あらすじ
潜入ライター、AI監視ウイグルに迷い込む。
すべての行動が監視され、住民の疑心暗鬼に満ちたネオ監視国家。筆者はその最暗部にスマホ一つで乗り込んだ。
〈上海や北京を中国の表玄関とするなら、新疆ウイグルは裏のお勝手口のような場所だ。外国人の数は非常に少なく、外部の目に触れることはほとんど想定されていない。だからこそ、中国の本当の姿が見えるのではないかという期待があった〉(まえがき)
イスラム教を信仰するウイグル人とのさりげない会話には緊張感がただよう。宗教に話を向けると、コーランはすべて燃やしたと声をひそめる。当局の“再教育”を受けた男たちは、現在は無気力に地べたに寝そべっていた。言語も文化も破壊し尽くされた地に希望の光を探すが、筆者にも当局の影は近づいていた……。
ジョージ・オーウェルが『一九八四年』で予言した世界から40年。それを凌駕する不条理世界に迷い込んだ筆者による決死のルポルタージュ!
(底本 2025年8月発売作品)
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Posted by ブクログ
これぞ体当たり取材。
中国に監視されている新疆ウイグルに、
出版社の支援も何もない、単身で乗り込み、
そこに住む人たちの「ホンネ」を聞き出そうとする著者。
しかしそこはまさに監視社会。
いたるところに監視カメラがあり、当局がいる。
それ以上に、住人そのものが疑心暗鬼で、
ホンネなどいえるわけがない。
それどころか著者が建物を撮影しようとすれば、
当局以前に住人自身が「やめろ」という。
中国にウイグルの言葉とイスラム教を奪われた住人達。
突然収容され「再教育」される住人達。
そして当局の手は著者にも伸び、
スマホデータを消されるのはもちろん、
眠らせないで尋問が続く。実質拷問だ。
ようやく許され日本に帰って、
日本にいるウイグル関係者に取材する。
ここでもなかなか本音は聞けない。
むしろ逆の考えを聞く。
沖縄の若者が標準語を話すのをどう思うのか、と。
ウイグルも元は仏教だったがイスラム教になった、
それをどう思うのかと。
中国のやり方を一概に悪く言えないのではないかと。
確かに、、、
言葉を、宗教を揃えることは国力をあげることにつながる。
これは動かしがたい。
そのほうが全体のパイが増え、一人一人が豊かになる。
そういう側面はある。
それこそアダム・スミスの分業。
生産性は格段に上がる。しかし、達成感、仕事の満足度は失われる。
トレードオフ。
これを人の生き方、でどう見るか。
明治維新初期、日本も国民に対し、今の中国のようなことをやってきた。
神仏分離で神社仏閣をやたら壊した歴史がある。
いまだ続く学校教育の原型もこのころにできている。
(だからこそ今の時代に合った教育スタイルに変えることを考えるべきなのだが)
そうして欧米列強と肩を並べた事実はある。
だけど、、、
この本のタイトルの前段一九八四は、まさにジョージ・オーウェルのそれ。
監視社会。
それを地で行くのが新疆ウイグル。1984年から40年たった今日に実現したのだ。
中国本土も似たようなものなのだろう。
日本もそこまではいかないが、犯人の追跡が「防犯カメラ」である程度できる現実がある。
全体と個。
理屈はわかるが、本能的に嫌だな。当局に監視されて自由を奪われるのは。
でもなあ、自分の考えを持たない人間が増えているのも事実。
阿部監督問題がその典型例のようにいわれているけれど。
考えない人は管理していいのかなあ、、、
でもそうなると、為政者にとって、考える人は邪魔になるだろうな、、
まえがき
第一章 110番したら54秒で警察はやってくる──ウルムチ
第二章 新疆人は砂とともに生きる──ケリヤ県
第三章 〝神なき宗教〟を信じる人びと──ホータン
第四章 女の子は後ろを振り返らない──ヤルカンド
第五章 タイガーチェア──イリ
第六章 ここには自由がある──カザフスタン前編
第七章 中国の影──カザフスタン後編
第八章 それでもウイグル人である──日本
あとがき
Posted by ブクログ
ウイグル潜行とあるが、新疆ウイグル自治区そのものは観光として行けるらしい。考えてみれば、中国に渡航できるのだからウイグルにも旅行できて当然ではある。さっきツアーを見たら一週間で50万円ほどだった。
ただ、著者は職業を偽って取材しているので潜行という表現で正しい。ちなみに、新疆ウイグル自治区は警官&監視カメラだらけとはいえ、旅行するだけなら問題はなく(写真は撮りにくそうだが)、著者のような取材記者となると俄然厳しくなるようだ。そのせいもあって著者は一時拘束されることとなる。
帯で「世界最悪の旅」とあるのは一時拘束のことを示しているのだと思う。解放はされたが、中国には5年間入国禁止になってしまったそうだ。
