唐木田みゆきのレビュー一覧
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理科系が苦手な人はタイトルを見て本書を避けようとされるかもしれないが、理科系が苦手なぼくでもシリーズ一作目『生物学探偵セオ・クレイ 森の捕食者』ともども本作をしっかりと存分に楽しめたことを保証します。前作よりも理科系とかハイテク数学系などの場面に多くページが割かれている印象はあるものの、それらがストーリーや捜査に重要な小道具の役割を果たしてくれること、またそれら小道具の斬新さ、アイディアの豊富さで、理系云々以上にミステリー・ファンの好奇心をすごく掻き立ててくれるので是非ご安心頂きたい。
小道具ばかりではなく、セオ・クレイの持つ理系学者風の一風変わったキャラもなかなか読みどころである。譲歩せぬ理論。他社を寄せ付けぬ観察眼。犯罪現場や関係する人間たちに対するこだわりと探求力。推理力に働く強い専門性。このあたりが理系学者畑の人間を小説として活かしている個性である。しかし、それを上回るのが人間洞察力。正義感。無茶とも言い換え得る勇気。勝気。怒り。愛情。
とりわけ本書では、テーマとなる原罪として、アフリカで頻発する色素欠乏症の人たちへの迷信による迫害という点に独特のものがあり、国際政治力学により隠蔽される人や犯罪、情報機関や政府による汚職、隠蔽、証拠隠し、証人隠し、等々、セオ・クレイの怒りの向けられる矛先には事欠かない。捜査の過程では、科学から最も遠ざかるブードゥー信仰、似非呪術ネットワークなど、黒魔術的側面に生きる人々も登場する。
あらゆる意味で前作を凌駕するスケールと謎の深さとセネ・クレイの激怒の強さが感じられる。追跡へのこだわりとともに主人公の脱線は激しさを増すばかり。法律すれすれ、いや時には違反行為。それもとんでもなく危険性のある手段を取ってでも、この事件の犯人を駆除しようと命を賭ける。徹底した追及精神と、責任感の強さには狂気さえ窺える。
ちなみに前作未読の方は、序章の段階でネタバレがあるので、前作から順番に読まれたほうが良いかと思われる。主人公の職場や境遇が前作とは変化しており、この先もセオ・クレイの仕事や立場はドラスティックに変化してゆきそうだ。徐々にスケールアップしてゆきそうな予感が見られる本シリーズ。フリークささえ感じさせるほど熱血漢で、しかもどこかオフビートな主人公。若き書き手による若きヒーローは、さらに新たな地平に目を向けてゆくことだろう。目を離せない。まさに油断のならないシリーズなのである。 -
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トーマス・エジソンとニコラ・テスラ(ウェスティングハウス)の直流交流戦争に立ち会った弁護士が主役の話。
章の巻頭に格言が採用されているけど、私はエジソンのものが好きだ。
おそらくエジソンは大衆受けも含め、処世術に物凄く長けている。発明体制の発明が凄い。
対立するニコラ・テスラは凄く変わり者で孤独を愛する。幻視能力でもあるような、天才的な発明能力があるが、純粋過ぎてアグネスの庇護欲をかき立てたような、不思議な魅力を放っているな、と事故直前の研究室のシーンで思った。
ウェスティングハウスやモルガンなど実業家、投資家も出てくる。彼らと同時代に立ち会ったらどうだろうな、と想像出来るし、知能戦もおもしろい。
それぞれの個性の違いも理解でき、巻末にフィクション部分を明らかにする誠実さ。面白い歴史小説だった。
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久しぶりにゴリゴリのクローズドサークルが恋しくなって選んだ作品。
孤島が舞台なのでクリスティを期待してたけど、読み進めるうちに印象は変わった。
犯人も被害者すらもわからないまま進む構成は、パット・マガーの作品を思い出した。
ただ、マガー作品の都会的でカラッとした雰囲気とは対照的に、この作品は現代的なジメジメとした人間関係が渦巻いている。
中盤あたりは、思わせぶりな展開の連続に「だから一体何があったのよ!」と、さすがに引っ張りすぎにも感じたけど、語り手がテンポ良く切り替わるので、飽きずに一気読みした。
凝った構成とクローズドサークルの雰囲気は好みで、ミステリとしての面白さは十分に味わえた。
ただ、近年の作品に多い陰鬱なテイストが自分には少し重くて、読んでいて楽しいというより、気持ちが沈んでいく時間の方が長かった。
そこは好みが分かれるところかもしれない。 -
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ジェス・Q・スタントさんのコージーミステリーですね。
ジェス・Q・スタントさんは、インドネシアとシンガポールで育ち、現在は夫と2人の娘とともに
ジャカルタ在住。子供から大人まで幅広い年齢層を対象に小説を執筆。
本書は2024年MWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞最優秀ペイパーバック賞を受賞されています。
ワシントンのチャイナタウンの一角に古びた中国茶専門店がある。
ある日の朝、このティーハウスのオーナーのヴェラ・ワン・チュウチュウが二階にある住居から店に降りてみると、なんと死体が転がっていた。
普通なら気が動転して、恐ろしいものだか、ヴェラは刑事ドラマが大好きな六十歳。
警察を呼ぶ前に、勝手に自分で捜査を開始してしまう。パワフルなヴェラは、殺人事件だと決めつけて、「犯人は必ず現場にやって来る」と思い込み、探偵気取りで謎解きを始める!
