犬塚理人のレビュー一覧
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犬塚理人『人間狩り』角川文庫。
初読み作家。第38回横溝正史ミステリ大賞優秀賞受賞作。
少年法の壁、正義とは何か考えさせられるなかなか面白いミステリーだった。酒鬼薔薇事件や宮崎勤事件を連想させる事件の20年後に起きた奇怪な事件に端を発し、20年前の事件に翻弄される人びとと間違った正義……次々と連鎖していく加害者と被害者双方の不幸と過去への後悔……
当時14歳だった少年Aによる20年前の女児殺害事件の残虐な犯行の一部始終を収録した映像が闇サイトで売買される。映像の流出は警察関係者からとの見方があり、監察官の白石は捜査を始める。やがて、明らかになる少年Aの今の姿と様々な悪事を暴き、制裁を加えるネット自警団の存在……
本体価格720円
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Posted by ブクログ
ネタバレ装丁に惹かれて手に取った作品。
あらすじに「新興宗教の裏に隠された真実を暴く」とあったので、カルト教団系が好きな私としてはワクワクしながら読み始めた。
序盤は検事・一色瑞穂の視点で事件を紐解くミステリー調で、少し宗教絡みの伏線が張られていて、それを推察しながら進むのが面白かった。
後半にかけて一気に伏線が回収され、カルト教団〈サンクチュアリ〉の真の目的がバイオテロで、信者や脱会者を対象に人体実験を行っていたという闇が露わになる。
社会派の要素も絡みつつ、エンタメとして加速していく展開が秀逸。シリーズ化できそうなほど面白いミステリーで、読み応え抜群の作品でした。 -
Posted by ブクログ
4章、もとい後編に入ってしまったら、読むのを止められなかった。
夜中から読み始める物では、ない。
そのぐらい私にはハマった。
1〜3章に、それぞれの事件があり、それぞれの被害者、それぞれに犯人がいて、解決したように見えて全てが伏線だった。
主人公の瑞穂が、最初は、やる気あり過ぎて空回り系かと思っていたら、強引感は否めないけれど、ちゃんと成長が見られて良い。
立会い事務官の波多野も、真面目過ぎず尖り過ぎず、いい相棒していたし。
高宮さんも甘党でスマートで、上手に部下を使えるいい上司。
頑固に見せかけて意外と柔軟な刑事もいて、ドラマ化したら面白そうなキャラ達だった。
そんな、いい感じなキャラ達の誰かが、内通者だったら興醒めなところ、そんな事も無く最後まで楽しめた。
ラストが希望の見える終わり方で、そこですべてが救われたようで、良かった。 -
Posted by ブクログ
自殺志願者を狙った殺人事件、人気アイドルの遺体盗難事件、DV夫による妻子殺し。東京地検の検事・一色は数々の事件を手掛けるうちに、そこに新興宗教「サンクチュアリ」が関わっていることに気づく。一見関係のなさそうな、そして解決したはずの事件に繋がりが見え、その裏では恐るべき陰謀が企てられていた。息詰まるような連作ミステリです。
第一話から第三話まで、個々の事件をひとつの物語として読んでも読みごたえは充分です。なんといっても犯人の動機が秀逸。普通ではまったく考えつかない動機でありながら、その人の立場で考えてみるとそうなるのかな、と理解もできる。そして理解すると同時に、とてつもない悲しみを覚えました。
そして第四話からの展開はもう恐ろしくて仕方がありません。ここでようやく謎めいたプロローグの意味が……! 新興宗教の恐ろしさって、自分たちが正しいと思い込んでしまっていることなのでしょうね。そしてそんな中で幼少時から過ごしていた宗教二世の苦しみもまたやりきれなくて。何かに頼りすがることも時には必要かもしれませんが、盲信は恐ろしい結果しか生まない気がしました。 -
Posted by ブクログ
犬塚理人さん、初読みです。
4章からなるミステリです。3章までは主人公の新人検事が事件を解決していく連作短編ミステリです。
失礼ながら、やる気溢れる新人検事が事件を通して成長していく系かーまぁよくある題材というか、ありふれてるよね…と思いつつ読んでいたのですが、思わぬ展開にびっくりしました。
4章から急に話が「サンクチュアリ」という宗教団体による犯罪の話に…。そうすると、3章までの短編ミステリが全然違った様相を呈し始めるのです。今まで見えていた景色がガラリと変わり、見えなかった繋がりが浮かび上がってきます。この趣向が新感覚で面白かったです。
