あらすじ
富と名声を求め、ビルの高さの大波に乗るサーファー。
火星の生命の謎を解くために、北米大陸でもっとも深い洞窟に潜るNASAの研究者。
生活のために命をかけてエベレストに登り、外国人が使う酸素ボンベを運ぶシェルパたち。
本能に突き動かされるままに、70歳近くになっても未踏ルートに挑みつづける老登山家……。
それぞれの理由を胸に、極限の自然に挑む人間たち。
荒ぶる自然と対峙したとき、彼らは何を考え、どう行動するのか?
そして人間と自然の関係は、時代とともにどのように変わってきたのか?
『空へ―「悪夢のエヴェレスト」1996年5月10日 』や『荒野へ』の著作で知られる、アメリカの人気ジャーナリスト、ジョン・クラカワーの、自然と人をめぐる10のエピソードを収録したエッセイ集。
■内容
イントロダクション
第1話 マーク・フー、最後の波
第2話 火山の麓で暮らすということ
第3話 エベレストにおける死と怒り
第4話 火星への降下
第5話 転落のあとで
第6話 北極圏の扉
第7話 愛が彼らを殺した
第8話 穢れのない、光に満ちた場所
第9話 フレッド・ベッキーいまだ荒ぶる
第10話 苦しみを抱きしめて
■著者について
著 ジョン・クラカワー
1954年生まれ。シアトル在住のアウトドアライター、ジャーナリスト。
元登山家の経験を活かし、アウトドア関連のルポルタージュを中心に複数の著書を発表している。
巧みな構成と情感のある文章には定評があり、日本にも固定ファンを持つ。
ノンフィクション作家の角幡唯介も、もっとも影響を受けた作家としてクラカワーの名を挙げている。
翻訳 井上 大剛(いのうえ・ひろたか)
翻訳会社、出版社勤務を経て独立。
訳書に『インダストリーX.0』(日経BP) 『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』(共訳、KADOKAWA) 『初心にかえる入門書』(パンローリング) 『世界でいちばん高い山 世界でいちばん深い海』(パイインターナショナル)など。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
初ジョン・クラカワー、短めのアウトドア系のノンフィクションルポを10話収録…いや、建築家の話はちょっと毛色が違うか、そのクリストファー・アレクサンダーの話も十分に面白いのだけど…。
特に面白かったのは、冒頭のマーク・フーの話、次生まれ変わったらサーフィンをやりたいなぁ、ドン・ウィンズロウの小説を読んで以来、ライフスタイルや取り巻く文化を含めてサーフィンが気になるところ。バブル前夜くらいからの日本のサーフ文化が歪だったので、偏見を持ってしまったのが残念、そういう意味では多分ゴルフもそうなんだろうなぁ。
ブラックダイヤモンドの前身、シュイナード・イクイットメント社の廃業に至った事故と裁判を題材にした話も身に詰まされる。自助・自己責任論は行き過ぎると危険なんだけど、他責に振りすぎるのもヒドいなぁと。
その他の話も色々考えさせられた。読みやすさと考える余地をくれるノンフィクション、名作と評判の「荒野へ」「空へ」も読んでみたい。
Posted by ブクログ
名著「空へ」「荒野へ」の著者の、魅力的な10編のエッセイ。タイトルの「荒ぶる自然と人間をめぐる10のエピソード」というよりも、「荒ぶる人間と荒ぶる自然をめぐる・・・」という感じ。
海、山、洞窟、砂漠で・・・優れた書き手なしには、人間の極限の営み、思考を辿ることはできない。
Posted by ブクログ
ノンフィクションを専門に書くライターはそう多くはない。まずノンフィクションはフィクションに比べて金にならない。売上や映像化などによる派生収入が得られる可能性はフィクションに比べて小さい一方、取材に要するコストは大きい。
だからこそ、私は優れたノンフィクション・ライターは最大限の賛辞が与えられてしかるべきだと思っている。そして、現存するノンフィクション・ライターの中で、最も私が信頼するのが著者、ジョン・クラカワーである。
