西谷格のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
2019年の香港デモで偶然出会った一人の少年への取材を通じ、香港社会の変化を捉えた記録。デモの発生から始まり、新型コロナ拡大・国安法制定後の状況も含む。
本書は、日本や欧米の報道では見えてこないデモの実態やそれを取り巻く社会構造を上手く伝えている。デモの醜い側面(公共物破壊やデモ反対者に対するリンチ等)、実際には多くの人が本土にルーツを持つ移民社会、在港本土出身者のデモに対する嫌悪感、非デモ参加者のデモ長期化に伴う支持意識の後退等々だ。
取材対象の少年は10代だが、通学してなければ定職にもついていない所謂不良少年。デモ参加の理由も、ただ鬱憤晴らしに暴れたいだけのようにも見える。筆者が参加の理由を聞いても中国が嫌いだからという答えで、はぐらかしているというよりは少年自身がそれを十分に言語化できていないからなのだろう。そして、中国人の母親を持ち、出生は本土だが自分のことを香港人と考えている。香港人の夫に先立たれた母親は3人の子のシングルマザーで、本土出身なので当然デモには反対。少年は結局逮捕勾留され監察処分を受ける身となるが、国安法施行で落ち着きを取り戻した後も就職は上手くいっていない。デモ参加者全員がここまでの境遇ではないとはいえ、こうした若者を惹きつけるだけの魅力があったデモが何の成果も上げずに(途中で上げた成果も失うような形で)失敗したのは個人的に残念に思う。
少年や母親とのやり取りが細かく記されているが、ジャーナリストの取材に馴染みない者からするとそのやり方は無遠慮で失礼な感じがした。ただ、そういう万人ウケするとは思えない筆者の行動が描かれていることが、逆に本書に真実性を付加している。自分自身がそうした根掘り葉掘り聞かれて付き纏われる取材対象になるのは御免だが。 -
Posted by ブクログ
2019年に香港で起きた反送中デモに参加していた15歳の現地少年との交流を描いている。
政治的な色合いは薄い。それは著者自身に明確な思想がなく、取材対象である15歳少年にも苛立ちはあれど思想はないからだ。というか取材かどうかも怪しい。
著者と少年の交流は、取材する側、される側の関係とはいえないだろう。なにをしているかといえば、いっしょに酒を飲んだり釣りをしたりしているだけであり、少年に質問しても確信めいた解答がなされるわけではない。少年のなかには何もないからだ。
おそらくこの少年はアメリカに生まれようが日本に生まれようが、なにか理由をつけて反発をしただろう。中国への苛立ちが嘘だというわけでもないし、香港へのナショナリズム的な感情もあるのだろうが、その一方でそれらは交換可能なものだとも思える。 -
Posted by ブクログ
なんで逮捕されていたのか、どのくらい交流されたのか、そもそも罪名は何なのか、どのような判決が出たのか、などなど結局少年についてはわからないことが多く、欲求不満感が残る。
「これでいいのか」と迷いながら取材対象を追っていくのはいいと思うのだけど、本人の言から取れない部分を当局取材などで補うべきでは?と感じた。
とはいえ、デモ後に再開した時にデモの話を嫌がるという点そのものに、少年の今の気持ちが表れてるのかなとは思った。
この本のぱっとしなさいや割り切れなさそのものが、香港デモの評価の難しさなのかなと思う。
『国安法を歓迎はしない。だが、デモで街が破壊されるのも困る。香港デモの暴力という必要悪に対し、中国政府は国安法という必要悪をぶつけてきたーー。大半の市民は時にため息をつきながら、そう認識して自らを納得させているようだった。』
『ーーリンゴ日報がなくなり、ネット空間での発言に気を遣うようになったのは残念だ。国安法は自由や民主といった香港特有の価値を損ねるもので、決して良いものと思わない。
だが、国安法によって治安が回復したことは否定できないし、以前のようにデモで街中が破壊されるのはもう嫌だ。遅かれ早かれ一国二制度に終わりの時は来るのだし、受け入れるしかないのだろう。今の自分の生活には影響しないのだから、そう深刻になる必要もないじゃないかーー。』
この辺りが市民の本当の声な気がする。 -
Posted by ブクログ
最近(もっと前か!?)日本を超えたといわれる
デジタル化した中国の様子を現地で体当たりレポートした本。
実際の著者の体験レポを読むと、確かに日本より便利だと思われる部分(特にキャッシュレス社会)と
中国らしい結構適当な(行き当たりばったりな)部分に分かれていて興味深い。
行き当たりばったりだからと言って、中国のことをバカにするのは筋違いで、
完璧でもない中であっても中国ではどんどん市場に出て、
仮説・検証のサイクルをグルグル回しているということだろう。
中々、日本ではクレームになって許されなさそうなことも、
中国ではどんどん起こり得るので、その点が逆に脅威に感じた。
著者の体験が2019年夏のものなので、賞味期限のある本ではありますが、
コロナ下で中々、海外の様子を見に行けない中、貴重な資料なのではないかと思います。 -
Posted by ブクログ
中国はメディアで見るのと、現地で見るのとでは、全然違う。そう意味でもルポというタイトルに引かれた。
あっという間に大躍進を遂げたチャイナデジタル。中国の人件費の安さで外注してた時代の誰がこのスピードでアメリカと競い合うまでになると考えただろうか…という大きな話より、中国は実際に見て肌で感じる方が断然楽しい。
だから本中の筆者のその時に感じた一言が、リアリティがあってとても面白い。日本の進まないデジタル化とのギャップをつぶやいているが、とても中立な立場で述べられており、それが本書を安心して読める理由のように思った。
無人化の進んだアリババホテル、ハリボテ感のあるデジタルショップの数々、一方で庶民の生活に根付いているアリババのデジタルと現実を融合させたスーパーとさまざまなサービス、国をあげたキャッシュレスの推進、無人化されたエンタメとコンビニ、移動手段の変遷。
日本は技術はあるのに、変われない体質でデジタル化に立ち遅れている。人口規模もそこそこ大きいのもネックになっている。中国はまずインフラをガツンと国がバックアップして一本化できるところが強い。
キャッシュレスの立役者は、アリババのアリペイだけでなく、それを上回るシェアを誇るテンセントのウィーチャットペイ。ユーザー浸透率が92.4%というから驚き。
中国の発展を横目に日本もデジタル庁が出来たが、乱立インフラや現金でも困らない過去のしがらみを超えて日本がどうなっていくのか楽しみ。