犬塚理人のレビュー一覧
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犬塚理人『人間狩り』角川文庫。
初読み作家。第38回横溝正史ミステリ大賞優秀賞受賞作。
少年法の壁、正義とは何か考えさせられるなかなか面白いミステリーだった。酒鬼薔薇事件や宮崎勤事件を連想させる事件の20年後に起きた奇怪な事件に端を発し、20年前の事件に翻弄される人びとと間違った正義……次々と連鎖していく加害者と被害者双方の不幸と過去への後悔……
当時14歳だった少年Aによる20年前の女児殺害事件の残虐な犯行の一部始終を収録した映像が闇サイトで売買される。映像の流出は警察関係者からとの見方があり、監察官の白石は捜査を始める。やがて、明らかになる少年Aの今の姿と様々な悪事を暴き、制裁を加 -
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ネタバレ一つひとつの事件が大きな一つに繋がっていく。
それぞれの事件を解決する短編として読んでも十分面白いが、最後に近づくにつれて面白さがさらに増していき、読むのを止められなかった。
親が持つ宗教に対する強い信仰心と、子への薄れた愛情。新興宗教の恐ろしさ、宗教二世の苦しみを痛いほど感じた。義務教育を受けられず、宗教の外の世界を知ることがないまま大人になった子供たちは、宗教の外にいる誰を信じて生きていけるのだろうか。どうすれば自分の人生を歩めるのだろうか。
最後にプロローグの意味を全て理解し、本物の愛情を感じたと同時に、とても切なく、やるせない気持ちになった。 -
Posted by ブクログ
裁判員裁判に関わった男女の物語。
プロローグ
第一章 第一審
第二章 控訴審
第三章 失踪
第四章 接触
第五章 ナカタ
第六章 贖罪
エピローグ
姉妹殺人事件の裁判員を務めた智樹と麻衣子は、裁判後、付き合うようになり、智樹は婚約を申し込んだが、麻衣子は担当した裁判の控訴審が出るまでと保留したまま、姿を消してしまう。
一審判決で死刑を選択した裁判員たちだったが、えん罪ではないかとの疑惑を持ち、動き出していた麻衣子を、追う智樹。
次第に事件の真相が見えてくるにつれ、麻衣子の贖罪の気持ちが明らかになる。
とても読みやすく、伏線もわかりやすい。
でもいい意味で、裏切られた結末は心地よかっ -
Posted by ブクログ
二宮智樹は姉妹を殺害した事件の裁判員として裁判に参加する。
被告人である五十嵐を有罪とする意見が多いなか、八木麻衣子だけは無実の可能性もあるのではないかと言っていたが、最後の評決になって有罪へと意見を変え、五十嵐には死刑判決が下る。
裁判後に二宮と麻衣子は付き合うようになるが、五十嵐の控訴審が開かれたあと、麻衣子は忽然と姿を消す。
五十嵐が犯人ではなかったのか⁇
麻衣子は真相を調べるために動き、行方不明になったのか?
麻衣子の行動を辿ろうとするべく奔走する二宮が、真相を追う。
読み始めると気になって、ページを捲る手が止まらなくなった。
裁判員になったとき、法の素人である自分が果たして