そして、最後にあっと驚く事実が明かされます。あまり前情報を入れずに読んでほしいミステリです。 -
Posted by ブクログ
女性検事が知恵を絞り事件現場を駆け回る! 新興宗教をテーマにした社会派ミステリー #サンクチュアリ
■あらすじ
検察官の一色瑞穂は、司法修習時代の教官である高宮誠一郎と交流を深め、事件捜査に関わる刑事部に着任することになる。彼女が請け負った事件は、自殺志願者を集団自殺へと誘い、自らが殺害するという内容であった。捜査を進めていくうちに、新興宗教〈サンクチュアリ〉が関連しているようで…
■きっと読みたくなるレビュー
新興宗教を題材にした社会派ミステリー、謎解きや犯人当ての要素よりも社会問題にフォーカスを当てた小説ですね。
ストーリーは地方地検で修行を重ね東京地検に戻ってきた女性検事を視点に進行。担当となった事件を現場まで赴きながら詳しく調査し、探偵さながらに事件の真相を追っていくという筋立て。
第一話、第二話と連作短編ものと思いきや、途中から物語全体の枠組みが変わっていくところが凝ってますね。もうこのまま連続ドラマにしてもらってよいのでは、というほどよくできた構成でした。
キャラクターとしては、まず主人公瑞穂が魅力的。若い世代がやる気満々ってのがいいですよね、年を重ねてきた人間にとっては嬉しいのよ。やっぱりこうじゃなきゃ。
いつも一緒にいる事務官波多野がユルいってのも、凸凹コンビっぷりが面白い。ベタだけど瑞穂のプライベートが描写されるのもいいよねー、ひと昔前の恋愛ドラマっぽい元カレの亮太との距離感が好き。
さて物語は検事瑞穂が現場や関係者への聴取など、事件の最前線で立ち向かう姿が描かれる。知恵を絞るのはもちろん、文字どおり走り回るアクションも多くカッコイイ!
物語が中盤に入るころ、本作のテーマである新興宗教〈サンクチュアリ〉が大きく関わってくることになる。と…、これ以上語ると面白味をうばっちゃうので、ぜひ読んでみて下さい。
これは昔からよく聞く課題で、令和の現代でもまだはびこっています。むしろ近年においては、大きな事件をも引き起こしている。これをテーマに小説を書くこと自体がチャレンジングだと思いました。
さて謎解きについて感心したのは犯行の動機ですね。特に第一話、第二話なんかは、想像より二歩くらい先をいってる理由付けで手が込んでる。そして終盤にかけては、犯行動機についてもスリラー度がどんどん増してゆくのです。
若干のあらっぽくはあるんですが、ラストにかけて事件のスケールを大きくしていくところは盛り上げ上手でしたね~。さらに最後の最後まで、まぁまぁ無茶してるところなんかは個人的には大好きです。
■私とこの物語の対話
実は私、冷たい人間なんです。
困った人に手を差し伸べたり、ボランティアに参加したり、寄付などをしたこと、ほとんど経験がありません。
ただし、愛する家族や大切な仲間のためには、いくらでも自分を犠牲にできます。なんというか… 自分の責任範囲外にまで自分の命を削れないというか、そこにリソースを使ってしまうことが、逆に愛する家族を裏切っているような気がしてしまうんです。懐が浅いっつーか、心が狭いというか。
物語の中盤、瑞穂が検察官になった理由を語るシーンがあります。もちろんこの価値観に至るには、彼女が生まれ育った背景も関係してくるのです。
瑞穂ほどではありませんが、私も似たような経験があって、彼女の気持ちがわかるんだよね…。幼い頃から生きることのリアリティさを突きつけられると、夢や希望はある程度折り合いをつけちゃうんです。生きぬくってのは難しいよなーと改めて思った次第。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ一つひとつの事件が大きな一つに繋がっていく。
それぞれの事件を解決する短編として読んでも十分面白いが、最後に近づくにつれて面白さがさらに増していき、読むのを止められなかった。
親が持つ宗教に対する強い信仰心と、子への薄れた愛情。新興宗教の恐ろしさ、宗教二世の苦しみを痛いほど感じた。義務教育を受けられず、宗教の外の世界を知ることがないまま大人になった子供たちは、宗教の外にいる誰を信じて生きていけるのだろうか。どうすれば自分の人生を歩めるのだろうか。
最後にプロローグの意味を全て理解し、本物の愛情を感じたと同時に、とても切なく、やるせない気持ちになった。