ジョン・クラカワーのレビュー一覧
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ネタバレ初ジョン・クラカワー、短めのアウトドア系のノンフィクションルポを10話収録…いや、建築家の話はちょっと毛色が違うか、そのクリストファー・アレクサンダーの話も十分に面白いのだけど…。
特に面白かったのは、冒頭のマーク・フーの話、次生まれ変わったらサーフィンをやりたいなぁ、ドン・ウィンズロウの小説を読んで以来、ライフスタイルや取り巻く文化を含めてサーフィンが気になるところ。バブル前夜くらいからの日本のサーフ文化が歪だったので、偏見を持ってしまったのが残念、そういう意味では多分ゴルフもそうなんだろうなぁ。
ブラックダイヤモンドの前身、シュイナード・イクイットメント社の廃業に至った事故と裁判を題材にした話も身に詰まされる。自助・自己責任論は行き過ぎると危険なんだけど、他責に振りすぎるのもヒドいなぁと。
その他の話も色々考えさせられた。読みやすさと考える余地をくれるノンフィクション、名作と評判の「荒野へ」「空へ」も読んでみたい。 -
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今や30年近くも経ったことに個人的に感慨深い1996年のエベレスト大量遭難事故。本書はアメリカのジャーナリストが参加したエベレストの商業登山で、同じく商業登山の別な隊も合わせて何人もの死者を出した事故の記録。2隊の隊長たちも亡くなったし、死者の中には日本人難波康子さんも含まれていたため当時大きいニュースに日本でもなっていた。登頂に成功した登山家たち含め8人もが一度にそれぞれの事情で亡くなっていく様は読んでいて非常に辛い。
私自身途中まで一緒のコースをこの翌年に歩いたので多くの地名に馴染みがあり感慨深く読んだ次第。最初に読んだのは医学部生時代。私は同期2人と一緒にトレッキングで、エベレスト登山家たちのたどるベースキャンプルートからは反対方向に向かい、カラパタールという氷河の観察場所まで登った。カラパタールは5600m弱の高さだがそこにいくまででも高所順応に沢山の時間をかけた。エベレスト山頂は8448m、そこに辿り着くなんて本当に信じられない。ま、カラパタールへのトレッキングなんてのは特段の技術も要らないのだが、山ってのは8000m級では本当に厳しいのだろうとほんの少し想像できる高さではあったな…私が行った時は96年と違って雪が全然なく、氷河もただの渇いた谷だったけど…
さてこちらの思い出はともかく、この本は全てが実名で、エベレスト登頂がこの当時ですでに商業化されていること自体興味深く、参加者それぞれが個性的で、彼らの人となりを知ることだけでも面白い。またエベレスト登山を支える現地シェルパ族の生き方にも考えさせられる。軽く検索してみると今も60,000ドルだから当時とあまり変わらない値段で登れるのね。もちろん円安だけど。
電子化にあたっては年数も経ち、当時の論争の記述もアップデートされているのが良かった。議論になったのは、著者とは別の隊にいた世界的登山家アナトリ・ブクレーエフというロシア人の取った行動についてだ。彼は超人的体力を持ってガイドとして参加、著者は彼が酸素を吸入しないで登山していたことが悲惨な結果を招いた要因の一つと批判したのだ。ただブクレーエフは人命救助にも必死であたり現に何人かを救助していて、本書への反論を書いてもいる。何が真実とえるのか、どちらに説得力があるのか当時は判定しづらかったけど、今回本書の著者クラカワーの最終反論を読んだ上ではクラカワーの方に分があるかな…ブクレーエフの反論本も以前読んで彼の言い分や活躍ぶりにも感銘は受けたけど。最近アップされたYoutubeの動画によれば、難波康子の夫は彼女が死んだ翌年ブクレーエフにネパールで会い、感謝を伝えたという。ブクレーエフは本書の事故から間も無く、自身も遭難死してしまったし、個人的には事故自体複合的な要因が重なっていて、単一の誰かによる責任とはいえない以上、今から誰かを批判するよりは、さまざまな局面でどう動くと良かったのか、2人の論争も含めて教訓を得るのが正しいのだろうと思う。 -
