カルロ・ロヴェッリのレビュー一覧
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たった150ページとは思えないくらい内容が濃かった。それぞれの章はほぼエッセイくらいであり、相対性理論や量子力学から見える世界観がなぜそうなのかを細かく詰めている余地はない、いわば結論と結論から見える世界の広がりに特化した本だが、表現が巧みで好奇心をくすぐる書き方になっている。センスオブワンダーのお手本。
入門レベルの話とはいえ読者を思考に促すことにかけては手を抜いておらず、時間は客観的には存在しない、熱があるところに時間は発生する、といった一見突飛もないフレーズから、時間、自我、自由といった物理学の哲学的な側面まで目配せしているため読んでいて頭の柔らかい部分がものすごく刺激される。
世界 -
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1章 所変われば時間も変わる
時間の流れは、山では早く 低地では遅い
低地では あらゆる事柄の進展がゆっくりになる
平地の方が地球の中心に近いから。
物体は 周囲の時間を減速させる。
巨大な質量の地球の周りでは 周りの速度は遅くなる。
ものが落ちるのは 時間の減速のせい
物体は時間がゆっくり経過する方に向けて動く
2章 時間には方向がない
過去と未来、原因と結果、記憶と期待、後悔と意図を分かつものは、基本法則のどこにも存在しない。
周囲に変化するものがまったくないのであれば、熱は、冷たいものから温かいものへ移れない。(クラウジウス:クラウジウスは 一方通行で不可逆な -
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「ループ量子重力理論」というとんでもなく難解な話題なのに、カルロ・ロヴェッリ氏の手にかかればこんなにも分かりやすくなるとは。
「時間は存在しない」と言われると「そんなわきゃない!」と否定したくなるが、昔(という概念もまやかしだが)の人々は天動説や地球平面説を信じ、アインシュタイン氏でさえ「神はサイコロを振らない」と量子的ふるまいに否定的態度を取った。ひょっとすると「(その頃にはそう呼ばないかもしれないが)昔の人って時間が存在すると思ってたらしいよ」となるかもしれない。
氏によると時空は重力場の「量子的重ね合わせ」であり、我々が「時間」と思っているものはエントロピーの低い状態を拙い脳が「(秩序だ -
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生命化学系の大学生である私にとって、量子論との出会いは量子化学だった。本書を読んで量子論の始まりには行列力学と波動力学という二大巨頭があったことを知った。またシュレディンガーの波動方程式は量子の不連続性をなくしたいという思いが含まれていたようだ。式を追うだけでは把握しきれない科学者のドラマや気持ちを本書では描き切っている。
そして量子論を解釈するため、著者はナーガールジュナ(龍樹)に行きつく。龍樹によればいかなる視点も別の視点との関係性抜きでは存在しえないという。量子論の結果が古代の仏教哲学と呼応しているようにみえるところが面白い。
本もまた、他の本との繋がりが本質的であるといえるかもしれ -
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以前、本書の著者であるカルロ・ロヴェッリの『時間は存在しない』に非常に感銘を受け、他の著作も読んでみたいと思っていたので、物理学についての入門書である本書なら気軽に読み進められそうだと思い購入。
『時間は存在しない』もそうだったように、本書を読み始めてまず感じるのは、その文体の読みやすさである。
相対性理論や量子力学も含めた最新物理学について、7つの章(講義)に分け、どんな読者でも理解できるように優しく(時には詩的に)語りかけてくるのだ。
巻末の訳者あとがきにもあるように、本書は2015年にイタリアの出版界のベストセラーランキングにおいて(科学書カテゴリではなく)総合1位を獲得したというのも -
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ネタバレすごく読みやすくて面白かったー!といいつつ、量子論の本は何冊読んでも強固としてある「自我」や「主観」といったものを相対化しきれていないところもあり、科学者たちが持っている「ほんとうに、信じられない。こんなことを、信じろというのか?これじゃあまるで…現実が…存在しないみたいじゃないか」という恐怖感には直面していない。
序章の「深淵をのぞき込む」
…だが、これぞまさに科学なのだ。科学とは、世界を概念化する新たな方法を探ること。時には、過激なまでに新しいやり方で。それは、自分の考えに絶えず疑問を投げかける力であり、反抗的で批判的な世親による独創的な力ー自分自身の概念の基盤を変えることができ、この世 -
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ニュートン力学から相対性理論、量子力学へ。そして、それらを統合するループ量子重力理論へ。そこには物理のことを何も知らない門外漢でも驚嘆するような世界を覗くことができる。一般相対性理論では、空間は単なる空っぽのスペースではなく実態として存在し、歪んだりよじれたりする。量子力学では、微視的な世界を説明してくれるそうだが、そこで起こっていることは確率論的かつ離散的であり、起こった結果は言わば偶然の産物に過ぎないらしい。
そして20世紀を代表するこの2つの物理学の理論の関係性について考えると、明白な矛盾が認められるそうだ。この矛盾を解決する理論の一つとして、ループ量子重力理論の紹介がなされる。
そこに -
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相対性理論や量子力学などが描く世界は、私達が日常ありありと感じている世界とは途方もなくかけ離れている!それが高校時代に理科・数学に挫折した文系人間の私が得た本書の感想。
一般相対性理論の視点では、空間は不動の入れ物ではなく、動いている巨大な軟体動物の中に私たちは蹲っているようなもので、それが縮んだり曲がったりしているそうである。一方、量子力学的な視点では、あらゆる場は、細かな粒子状の構造になっており、物理的空間も量子でできているという。そして近年ではこの一般相対性理論と量子力学を統合しようとする試みとしてループ量子重力理論が提唱されているという。この理論によると、もはや空間の量子というものは存 -
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量子力学の知見から、世界のすべてが「関係」としてだけ現れる/存在するという洞察、さらにそこから世界の一部である我々の意識/実存、または意識の中での意味の在りようが描き出される。
非常にスリリングに感じた。内容が自分の考えにとてもあっている、納得できるということからかもしれない。
書籍にもあるが、哲学で多く論じられている実在論とはややレイヤが違い一概に比較できないとも思うが、あらゆる実在が相対的(関係)であるという著者の考えは、実在の理解として、とても納得できる。
さらに著者は、相対的といったときの我々の存在については、意識は世界の一部であり、ただただ自然であるという。分かっていると言いたい -
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物理学を題材にしながら文学的な風情も十分に堪能できる、かつウィットにとんだ筆致で内容は力不足で理解ができなくても読ませる。特に著者の専門分野であるループ量子重力理論を後半は解説しており、深遠なる科学の世界に引き込まれていく。
空間も時間も存在せず、量子のループによる相関的なものにでしかない。プランク長という最小の単位が存在しており、空間や時間は離散的なものである。こう書いていても、何だか雲をつかむような内容で現実の感覚からはかけ離れておりどうもしっくりこない。それだけ難解で未だ発展途上の学問であるのでしょう、文系の私はエッセンスのみ感じることができて現状満足気味です。
科学とは真理を明らか