感じてしまう。このことを、「集団・階層」から「個別の状況や個人史」への「社会学的革命」と呼び、本来は社会的な背景をもっており個人のせいにはできないような事柄までも個人の問題のようになってしまった。なるほどねー。社会問題の個人化ってわけだ。
という具合に興味深い話が多かったのだけれど、特に、第二章の「勤労」が面白かった。
岸信介政権の「国民皆保険」と「国民皆年金」は、日米安保が批判されていたので、アメとムチとして導入された→池田勇人内閣では、社会保障はぜいたくだとされ、働く者たちへ減税で報いた→経済成長とともに増える税収→減税、1947年以降国債発行しなくてもよくなった=「小さな政府」となった→貯蓄が増える、財政投融資も増える→さらに成長=「勤労国家」→バブル崩壊→消費低迷、物価下落、貸し渋り→企業は非正規雇用増やす→政府債務悪化、1995年財政危機宣言→政治家は個別の有権者の利益を提供するようになり(中小企業対策、農家の所得補償、地方向け公共投資など)→特定の誰かのための利益の寄せ集めのような財政→ジニ係数が増え、相対的貧困率も高くなった。福祉国家の実態は、経済成長に依存しており、景気が停滞するとすぐに不安定になっていった。なるほどー。 -
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現代社会の抱える課題について、経済学・歴史学・政治学・社会学の視点から考えている作品です。
経済成長の基準とされる「GDP」について、その数値が示すものの意味と、GDP値を上昇させることの意味。
また、日本において根深く残る「勤労」感(働かざる者食うべからず、として貧困層をかれらの努力不足と断じる姿勢など)がどのように醸成されてきたのか。
多数決で物事を決定してゆく民主主義が抱えているシステム的な「課題」や、また「社会福祉」として行われる弱者救済が「人びとのニーズ」に合致しなければならないことなど、「これから先の社会」を考える前提としての「現代の社会」について、どのような仕組みで動いているのか、その歴史的な変遷をも含めて解説されている前半部分はとてもわかりやすく、大きな学びとなりました。
後半の記述の内、「11章 公」の章は少し議論が抽象的・概念的なものとなり、読みづらい印象ではありました。
「希望」とは単純な楽観主義ではありませんが、現在の社会状況を正確に把握し、構成員の多くが納得できる形で「より良い社会」へと更新してゆくために何ができるのか、を考えるきっかけを与えてくれる書籍です。 -
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前々から気になっていた井出英策。今年一発目の本として「日本財政 転換の指針」を開き、ちょうど就任式を迎えたトランプ大統領の移民を排斥しようとする政策がなぜ得票に繋がるのか?の不思議に始めて明快な説明を受けたような気がして、講演会も聴きに行き、そこで民進党の前原誠司のブレーンとして研究だけじゃなく現実にコミットする!という宣言を聴き、著作も辿りながら、「財政」という自分にとっての新しいキーワードを手繰ってきた2017年は「大人のための社会科」を読んでの締めくくりとなりました。たぶん彼の案による「all for all」にも強いメッセージを感じ期待もしていたのですが、呆気なくテイクオフ出来ず瓦解崩壊。大丈夫?井出先生!でも熱い「上から目線」で反知性主義に抵抗するという本書の最終章は「希望」。『「進歩」が「第一の近代」を主導する理念であったとすれば、「第二の近代」を動かす理念として「希望」に注目が集まっているのかもしれません。』『希望という「ウォームハート」と社会科学という「クールヘッド」を結びつけること、これこそが本書のメッセージなのです。』いまをかえるための希望の希望を閉じたのが希望の党という皮肉。もっと読みたい考えたい「公」「共」「私」の新しい関係を。
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なぜ、日本人は増税をこれほどまでに嫌がるのか。
今の日本の閉塞感はどこからきているのか。
研究者らしく分析していて面白かった。
日本の借金返済にはまだ余裕があるから、まずは普遍的な福祉を充実させてから増税につなげるべきという考え方。
どうしたら増税ができるのか、それを考えなくては、財政再建もままならない。
支出を切り詰めるより、収入を増やすことを考える、成長神話は終わってるという考えは至極納得できる。
ただ、じゃあ増税に納得できる福祉ってなんだ、という部分が少し弱い気もした。
そこを考えるのは、また別の人、もしかしたら私たちなのかもしれない。 -
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ネタバレ一刻も早い財政再建が望まれる日本。なぜ財政再建ができないのか。本書は、政府債務が対GDP比で200%を超えている日本の財政構造を明らかにする。
我が国民は痛税感が強い。なぜか。税が債務の返済や低所得者ばかりに費やされているからである。そのため、多くの中間層は、受益なき負担を強いられている。ここに日本が増税をできない理由がある。
日本は「公共投資偏重型財政システム」であり、ここに減税による中間層への所得配分が加わった、いわゆる土建国家であった。公共投資が雇用を生み出し、一定の生活保障の役割を果たしたほか、中間層への減税によって受益感を与えていた。しかし、この土建国家のフレームワークが今や破たんしていると著者は説く。少子高齢化や不景気に伴い、財政ニーズが公共投資から社会保障へシフトされたからである。
とは言え、著者は北欧型の高負担・高福祉を目指すスタンスではない。救済すべき人の割合を減少させ、中間層への受益感を増大させることが大事であると説く。そのための手法として、高所得者や企業の課税強化を挙げている。法人税の税率アップなどは企業の海外移転に結び付きそうだが、企業の海外移転の主な理由は人件費や販路拡大にあり、税はあまり影響しないと分析している。
著者は、生活保護制度に代表される「ターゲッティズム」の領域を最小限にし、広くサービスを行き渡らせる「ユニバーサリズム」の重要性を説いている。しかし、そのためには財政構造の転換や政府の強いリーダシップなど、多くの難題が残されており、相当の歳月を要することは間違いないだろう。喫緊の財政赤字を解消する手法ではない。我が国の目指すべき1つの方向性程度に受け止めておいた方が良いかも知れない。