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1996年5月にエベレストで起きた大量遭難事故の詳細。
筆者自身が登山家であるため、山での描写が非常に詳しくリアルで、自分も作者と同じ場所にいるような気持ちになった。
悲劇が待っていることはわかって読んでいたが、先が知りたくて一気に読んでしまった。
この本を読んだらエベレストなんて絶対に登りたくない、と思うので、いや、読まなくても、簡単な山ではないことは知っているので、エベレストに登頂したいという人が数多くいることが理解できないが、読んでいる最中にインターネットで検索してみたら、今でも数多くのエベレストへの商業登山ツアーが存在することを知り驚いた。
冒険ではない登山を登山と見なさない人たちも、今もたくさんいて、それでも死亡事故のニュースはあまり聞かなくなったので、商業登山もいろいろ改善されてきているのだろう。 -
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デスゾーン、映画エベレストと合わせて非常に読み応えがかった。
印象的だったのは、クラカワー自身のアンディへの無念
アンディ自身は実際に非常に追い込まれていて、チームとしたらクラカワーはヘルプに回れる側ではあっただろう。
また、ロブがダグに時間切れを告げられなかったのは、情、といっていいだろう。
あのシチュエーションで頂上を目前に引き返せるだろうか。
商業隊というビジネスモデル自体にどこかに無理があったのだろう。そして破綻したビジネスモデルは悲劇を招く。
恐らく、顧客が多すぎた、値段が安すぎたのは言えるだろう。
死亡率を考えると、マンツーマン、成功報酬型が現実的だった? -
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数々の登山家を魅了してやまない世界最高峰のエベレストを舞台に、登山のプロフェッショナルでなくても多額の金さえ払えばエベレスト登頂をアシストする公募登山隊の実態を取材するために登山に同行した著者が目にしたのは12人もの死者を出し、エベレストの登山史史上で最悪とも言える悲劇であった。
著者のジョン・クラカワーは自らも登山を愛好するルポライターとして、公募登山隊の実態を把握すべく、一人のメンバーとしてエベレスト登頂に参加する。夢のエベレスト登頂を目指して集まった多国籍なメンバーや、同時期に登頂する他の公募隊たちとベースキャンプなどでジョン・クラカワーは親交を深めていく幸福なシーンが前半は続く。
彼らが悲劇に見舞われるのは後半、ベースキャンプを離れて山頂を目指す工程である。予期せぬ悪天候の中で一人、また一人と倒れていき、ジョン・クラカワーが参加した公募隊で生き残ったのは彼を含めて半分のメンバーのみ。空気の薄さ、マイナス数十度になる寒さと猛吹雪の中で人がどのように死んでいくのかが恐ろしいほどリアルに描かれていく。
そして結果的に下山できなかった半分のメンバーを残して生き残ったクラカワーらは残りのメンバーらを見捨ててしまった、という傷跡を一生背負うことになる。
極限状態の中で自らの生命を確保するためには、他者の生命を見過ごさざるを得ない。そうした倫理の極点に迫られたときに人は何を思うのかがここまで痛切に描かれたノンフィクションというのはないだろう。 -
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ジョン・クラカワー『エヴェレストより高い山 登山をめぐる12の話』朝日文庫。
ジョン・クラカワーのデビュー作の復刊。個性的なクライマーの様々な挑戦を描いた山岳エッセイ集。
まるで自分が高山の難所に身を置いているのではないかと錯覚してしまう程の切れ味のある描写とウイットに富んだ文章。読んでいて手に汗握る12編の山岳エッセイ。
『アイガーの夢』『ギルーー伝説の男』『ヴァルディーズの氷』『テントに閉じ込められたときは……』『タルキートナの飛行機野郎』『クラブ・デナリ』『シャモニの休日』『キャニオンリング』『エヴェレストより高い山』『双子のバージェス』『K2の不幸な夏』『デヴィルズ・サム』を収録。解説は角幡唯介。 -