じつは具体的な「最悪」はそれくらいなのだが、抽象的な「最悪」はところどころで出てくる。ウイグルに着いて最初のタクシー運転手が異常なほど日本語がうまかったり(ウイグルに日本人観光客など来ない)、新疆のウイグル人たちが一様に口が重くよそよそしかったり、別の国であるカザフスタンでも当局からの監視があったりする。なかなか背筋の寒くなるような話が続く。
しかし、抽象的な「最悪」と書いたことを撤回するような形になるが、本書は新疆ウイグル自治区の現状を「最悪」と断じることはない。当然、だからといって中国の治安維持全振りで人権侵害が行われているいまの状態を肯定もしない。
これを日和見と非難することも可能だが、本書を最後まで読むと、そのような非難は無意味であることに気づくと思う。
Posted by ブクログ
今回、ウイグルの問題についての本を読み、さまざまなことを考えさせられた。中国による新疆ウイグル自治区での弾圧について知ると同時に、自分たちの歴史についても振り返らざるを得ないと感じた。日本も過去の歴史の中で、似たような問題を抱えていたのではないかと思う。
また、現代の日本に目を向けると、クルド人問題などもあり、単純に「一方が悪で、もう一方が善」と言い切れるものではないと感じた。どの問題にも複雑な背景があり、簡単な二元論では捉えきれない。
しかし一方で、すべてを相対化してしまうと、何も判断できなくなってしまう危うさもある。だからといって、極端な善悪の二元論に陥るのも違う気がする。
こうした問題は個人の善悪だけでなく、歴史や政治、社会などの構造が絡み合って生まれているものだと思う。だからこそ、簡単な答えを求めるのではなく、バランスを取りながら考え続けていくしかないのではないかと感じた。
Posted by ブクログ
ウイグル関係の本はいくつか読んできたが、この本は新しくまた、旅行者としてウイグルを旅しながら取材したという稀有な本である。
ウイグル民族に対する弾圧は一時よりはトーンダウンしているようだが、モスクの閉鎖、ウイグル語教育の廃止、監視システムなど弾圧のための素地はむしろ強固になっているという印象だ。また著者が監禁される場面は恐怖をかんじた。
また、隣国のカザフスタンでも、中国政府による監視が行き届いていることに恐怖さえ感じた。
巻末の参考図書も有用。
Posted by ブクログ
2023年の新疆ウイグル。
ビジネスホテルに到着すると空港のようなX線ゲートで手荷物検索。街中を歩くと警官の数が異常に多く、交番のような警察官詰め所が数百メートルおきにあり、安ホテルに泊まろうとすると人民警察の職務質問を受けなければならなく諦める。モスクの写真を撮ると、どこからともなく警官が現れて削除させられる。監視カメラはほぼすべての店舗の入り口と電柱に備え付けられていて、タクシーの中ですら撮影、盗聴されている。
ウイグル人たちは決して本心を話さない。誰が政府と通じているかわからない、疑心暗鬼。日本の戦中の隣組のように互いに監視し合う世界。
新疆ウイグルでは強制収容所のことなど聞けるはずもなく、隣国ウズベキスタンへ。そこで強制収容所からの生還者に話を聞く。その話は悍しいものである。
しかし、隣国でもまた日本でも「本心」を語れないウイグル人がたくさんいる。彼らの家族や一族が新疆ウイグルにいる場合、ウズベクでも日本でも彼らが何かを話す、何か行動すると全てが中国政府に筒抜けで、その家族や一族に被害が及ぶ。そんなことが本書で語られる。
2023年の中国は、オーウェル「一九八四年」を凌駕する監視社会だった。著者は自身は「親中」でも「反中」でもないという。現在の中国政府のウイグルに対する統治について「こうするよりほかにないかもしれない」と思うことすらあると吐露している。
しかし、僕は怖い。
Posted by ブクログ
ジョージ・オーウェル『1984』を地で行く世界で、全体主義社会の怖さがありありと伝わってきて凄い本だった
かといって反中に偏りすぎず、極力市井の声を聞こうとしてて信頼して読めた
ガザやウクライナもそうだが、国というシステムだけでは限界なんだろう
Posted by ブクログ
作者の現地でのルポがリアリティーであり、怖さも実感できた。一般人は、このウイグル問題は全く他人事であり、中国はやはりそんな国なんだなぁ、思うぐらいである。このコメントをあげるので際、見張られている恐怖を感じる。
Posted by ブクログ
本を出版しているから最終的な無事が確証されている中で読んでいたけれど、
それでも本当に危ない状況に自ら潜り込んでいくのはほんとうに危険すぎるーーと思いながらの読書でした。
