【感想・ネタバレ】一九八四+四〇 ウイグル潜行のレビュー

あらすじ

潜入ライター、AI監視ウイグルに迷い込む。

すべての行動が監視され、住民の疑心暗鬼に満ちたネオ監視国家。筆者はその最暗部にスマホ一つで乗り込んだ。

〈上海や北京を中国の表玄関とするなら、新疆ウイグルは裏のお勝手口のような場所だ。外国人の数は非常に少なく、外部の目に触れることはほとんど想定されていない。だからこそ、中国の本当の姿が見えるのではないかという期待があった〉(まえがき)

イスラム教を信仰するウイグル人とのさりげない会話には緊張感がただよう。宗教に話を向けると、コーランはすべて燃やしたと声をひそめる。当局の“再教育”を受けた男たちは、現在は無気力に地べたに寝そべっていた。言語も文化も破壊し尽くされた地に希望の光を探すが、筆者にも当局の影は近づいていた……。

ジョージ・オーウェルが『一九八四年』で予言した世界から40年。それを凌駕する不条理世界に迷い込んだ筆者による決死のルポルタージュ!

(底本 2025年8月発売作品)

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Posted by ブクログ

ウイグル関係の本はいくつか読んできたが、この本は新しくまた、旅行者としてウイグルを旅しながら取材したという稀有な本である。
ウイグル民族に対する弾圧は一時よりはトーンダウンしているようだが、モスクの閉鎖、ウイグル語教育の廃止、監視システムなど弾圧のための素地はむしろ強固になっているという印象だ。また著者が監禁される場面は恐怖をかんじた。
また、隣国のカザフスタンでも、中国政府による監視が行き届いていることに恐怖さえ感じた。
巻末の参考図書も有用。

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2025年11月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 2023年の新疆ウイグル。

 ビジネスホテルに到着すると空港のようなX線ゲートで手荷物検索。街中を歩くと警官の数が異常に多く、交番のような警察官詰め所が数百メートルおきにあり、安ホテルに泊まろうとすると人民警察の職務質問を受けなければならなく諦める。モスクの写真を撮ると、どこからともなく警官が現れて削除させられる。監視カメラはほぼすべての店舗の入り口と電柱に備え付けられていて、タクシーの中ですら撮影、盗聴されている。
 ウイグル人たちは決して本心を話さない。誰が政府と通じているかわからない、疑心暗鬼。日本の戦中の隣組のように互いに監視し合う世界。

 新疆ウイグルでは強制収容所のことなど聞けるはずもなく、隣国ウズベキスタンへ。そこで強制収容所からの生還者に話を聞く。その話は悍しいものである。

 しかし、隣国でもまた日本でも「本心」を語れないウイグル人がたくさんいる。彼らの家族や一族が新疆ウイグルにいる場合、ウズベクでも日本でも彼らが何かを話す、何か行動すると全てが中国政府に筒抜けで、その家族や一族に被害が及ぶ。そんなことが本書で語られる。

 2023年の中国は、オーウェル「一九八四年」を凌駕する監視社会だった。著者は自身は「親中」でも「反中」でもないという。現在の中国政府のウイグルに対する統治について「こうするよりほかにないかもしれない」と思うことすらあると吐露している。

 しかし、僕は怖い。

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2025年09月22日

Posted by ブクログ

ジョージ・オーウェル『1984』を地で行く世界で、全体主義社会の怖さがありありと伝わってきて凄い本だった
かといって反中に偏りすぎず、極力市井の声を聞こうとしてて信頼して読めた

ガザやウクライナもそうだが、国というシステムだけでは限界なんだろう

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2025年09月13日

Posted by ブクログ

中国という国の恐ろしい実態にかなり迫った本だと思う。新疆在住カザフ人の何も語らない態度も、その恐ろしさを証明しており、より想像力をかき立てる。街中いたるところに居る警察官、各所に設置された監視カメラとその背後でモニターしている要員など、相当数の人数を配置してまで、反政府の動きを徹底的に抑え込まなければならないほど、占有領土にこだわっているのだろう。少数の証言からではあるが、中国が全力で否定する収容所の実態を察することができる。国家体制に反するものを破壊し、徹底した監視、拘束、拷問で自由な言論を封じ、習近平というビッグブラザーを擁するこの国はまさに、『1984』で描かれたディストピアそのもののようだ。

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2025年11月28日

Posted by ブクログ

「監視」この効果は我々が考えるより余程絶大だ。街中に張り巡らされた監視カメラ、配置された警察官、タクシーの中でさえ会話は録音されている。モスクは破壊され閉鎖され、同胞達は理由もなく次々と収容所へ送られそこでは我々が思うような過激な拷問すらないものの、狭く不衛生な環境でいつ解放されるかもわからないままに拘束され、いとも簡単に衰弱していく。語らないこと、いや、考えないこと、これが最も肝心なことだ。こんな単純なことに気付けないことが、私の置かれている状況が彼等のそれと余りにもかけ離れていることの何よりの証明である。

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2025年09月20日

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