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1996年5月10日エベレスト大量遭難事故。
映画『エベレスト 3D』を観て以来、この件に釘付けになった私。その第一級資料と言える本書をようやく読み終えた。
ちなみに、とにかく登場人物が多いので、映画を2回観てwikiを熟読してなかったらまったく展開について行けなかったと思う。
私が最も驚くのは、この極限状態において、よくぞ皆人間性を失わずにいられたということ。自分の身に置き換えて考えずにはいられない。自分だったらどうだろうか。「こんなデスマーチが続くくらいなら、いっそ死なせてくれ」「この崖から一歩踏み出しさえすれば楽になる」「このままここにほうっておいてくれ」そう、きっと生きることを諦めてしまう。
また、他人を心配する余裕も皆無だろう。隣で人が倒れようと、それはその人のこと、自分にできることは何もないと歩を進める。疲弊して感受性の摩耗しきった神経では特にそうなってもおかしくない。
逆に、誤解を恐れずに言えば、助けられなかった命に対してシェルパを含む登攀スペシャリスト達が取り乱す様子が意外であり、印象に残る。そういった人達は、人の死にも慣れているのではないかと勝手に思っていたからだ。
こんな感想が出てくるのは、私がフィクションの中の死にしか触れたことがなく、リアルに生死を感じたことがないという証なのかもしれない。
それにしても山の頂というものは不思議だ。ヘリコプターのような文明の利器が使えない。到達するには、己の肉体で挑戦するしかない。こんなの、南極や海底や宇宙とも違う。 -
Posted by ブクログ
大好きなんですよ、ジョン・クラカワー。
あんまり私の周囲で言及されることないですが。
沢木耕太郎が好きな人はきっと好きだと思うなぁ。
文章がとにかくイケメンよ。もう読んでて目がハートです。
今回のこの本はサーフィンのことや建築家、子供を荒野に放り込んで更生させるプログラムで起こった死亡事故(1件ではないのが怖すぎる)などなど、題材は多岐にわたっているのだけど、作家ご本人が山に登る人なので、やっぱり山、クライミングに関する話の臨場感がとにかくすごい。
特に、アウトドアウェアのパタゴニアの親会社シュイナード・イクイップメントが破産申請に至るきっかけになった事故の話は、文字だけなのに、まるでツアーに参加していて滑落事故を目撃したかのような恐怖を感じてしまった。
自然と人間のかかわりの話ばかりなんだけれども、すべての話に、お金にまつわる不穏な何かが大きく影を落としている。読後はすべてほんのり苦い。
あー、次こそは「空へ」を読もう。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ人間や社会にまつわるすべてのしがらみを断ち切って自然の懐に呑み込まれたい…程度の差こそあれ、誰しもの中に存在する(あるいはした)であろう夢想を極端な形で実行に移し、結果として望まぬ最期を迎えてしまったある若者の生が、自身も卓越した登山家である著者の取材と考察を基に紐解かれている。
私は個人的に、悲劇の主人公であるクリス・マッカンドレスが取った、文明から隔絶された森の中を目指すという衝動とその背景に共感を覚えるが、彼のものと態様こそ異なれど、同種の源泉から生じる渇望を身内に抱え、鬱屈するティーンエイジャーは古今東西において遍在しているはず。
その意味で、決してクリス・マッカンドレスの生涯は特異なものではなく、それ故本書も普遍的であると言えるだろう。
野生に還りたいという強い行動指針を持ちながら、例えば"飛行機はあかんけど車移動はええんかい!"と思わず突っ込んでしまいたくなるような、いわゆる"ぶれ"をも他方で体現しているという、甘さと矛盾を同居させた存在であることもまた、彼がリアルでヴィヴィッドな人間として読者に迫る理由であると思う。
子に先立たれる親というのは辛いものだ。
「楽しみをもたらしてくれるのは人間関係だけであるとか、人間関係を中心にそれを期待しているとすれば、それはまちがいです。」