私が彼を知ったのはアメリカのカレッジ・フットボールチームによる性虐待事件とそれを隠蔽しようとする地方都市の力学を描いた『ミズーリ』においてであった。一方で彼自身の作品からすると同書はやや異色である。彼の出自は山岳ルポライターであり、彼の名を一躍有名にした3作目の『空へ』は、たまたま同行したエヴェレスト登山パーティで巻き起こった遭難事件を題材としたものである。人間の限界を超えた雪山で、どのように人が亡くなっていくのかというリアルをこれほどまでに感じさせてくれる文章というのは、この世界においてそうそうないだろう。
前置きが長くなってしまったが、本書は著者のデビューまもない時期に書かれた10の断片を寄せ集めた1冊である。そうした特性上、10のテーマは全てが登山に関するものではなく、プロサーファー、深い洞窟に潜り未知の微生物を探し求める科学者など多岐に渡る。それでも、その全ての共通するのはタイトルにあるような”自然”そのものであり、どのようなテーマであってもそこに”自然”の要素が絡む限り、一級の読み物を構築できる著者の手腕が発揮されている。
知らない世界
インドア派にとって、インドアじゃなくても、厳しい自然の中に地吹雪の意志でトライしていく人々のドキュメンタリー。私の知らない世界の出来事には興味をひかれた。
特に、自分の意志でトライするのではなく、問題を抱えた子供をアウトドアの世界に放り込んで矯正させようというビジネスの事は衝撃的だった。
Posted by ブクログ
中国系アメリカ人サーファー マーク・フー 1995年
カルフォルニア ビッグウェイブ サーフィン 10mを超える波
広告塔としてのサーフィン
1994年12月23日 マーベリックス 100人とカメラの前で波に飲み込まれて死亡
レチュギア洞窟 1995年
壁に腐食残留物 微生物の有機性排泄物?
独立栄養生物 熱水噴出孔 鉱物からエネルギーを得る 火星にも地中に?
シュイナード・イクイップメント社 1986年
ティトン山脈で クライミング用ハーネス原因?の滑落死亡事故
裁判費用、保険料高騰、示談金高騰 誰かが小さなミスをした
元社員がブラックダイアモンドを立上げ
荒野療法 1995年
自然が人の魂を癒す ブリガム・ヤング大学 モルモン教
ノーススター社 63日間 800キロ 13900ドル
最小限の装備と食料で荒野に放り出す 死亡を含む多数の事故
建築家クリストファー・アレグザンダー 1985年
設計は現地で 建築を進めながら修正し続ける
盈進学園 東野高等学校校舎 大地の生と美のための建築 せめぎ合いからの創造
良い建物は生きている ゴシック様式教会 日本の寺 アルプスの山村
パタン・ランゲージ 1977年
Posted by ブクログ
自然と人との驚くべきノンフィクション短編集です。ビックウェーブを求めるサーファー、世界最高峰エベレストで働くシェルパ達、問題を抱えた青少年を荒野に放り出す更生プログラムなど、死と隣り合わせの状況が克明に書かれています。その原因は厳しい自然と人為的なものでした。
Posted by ブクログ
山と渓谷社の山の本ってとことん山!!!みっちり山!!!って感じで、正直読んでて飽きてしまうことが多い。エヴェレスト、K2、難攻不落の北壁、、、などと言われてもイメージ出来ない。土地勘ないしそこまで山詳しくないし、そもそも海外の山とか環境とか文化とか全くの異世界すぎて分からない。写真を見ても、綺麗だなぁーとしか思えないし、そもそも知らない山が多すぎて調べるの疲れるし、、、。
ただ、この本はとことん山って感じの本ではなかった。
なんか山と渓谷社発刊の新聞の社説って感じ?笑笑
アウトドアに関連した社会問題全般を取り扱う本で、決して登攀だけに焦点を当てたものではなかった。私的には集中力が続きやすくてGOOD。またなんせ火山の噴火や荒野療法など興味の湧く内容ばかりだった。
ジョン・クラカワーが一編を読者を物語に引き込むように文をとても綺麗に構成していたのも魅力の1つだと感じた。一番最初に時系列が現在から始まって、そこに至るまでの過去に遡る。最初は意味のわからなかった現在の物語に段々と色が付いていく感じ。そして最後はその現在からこの文が書かれた瞬間まで進む。
最後の章にあった、『苦しみを抱きしめて』。
意味のないことに意味を見出すことの大切さを改めて実感したように感じた。