報道って難しいなーとも思う。何か書こうとしても、伝えようとしても書けないことの方が多いし、それは自分で体験することでしか分からないという好奇心もあるのだろう蹴れど、
一つ間違ったら命も落とすし、実際に話を聞いたウィグル人の人、そして家族には影響を及ぼしてしまっていることを考えると、一個人ですべきものではないのではとやはり思ってしまう。
・・・
王震と王恩茂
人民広場・大型公園に30m巨大像がある。
新疆ウィグル自治区の初代書記・二代目書記。
モスクが壊されていく。あるいは建て替えられていく。
訪れたところ(ヤルカンド)では、2018年からモスクに入るのが違法に。未登録の人が入ると逮捕される。掃黒除悪のため。
収容所。
中国政府は施設について、「自発的な就業訓練センター」
遅くとも2017年から「職業訓練」や「教育訓練」との名目で大量のウィグル人が収容され再教育を受ける。基準はあいまい。「産児制限の超過」「信用できない人物」、「礼拝の場所を提供」など。
「学習するところ」というように呼ばれていたりする。
実際、約10年前に1人でカザフスタンに移住した男性の弟は、モスクに行っただけで2019年から3年間、捕まって収容所行き。今は実家に戻ったが、いつもぼーっとして頭が動かない。177
29歳のバトゥールは、2016年、カザフスタンのグリーンカードを入手したら、国家への忠誠心に反すると見られ、公務員を解雇された。2020年にはこれが「好色人員政務処分法」で規定された。
「対口援疆」。
1997年から始まった開発支援政策。2010年以降、大幅強化。上海市とヤルカンド県、北京市とホータン市など、自治体でペアを組み、内地の発展した自治体が予算や人員を投入してインフラ整備など発展を支援。
「結対認親(親戚制度)」。
ウィグル族と漢族の過程が双方の合意で親戚関係を結ぶ。過程レベルで中国のアイデンティティや愛国心を育てる。当初、貧困家庭などを対象とした後見人制度のような性質だったが、2016年から信教の少数民族に対して転用。
ウィグル語。
2017までは高校受験や大学受験にウィグル語の課目があった。今は、小学校でもウィグル語を使うと罰金。
・・
中国人にとって国家は、日本人にとって会社みたいなものなのかも、というのが妙にささった。
会社で洗脳されて働かされて、精神的にやられてその後働けなくなる、というのは、
収容所で訓練させられて、出てきた人たちはみなぼーっとしか生きられなくなる、って、
何だかとても怖い比類状況ではないか。
そんなふうになった家族をただただ受け止めるしかない無力さを前に、
嫌やっぱ国家権力・公権力には太刀打ちし難いけれど、会社ぐらい、ほんとうにさっさと離れて関係断ち切らないと、と思う。
_(熊倉潤教授)抑圧下にあったとしても、ウイグル社会というのは我々の想像よりはるかに豊かで強靭なのだと思います。
Posted by ブクログ
筆者はもう、二度と中国には入国できない、、、
でも、そこまで身体を張ったからこその、興味深い内容。新疆ウイグル自治区の内情が、本当によくわかった。
イスラム教の信仰は、ほとんど(80%)ではなく、完全に(95%)なくなった。。。は、衝撃だった
ウイグルからカザフスタンに入る時の、中国当局による取調べ、拘束の様子は、本当に恐ろしかった。一般人である自分でも、ニュースで見聞きして10年単位で拘束されている日本人がいることを知っている。。。
第8章で、ウイグル料理店の店主(漢民族)が語った「もともとは仏教徒の地だった新疆にイスラム教が入り、仏像は全て破壊された」これも500年スパンでの歴史としては「事実」である。
日本だって、沖縄やアイヌの人たちの生活習慣、言語を奪う教育をしてきましたよね?も、事実。
かといって、いま、中国が行っている民族浄化、強制収容が許されるわけではなく、、、
カザフスタン、日本ですら、ウイグルでの強制収容の話をすることがはばかられる。家族や友人がウイグルに居れば尚更だ。。。声を上げることすら、できない。
今の中国による抑圧政策は、テロ防止の観点からは、正しい。
本当に、悩ましい問題だ。。
Posted by ブクログ
中国という国の恐ろしい実態にかなり迫った本だと思う。新疆在住カザフ人の何も語らない態度も、その恐ろしさを証明しており、より想像力をかき立てる。街中いたるところに居る警察官、各所に設置された監視カメラとその背後でモニターしている要員など、相当数の人数を配置してまで、反政府の動きを徹底的に抑え込まなければならないほど、占有領土にこだわっているのだろう。少数の証言からではあるが、中国が全力で否定する収容所の実態を察することができる。国家体制に反するものを破壊し、徹底した監視、拘束、拷問で自由な言論を封じ、習近平というビッグブラザーを擁するこの国はまさに、『1984』で描かれたディストピアそのもののようだ。