なんか、面白いんだけど、理解できないところも多く、だけど面白いと感じる、面白い本。
原題は「Helgoland」で、これは量子力学の発祥に関連がある島の名前である。
この島から始まる量子物理学の系譜から始まり、不確定性、量子もつれ、相対情報などの話に至る。途中、レーニンとボグダーノフの議論や、ナーガ
...続きを読むールジュナの空の概念まで入ってくるのが、面白い。
日本語版のタイトルである「世界は「関係」でできている」は本書の内容を端的に表しており、結論としてはこのタイトルに尽きる。
以前、仏教関係の書籍を読んでいた時に、物体を見るときに、我々の目に光子が飛び込んでくるのと同時に、我々も見る対象に影響を与えているという趣旨の話があった記憶があるのだが、相互作用により世界が形作られているという話と頭の中でリンクした。
書籍の最後の方では、心理世界と物理世界の関連についても話が及んだが、この辺はほぼ内容についていけず。
全体としては、同じ著者の「時間は存在しない」よりは理解できた気がする。
何度か読み直してみると少しづつ理解が進むかもしれないので本棚に入れておこうと。
本論とは関係ないのだが、脳が見るときの信号の流れも興味深かった。目に光が入り、信号が脳に達すると思われがちだが、実際には脳から目に向かって信号が出ているとか。脳は先に予想される映像を描き、目から入ってくる情報と整合させ、両者に違いがる場合、その違いの分を補正して「見て」いるらしい。
文章の誤字脱字に気づかないことがあるが、脳の中では予測の段階で誤字脱字がない映像を描いているのかもしれない。その映像で意味的に問題がなければそのまま理解してしまうのかも。
また、同じ文章を読むにしても、ディスプレイに映されたそれと、紙面に印刷されたそれでは誤字に気づく頻度が異なる気がする(数えたことはないが)。どちらも脳が予測してから差を補正するということに違いはないのだろうが、ディスプレイに移った情報の方がより予測との差を認識しづらいということなのかもしれない。
文章を読む行為について、脳がどこまでを予測して、補正してということを行っているかも興味が湧くところ。文章が目に入る段階で、字面を予測しているとしても、意識上ではその場で意味を認識はしていない。でも無意識の部分ではなんとなく意味を認識していて、ちゃんと意味が通る文章か予測を始めているのだろうか。
「プルーストとイカ」をもう一回読んでみたくなった。