森川智喜のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
未来の探偵は、未来の自分に真相を乞う
「バック・トゥ・ザ・フューチャー2」でタイムスリップした先は、2015年10月。中に浮かぶスケートボードは開発されなかったが、代わりにインターネットで世界中の人とコミュニケーションがとれるようになった。未来を予想するのは難しい。夢物語かもしれないタイムマシンも、未来がどうなるか分からない以上、絶対ないとは言えないかもしれない。
2200年代からやって来た未来の探偵は、タイムマシンを使い依頼をパパッと解決する。もちろんタイムパラドックスが発生しないよう、宇宙の因果だの相転移だのを計算に入れて行う必要があるようだし、予期せぬ邪魔も入る。それでも終始和やかで、テンポ良く話は進んでいく。さらっと読める王道の時空ミステリだった。
惜しかったのが、現代の探偵があまり活躍していなかったこと。未来探偵やパトロール隊員に敵わないのは致し方ないが、現代人ならではの視点やアドバイスによって事件を解決に導くような展開も欲しかった。 -
Posted by ブクログ
「なぜなら、雨が降ったから」
「ま、詩的にいうなら、宇宙のしわざね。私が探偵するときに雨が降るんじゃない。雨が降るときに私が探偵するんでもない。宇宙が雨を降らし、同時に、私に探偵させるのよ。突き詰めると、この世の中に許される主語はただ一つ、宇宙だけ。お分かり?」
「…これもまた、宇宙のしわざなの。宇宙が一つの大きな主語となり、何かをどうかさせる。そして、別の何かをどうかさせる。結果、人が死ぬこともあるわ」
「原因が同時に結果であり、結果が同時に原因。因果関係ではなく包括関係でもなく、相関関係ね。」
「たとえば、イコールのキーというものがあるわね、野崎君。電卓で計算をするのなら、あのキーを押すのは結果を導くための手続きになるんだけど、本当は違う。なぜなら、イコールはそもそも、方程式の中枢だからよ。方程式の左辺と右辺は、この世界に同時に現れて、同時に消える。どうかな、分かるかな?」
「それにしても、本当、子供は頭が柔らかいですね ー ぼくにはあんな方法、思いつきませんよ」
「そうね。それに比べて、『子供は頭が柔らかいですね』というステレオタイプないい回しは、いかにも、頭カチコチって感じがするわね。どうかしら」
「…雲から水滴が落ちるとき、人々は、雨だ雨だと騒ぐ。しかし水滴を落としている雲は、人々がうれしくて騒いでいるのか、悲しくて騒いでいるのか、分からないの。同じように人々は、水滴を落とすことが、雲にとってうれしいことなのか悲しいことなのか、どうやっても、分からないのね」 -
Posted by ブクログ
前作キャットフードは微妙だったけど、本作は本格ミステリ大賞受賞ということで期待していました。
まあ期待通りといったところでしょうか。
前評判なしに読んでいれば、その飛躍っぷりに拍手を送ったことでしょう。
前作では設定を活かしきれていないように感じましたが、本作ではこれでもかと「真実の鏡」なるものが使い回されます。
ミステリ的に反則のようなツールではありますが、昨今の特殊設定ミステリブーム(?)から見れば出るべくして出た作品なのかな…
それと特筆すべきは、その読み易さ!
知り合いの方から「冬の寒い朝、布団から出たくない時に何となく読み始めたら、身体が温まってくる頃には読み終わってる本だよ」と言われたのですが、まさにそんな感じです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「魔法の鏡」というお題で抜群に頭の良いひとが小説を書くと、なるほどこんなミステリが出来上がるのか……。
「あちらの世界」では王家を継承する血を引くママエは、それとは知らず「こちらの世界」で世話役の小人イングラムとともに暮らす中学生。そのいっぽう、母の形見の「魔法の鏡」を密かに駆使して探偵業も営んでいる。そんなある日、とある依頼人の手引きでおなじ探偵業を営むふたりのクセもの、緋山燃、そして「我こそは名探偵」と公言してはばからない三途川理と引き合わされたママエは、「あちらの世界」の戴冠式に絡んだ陰謀から思わぬ事件に巻き込まれてしまう……
ミステリーながら、いきなり「魔法の鏡」「小人」といった飛び道具(?)の登場に面喰らうし、年齢的に仕方ないとはいえ、ママエの幼さ、身勝手さに共感できないのも読んでいてつらいところ。とはいえ、「魔法の鏡」を縦横無尽に使い倒す三途川の頭脳には舌を巻かずにいられない。とにかく、読者に息つく暇をも与えない矢継ぎ早のトリックは面白く、おとぎばなし的な舞台設定もさほど気にならなくなってしまうのだ。ラストの種明かしは……う〜ん……ひとひねりせずにはいられない作者の性格が出ている感じ?
【以下、ネタバレ】
…… 「白雪姫」的なオチというのは分からないでもないが、個人的には、とどめはママエ自身の手でお願いしたかったかな? オトナへの階段として。シリーズものらしいので、そのあたりの事情からママエのキャラは変えたくないかもしれないけれど。