あらすじ
「警察でも探偵でもない。検事だからこそ掴める真実を、私が暴いてみせる」
宗教団体〈サンクチュアリ〉の周囲で続く不可解な死。
事件の裏に隠された「もう一つの真相」を暴くため、若手検事の瑞穂は現場に向かう!
★★★★★
連続殺人の生き残り、遺体を盗まれたアイドル、DV夫の妻子殺しーー。
犯人は確保した、はずだった。
地方研修を終えたばかりの検事・一色瑞穂は、東京地検で事件捜査に携わる刑事部本部係に着任する。司法修習生時代の教官で憧れの上司・高宮誠一郎の勅命で「複数の若い女性を殺害し、公判直前に証言を翻した」という被疑者を任される。唯一生き残った女性の聴取で目にしたのは新興宗教〈サンクチュアリ〉のシンボル・五芒星の跡。そして次々起こる殺人事件。危険を顧みず現場の最前線へ立ち向かう瑞穂は、やがて全国民を巻き込む「黒い計画」にたどり着く。
『人間狩り』でネット私刑を、『眠りの神』で安楽死を描いた社会派ミステリの実力派。
今度のテーマは「教義VS正義」!
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Posted by ブクログ
読み進め、「なんだ、短編集か〜!」
・・・・・と思っていたら、
最終章で、そのバラバラの全てが繋がり、納得の仕上がり。
アイドルが主演をはるようなテレビドラマ風の作品でした。
満足。
Posted by ブクログ
新興宗教の教義VS正義。
信じるものは救われるというけれど、信じているものが世界の通として外れているものであれば、どちらを信じるのか。信者は盲目的に教義を信じる。一つ一つの話が独立しているように見えて、最後のエピソードにかけて集約していく作品で、見事の一言。
Posted by ブクログ
前半の1~3話が独立した短編?みたいなのだが、これらが4話で土台となって話が進んでいく構成になっていて、後半の伏線回収が凄かった
新興宗教的な小説はこれが初めてだったけど面白く、思わず一気見
新興宗教の依存などの恐ろしさがよく分かった、
Posted by ブクログ
女性検事が知恵を絞り事件現場を駆け回る! 新興宗教をテーマにした社会派ミステリー #サンクチュアリ
■あらすじ
検察官の一色瑞穂は、司法修習時代の教官である高宮誠一郎と交流を深め、事件捜査に関わる刑事部に着任することになる。彼女が請け負った事件は、自殺志願者を集団自殺へと誘い、自らが殺害するという内容であった。捜査を進めていくうちに、新興宗教〈サンクチュアリ〉が関連しているようで…
■きっと読みたくなるレビュー
新興宗教を題材にした社会派ミステリー、謎解きや犯人当ての要素よりも社会問題にフォーカスを当てた小説ですね。
ストーリーは地方地検で修行を重ね東京地検に戻ってきた女性検事を視点に進行。担当となった事件を現場まで赴きながら詳しく調査し、探偵さながらに事件の真相を追っていくという筋立て。
第一話、第二話と連作短編ものと思いきや、途中から物語全体の枠組みが変わっていくところが凝ってますね。もうこのまま連続ドラマにしてもらってよいのでは、というほどよくできた構成でした。
キャラクターとしては、まず主人公瑞穂が魅力的。若い世代がやる気満々ってのがいいですよね、年を重ねてきた人間にとっては嬉しいのよ。やっぱりこうじゃなきゃ。
いつも一緒にいる事務官波多野がユルいってのも、凸凹コンビっぷりが面白い。ベタだけど瑞穂のプライベートが描写されるのもいいよねー、ひと昔前の恋愛ドラマっぽい元カレの亮太との距離感が好き。
さて物語は検事瑞穂が現場や関係者への聴取など、事件の最前線で立ち向かう姿が描かれる。知恵を絞るのはもちろん、文字どおり走り回るアクションも多くカッコイイ!
物語が中盤に入るころ、本作のテーマである新興宗教〈サンクチュアリ〉が大きく関わってくることになる。と…、これ以上語ると面白味をうばっちゃうので、ぜひ読んでみて下さい。
これは昔からよく聞く課題で、令和の現代でもまだはびこっています。むしろ近年においては、大きな事件をも引き起こしている。これをテーマに小説を書くこと自体がチャレンジングだと思いました。
さて謎解きについて感心したのは犯行の動機ですね。特に第一話、第二話なんかは、想像より二歩くらい先をいってる理由付けで手が込んでる。そして終盤にかけては、犯行動機についてもスリラー度がどんどん増してゆくのです。
若干のあらっぽくはあるんですが、ラストにかけて事件のスケールを大きくしていくところは盛り上げ上手でしたね~。さらに最後の最後まで、まぁまぁ無茶してるところなんかは個人的には大好きです。
■私とこの物語の対話
実は私、冷たい人間なんです。
困った人に手を差し伸べたり、ボランティアに参加したり、寄付などをしたこと、ほとんど経験がありません。
ただし、愛する家族や大切な仲間のためには、いくらでも自分を犠牲にできます。なんというか… 自分の責任範囲外にまで自分の命を削れないというか、そこにリソースを使ってしまうことが、逆に愛する家族を裏切っているような気がしてしまうんです。懐が浅いっつーか、心が狭いというか。
物語の中盤、瑞穂が検察官になった理由を語るシーンがあります。もちろんこの価値観に至るには、彼女が生まれ育った背景も関係してくるのです。
瑞穂ほどではありませんが、私も似たような経験があって、彼女の気持ちがわかるんだよね…。幼い頃から生きることのリアリティさを突きつけられると、夢や希望はある程度折り合いをつけちゃうんです。生きぬくってのは難しいよなーと改めて思った次第。
Posted by ブクログ
新米検事によるミステリー短編集。いかにも!いかにもなミステリー好きが好みそうな展開のお話だなあ・・・特に動機が。
と思っていたら、最終話が一気に・・面白かったです。ミステリよりは急にサスペンス小説みたいになっていくのもこれはこれで。それでいて細かな謎が最後に一気に明らかになるあたりはやっぱりミステリって感じも。
まあ「サンクチュアリ」があまりにも巨悪すぎてそこらへんはちょっと現実味が・・個人的には話があんまり大きくなると逆にちょっと冷めちゃうのかも。
Posted by ブクログ
一つひとつの事件が大きな一つに繋がっていく。
それぞれの事件を解決する短編として読んでも十分面白いが、最後に近づくにつれて面白さがさらに増していき、読むのを止められなかった。
親が持つ宗教に対する強い信仰心と、子への薄れた愛情。新興宗教の恐ろしさ、宗教二世の苦しみを痛いほど感じた。義務教育を受けられず、宗教の外の世界を知ることがないまま大人になった子供たちは、宗教の外にいる誰を信じて生きていけるのだろうか。どうすれば自分の人生を歩めるのだろうか。
最後にプロローグの意味を全て理解し、本物の愛情を感じたと同時に、とても切なく、やるせない気持ちになった。