秋尾沙戸子のレビュー一覧
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なぜ日本がここまで親米国になったのかについて、終戦後の占領から読み解くもの。主に現在の六本木、青山、原宿、渋谷、代々木あたりに存在した占領軍(=米軍)の様々な施設とその関係者を丁寧に取材し、米国式の生活や文化がいかにその後の日本人に影響を与えたかがよくわかる。本のタイトルにもなっている「ワシントンハイツ」とは、米軍の将校らが住んだ団地(というより「町」)で、そこから発信される庭付き住宅、休日のレジャー、スポーツ、ジャズやダンス、生野菜を食べる習慣、大量生産大量消費を美徳とする考え方などが、自由な生活に飢えていた日本人にあっという間に広まった様子がよくわかる。実はかなり政治的・軍事的な意味合いも
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戦後日本のアメリカ化の原風景を描いた前著『ワシントンハイツ』が読み応えがあったので、著者買いした一冊。今回のテーマは、日系二世のジャズマンであり、後に日本文学の教授になったジミー・アラキを通して描いた 戦中戦後の日本と米国の姿。
読む前の期待は、やはりジャズの部分。実際、渡辺貞夫、北村英治、ジョージ川口、と言った日本ジャズ界のビッグネームが随所に登場してきて、彼らに大きな影響と手ほどきを施したくだりを読むと、アラキの存在の大きさがよく分かる。
でも、全体を通して浮かび上がってくるのは、日系二世のひとつの生き方と、そうたらしめた当時の日米の状況。ジャズの道で生きる選択肢もあったアラキがそれを選ば -
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六年に及ぶ取材で戦後の原風景を描いた文庫500ページ超の力作。
タイトルは『ワシントンハイツ』となっているが、それに触れているのは一部に過ぎず、むしろサブタイトルの『GHQが東京に刻んだ戦後』の方が本書の内容をよく表している。「洗浄野菜販売店」第一号として紀ノ国屋に触れたのはまだ予想の範囲内だったが、白洋舎、ジャニーズが出てくるとは…。東京大空襲直後の表参道の様子、アイゼンハワー大統領来日中止の背後にいた諜報部員など、どれも豊富で丹念な取材に裏打ちされていて読む手を止められなかった。
著者は米国による占領を是と考えたのか非と考えたのかという観点で考えると、その軸は少しぶれている印象がある。でも -
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ネタバレ本書は日系アメリカ人ジェームズ・T・アラキの評伝。太平洋戦争で強制収容された一人であり、陸軍情報部日本語学校の教官。惜しまれつつ除隊し、戦後日本にビ・バップを伝えたJAZZ奏者(ジミー荒木)。そして古典学者の顔も持つ。驚いた。
有刺鉄線を経て合衆国に忠誠を誓い陸軍へ。敗戦による来日後、昼は連合国翻訳通訳部、夜はジャズメンとなる。日本人ミュージシャンたちは、フレンドリーなアラキを敬愛した。軍でのエリートコースも保障され、高名な楽団からの誘いもあったが、別の道を選ぶ。
アラキが選んだのはUCLAバークレー校で日本中世文学を学ぶ道だったのである。信長で有名な幸若舞をおいかけ、研究は能、文楽、芭蕉 -
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京都にほぼ空襲の被害がなかったのは、原爆投下ポイントとして挙げられていたからである。
しかも、何度も却下されながらも、執拗に復活させた馬鹿者がいた。
もっとも結果的に京都が爆撃ポイントから外されたのは事実で、そこは「古都」についてのギリギリのリスペクトがあったのかもしれないが、何も感謝するポイントではないと思う。彼らは、原爆も、焼夷弾空襲も、躊躇うことは一切なかった。
米国による占領は、「マシ」ではあったがマシな対象が、あそことかあの辺ていうだけで、たかが戦争に勝ったくらいで、なぜ相手の文化を破壊する権利があるのか。明らかな戦争犯罪ですらない。
神社の神域にゴルフ場を作るってな、どういう了 -
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20歳をいくつか過ぎた頃に勤めていた事務所は青山にあった。通勤
途中で前を通る店舗が気になっていた。ある日、勇気を出して店内
に足を踏み入れてみた。
カルチャーショックだった。スーパーマーケット「紀ノ国屋」は、それまで
知っていた大手スーパーとは何もかもが異なっていた。なんだ?この
品揃えは?こんな野菜、見たことないぞ。この果物はなんだ?
面白くて、珍しくて、商品を次々とカートに放り込んで行ったら会計が
1万円を超えていたのを覚えている。ただ、その金額を「もったいない」
と思えないくらいに、店内は私にとってワンダーランドだった。
このスーパー「紀ノ国屋」も太平洋戦争敗戦