川島隆のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ朝起きたら、自分が虫になっていた。
これほど異常な始まりなのに、本当に恐ろしいのは虫になったことではない。
グレゴールが働けなくなった瞬間から、家族の中で少しずつ「不要なもの」になっていくことだ。
彼はそれまで家族を養い、自分を犠牲にして働いていた。
だからこそ、役に立てなくなったあとの扱いがひどい。
最初は心配していた家族も、やがて彼を厄介者として見るようになる。そしてグレゴール自身も、その視線を受け入れるようにだんだん小さくなっていく。
これは虫の話ではないと分かってしまうから、読んでいて苦しくなる。
病気になったとき、仕事を失ったとき、誰かの期待に応えられなくなったとき。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ良かった。あとがきや解説も含めて非常に後味の残る作品だった。
「変身」が、「一匹の巨大な虫」が何を指しているかは各々に任せられているとして、性役割的の歪さを女性の立場から描いた文章は現代では流行っていて非常にありふれたものになりつつある今、男性の立場からの生きづらさのようなものを描いたものは受け入れられづらくなっている印象になる。
いや逆なのか。男の視点からしか描かれていなかったからこそ、現代の潮流が女性の視点に寄っているみたいなことなのかな。
とにかく、すごく新鮮だった。
だからこそ村上龍は「すべての男は消耗品である」と述べた上で消耗品として生きていくことの覚悟を説いたわけで。
消耗 -
Posted by ブクログ
ネタバレみなさんお久しぶりです。観想的やすこです。本書はホモ・サピエンスが築き上げた社会の不条理さや冷たさをグレゴール・ザムザの悲しき人生の末路を描写することで皮肉的に表現しているのです。グレゴール・ザムザは家族想いの健全な男性でした。両親と妹との4人での生活を支えるため毎日懸命に働いていました。しかしながらそんな彼が醜い蟲へ「変身」した途端に彼の家族もまた変わってしまったのです。家族たちは彼へと冷め切った目線を向けるように「変身」を遂げるのです。わたくしやすこ的解釈としては本書のタイトルはグレゴール・ザムザの穢れた蟲への変身を指しているのではありません。身の回りの状況が変わった途端に、態度をくるっと
-
Posted by ブクログ
この作品には、なんとか社会に適応しようとして、無理をすればぎりぎりそれができてしまう人間の苦しみが書かれていると思った。
無理をしての成功と平和だから、それを続けるも地獄、ドロップアウトするも地獄。ドロップアウトした自分には価値がないと恐れていた。
本人からすると綱渡りだが、傍から見ると、大丈夫な人にしか見られない。無理して得ている成果も当たり前のこととされ軽くなっていく。
絶望名人のカフカは、出世に興味がなかったけど、勤めに出ればわりと仕事はできて、出世コースだったと知って、やっぱりという気がした。
未来へ向かう家族に焦点が当たる終わり方が残酷ですごくいい。
小間使いのお婆さんは理解者だ -
Posted by ブクログ
村上春樹「海辺のカフカ」を読む前に、1冊くらいカフカを読んでおこうと手を伸ばした。
本編100ページに対し、解説70ページ。
噂に違わず、難解なのかと構えたが、意外と読みやすい。
グレゴールは朝目覚めると、虫になっていた。
ベッドから降りる。シーツをかぶる。壁を這い回る。本人は真剣そのものなのに、笑える。
だが全般に漂う、閉塞感と絶望感。カフカの特徴らしい。
現在のチェコに生まれた比較的裕福なユダヤ人で、ドイツの女性と婚約を二度(破棄も二度)したカフカ。ナチスドイツも出てきた時代の、サラリーマン作家。そういった背景も含めて触れたほうがいい作品だと思いました。
三部構成のうち、二部はやや -
Posted by ブクログ
ネタバレグレーゴル・ザムザは巨大な虫に、変わってしまった。
虫に変身したことで、厳しい労働環境、家内で自分が働かなければというしがらみから解放されたようにおもわれた。しかし、「…ふたたび仕事にとりかかった(102)」から、虫となった今では生きる行為が肉体労働に値するほど大変である状態となり、解放されるどころか肉体的にも精神的にも不自由な、閉鎖的な狭い檻に閉じ込めまれてしまっており、字面での労働も虫としての働きも本質的には同義であるようなふうにも思えた。
商人として海外を飛び回わった過去と、虫として部屋の中を動き回っている今との、彼の周りに広がる世界がコントラストになっており、逆説的にこれまでの商人とい -
Posted by ブクログ
私にとって文学は、自分の感受性を鍛えてくれるもの。
一読するだけでは説明の列挙でつまらないと感じてしまうが、解説や他者の感想を読むと、現実社会とのメタファーに気付けたり、「そういう意味だったのか」「この文章を読んでそういう風に感じる人がいるのか」と、自分の発想に無いもので予想もしていない角度から殴られる感覚が気持ちいい。
この本は年齢や立場、読む時の自分の心情、誰に感情移入するか等で印象がガラッと変わる作品。
読み手が「虫」を「病気」「無職」「介護」「鬱」「依存」...何に置き換えるか。
物語の根幹である「虫」について「どんな虫なのか」「どうして虫になってしまったのか」あえて説明しないこと