ジョン・クラカワーのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ノンフィクションを専門に書くライターはそう多くはない。まずノンフィクションはフィクションに比べて金にならない。売上や映像化などによる派生収入が得られる可能性はフィクションに比べて小さい一方、取材に要するコストは大きい。
だからこそ、私は優れたノンフィクション・ライターは最大限の賛辞が与えられてしかるべきだと思っている。そして、現存するノンフィクション・ライターの中で、最も私が信頼するのが著者、ジョン・クラカワーである。
私が彼を知ったのはアメリカのカレッジ・フットボールチームによる性虐待事件とそれを隠蔽しようとする地方都市の力学を描いた『ミズーリ』においてであった。一方で彼自身の作品からすると同書はやや異色である。彼の出自は山岳ルポライターであり、彼の名を一躍有名にした3作目の『空へ』は、たまたま同行したエヴェレスト登山パーティで巻き起こった遭難事件を題材としたものである。人間の限界を超えた雪山で、どのように人が亡くなっていくのかというリアルをこれほどまでに感じさせてくれる文章というのは、この世界においてそうそうないだろう。
前置きが長くなってしまったが、本書は著者のデビューまもない時期に書かれた10の断片を寄せ集めた1冊である。そうした特性上、10のテーマは全てが登山に関するものではなく、プロサーファー、深い洞窟に潜り未知の微生物を探し求める科学者など多岐に渡る。それでも、その全ての共通するのはタイトルにあるような”自然”そのものであり、どのようなテーマであってもそこに”自然”の要素が絡む限り、一級の読み物を構築できる著者の手腕が発揮されている。 -
Posted by ブクログ
1996年エベレストで起きた大量遭難死事故の現場に居合わせたルポライターが書いた実話である。
実際に何人もの人が死んでいるため、この表現は不適切ではあると思うが、とても面白い、というのが正直な感想。
ハラハラドキドキでページを捲り、結末を知っているがゆえに、死に繋がる悪手の判断をする場面では、天を仰ぐことが何度もあった。
死が目前にきている極限状態であっても、人は他人のために行動する、そのことが胸を打ち、感動する。
事実、ガイドのロブホールは、顧客(仲間)を見放して下山していれば、生きて還ってきていただろう。
だが、それを選ばなかった。
複数の隊が同じ日に頂上攻撃を行い山頂付近で渋滞し体力を消耗したこと、ライバルの公募隊に負けたくないという気持ち、前年に山頂目前で撤退したダグハンセンへのロブホールの同情、いろいろな要素が重なり、この遭難事故は、起こるべくして起こったことが分かる。
登場人物の性格や背景や関係性が詳しく書いてあるため感情移入しやすく、エベレストという過酷すぎるほど過酷な環境も詳細に描かれている。
人間ドラマとしても読み応えがあるし、エベレスト登山とはどういったものかを知るためにも非常に良い本だと思う。 -
Posted by ブクログ
○感想を
手にしてから完読するまで約3ヶ月かかかった。それは、中断することも多かったから。
人の一生は短い。
彼は24年で幕を閉じた。
名前を変え、お金も寄付し、ほぼ徒歩で歩みアラスカへ旅へ出かけた経緯や周りのエピソードなど交えたドキュメンタリーである。自然の怖さも感じるし、地球の未だ見ていない人が殆ど歩かない地に単独で入っていくことは、彼にとって勇気でもなく、自然な行為だったのだと思う。
主人公以外にも遭難したり、自然のなかで餓死していく他者も登場したが、このあたりが一番覚えていて読み進めが早かった。途中人との関わりやマックでバイトしたりして稼いだり、そうした人道的な内容もあるからリアルを感じる。バスは撤去されてしまったが、いつか機会があれば、お目にできたら嬉しい。今度は映画を観ようと思う。 -
Posted by ブクログ
大学を卒業後、ヒッチハイクを繰り返しながらアラスカへ辿り着いた青年は一人で荒野へと足を進める。結果、彼は荒野に置き捨てられた廃バスの中で孤独死し、アメリカ中を震撼させることとなる。
いったい彼はなぜ荒野へ足を運んだのか?そして荒野での廃バス生活の中で何が彼を孤独死させる要員となったのか?極めてミステリアスなこの出来事を巡って描かれるノンフィクションが本作である。
アメリカ出身の稀代なるノンフィクション作家、ジョン・クラカワーの出世作である本作では、若かりしクラカワー自身の姿が孤独死した青年に重ね合わされている点が魅力的である。かつて、若きクラカワー自身は登山を通じて自己のアイデンティティを確立しようともがいていた。その姿は孤独死した青年と重なり、”荒野への冒険を通じて自己のアイデンティティを証明する”のが青年の冒険の目的だったのではないか、というのが冒頭の問に対するクラカワーの仮説である。
しかし、青年の失敗はアラスカという極めて過酷な自然に対する甘えであった。刻々と変わる自然状態の中で青年の行動圏は徐々に狭まっていき、食料も尽きる中で栄養失調と共に死を迎えることになる。青年が廃バスに残した日記には、その恐怖がありのままに残されており、読み手を震撼させる。
誰しもが若き時代に一度は考える自らのアイデンティティの確立。一人の青年は危険な登山で死の間際にまで直面するが何とか生き延び流ことに成功し、方やもう一人の青年は孤独に死を迎えることになる。その対称性が痛ましく悲しく映る。 -
Posted by ブクログ
先が気になって仕方ない気分にさせてくれる一冊でした。最後の解説で映画になっている事を知り、DVDを借りましたが、本が先で良かったと感じました。きっと、映画を先に見ていたら、主人公のバックボーンに共感できず、原作に手を伸ばすこともなかったでしょう。
心のままに生きるために選んだ道、誰にも理解されないはずの孤独な道程は、荒野を目指すクリス・マッカンドレスを温かく包もうとする人々との出会いに満ちています。さらに作者の過去がオーバーラップされることで物語の奥行きが広がり、『若者の愚かさや無知から引き起こされるくだらない事件』という、世が貼り付けたレッテルが丁寧に剥がされて行く展開に、青年時代をとうに過ぎた身であっても、クリス頑張れ!頑張れクリス!と応援せずにはいられませんでした。誰もが通る若さの時代を、これから迎えようとする方、そして過去、挑戦に踏み切れなかったがいつか、いつかきっと、と考える、諦めの悪い開拓者精神を燃やす全ての人にオススメします。 -
Posted by ブクログ
毎度感じることで、いい加減学習しろよってところですが、やっぱり途中経過がくどく感じてしまう。エンタメノンフ、殆どそうなんです。徹頭徹尾、ハラハラドキドキしっぱなしでした、みたいな作品、すぐにはパッと思いつかないかも。これって自分の感性の問題なのか、それともつまらないならそこは読み飛ばせばよい話なのか。読み飛ばしのスキルを身につければいいのかもですね。なんかもったいないって思ってしまう自分がいて、でもそのために使う時間の方が、もっともったいないんだってことも分かってたりして。難しいところです。脱線しまくりましたが、答えは何と、蓄積性の神経毒でした。ロマンを追い求める冒険心のせいとか思っていたんで、結構ハッキリした原因究明がなされたことにちょっとビックリしました。そこに至るまでの冒険録は、まあそこそこでした。