ヴェラはSNSで、犯人をおびき寄せる餌をばら蒔くと、普段はお客が皆無になった店に、若い男女が別々にやって来る。そして店を覗く赤ちゃんを抱えた女性も現れる。暫くして死体の双子の兄まで訪ねて来た。
この中に犯人は必ずいると決めつけて、ヴェラは行動に移すが?
すこぶる面白いですね。
警察を小馬鹿にして、ユーモアとペーソスが物語を飽きさせません!
ヴェラのパワフル振りに翻弄されるキャラクターたちの慌て振りと、しんみりとした人間劇に引き込まれます♪
それぞれのキャラクター別に物語が進む構成も好奇心を揺さぶられますね!
最後はどんでん返しと満足のいく大団円なのが嬉しいですね。
二冊目は執筆が終わっているそうですが、翻訳が待ち遠しいです(=゚ω゚=) -
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ネタバレサンフランシスコのチャイナタウンで中国茶専門店を営むミセス・ヴェラ・ワン・チュウチュウ(60歳)。お店はお客が常連客一人しか来なくて寂れていた。ある朝、店で死体が見つかり、ヴェラは犯人を捕まえようと容疑者を絞り込む。
警察が到着する前に、死体が握っていたUSBメモリーをくすねたり、死体の周りに線もひいたり、とんでもないおばあちゃん!正直なところ、ヴェラの傍若無人・猪突猛進ぶりについていけなくて、読むのをやめようかと思ったけど、堪えて読み進めれば、なんと面白いことか。
ヴェラが考える容疑者の若者4人とはすっかり親しくなってしまうし、もうよく分からない展開に。
容疑者の若者たちは、死亡したマーシャルの何かしらの被害にあいトラブルになっていたため、皆、自分が犯人として警察に捕まらないか、ひやひやしてる。
読んでいてヴェラが作る手料理や中国茶がとても美味しそうで気になります。
結局、犯人は想像もつかなかった人でした。
ヴェラの強さばかりでなく、弱った姿も描かれていて、はじめにヴェラに抱きた不快感が飛んで行きました。
続編も出版予定なので、また邦訳されるといいですね。 -
Posted by ブクログ
サンフランシスコのチャイナタウンにある「ヴェラウォンの世界に名だたるティーハウス」 "Vera Wang’s World-Famous Teahouse"の上階に住む、孤独な老婦人ヴェラ・ワンが店内で発生した事件の解決に挑むコージーミステリーの傑作。警察の捜査に不信を抱くヴェラが容疑者の4人の若者たちと接触する過程で、彼らと事件の被害者との過去の因縁を知らされる。殺人事件そのものより、独りよがりで、世話好きで、思いやりがあり、愛にあふれたヴェラとの接触により若者たちの心が変化していくプロットを堪能できた一冊でした。
「小さな仕事」なんてものはないのよ。 それから、そんなばかっぽい口調で言うのもだめ。弁解がましいったらない わ。わたしは小さな仕事をしているばかな女ですって言ってるみたい。だめよ!」人差し指があがってジュリアの顔に剣のごとく向けられる。「堂々とこの仕事をしにいきなさ い」There is no such thing as 'small job.' And don't say in that silly tone, oh so apologetic, I am just silly woman having a small job. No!" Her index finger shoots up and points at Julia's face like a sword. "You go and do this job proudly.
「実現しない夢ほど人生で悲しいものはないわ」 "Unrealized dreams are one of saddest things in life"