小島あきらのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
恵が出ていったことって梢のメンタルにはネガティブな影響は無かったか。何を勘違いしていたんだろうね自分は……
前巻で明かされた事実に加え、灰原によって明かされる過去の鳴滝荘によって梢に何が有ったのかはおおよそ描かれるのだけど、それでも全てが描かれるというわけではない。推測はできるけれど、梢は何故放置されることになったのか、梢の両親はどうなってしまったのかという点は一切描かれない
けれど、それは「まほらば」という作品においては小さな問題なのかもしれない。現に梢は幸せそうに鳴滝荘の管理人をして賑やかな面々に囲まれているのだから、過去にどのような苦しみが有ったのかは明らかにしなくてもよいのかもしれない
だから、問題となるのは今をどうするか
前巻、梢の多重人格の原因は自分にあったのかもしれないと知った隆士はどうしたら良いのかと悩む。梢の傍に居る権利があるのか自問する
その後、一旦隆士が出した答えは、10年間も梢を放っておいた自分には梢を幸せにする義務・責任があるのではないかというもの
当たり前だけど、そんなものは白鳥隆士の出す答えではない。彼がそれにすぐ気付いてもっと単純な想いに目を向けたのは良かったなぁ
そして同様に梢の別人格たちが隆士に向けたのもとても単純な想い
共通の感情を抱いたことで人格統合が始まった棗達。梢によって生み出された別人格が統合されるということは即ち、棗たちが消えてしまうかもしれないという虞が生じる
けれど、彼女たちは隆士と一緒に居る為に蒼葉梢たった一人に戻ることを選択する
どこか隆士と通じる部分のある棗達の選択には感じ入るものがある。そして綺麗さっぱり消えてしまったかのように思えた棗達の痕跡が梢が披露した手品や子供達の姿をとって現れる描写は感動的
数年の時間経過があった最終話ではそれぞれ別の道を選んだ面々が勢揃いし賑やかに談笑する様子が描かれる
多くの人物にとって鳴滝荘が大切な場所となっていることが伝わってくるような風景だった -
Posted by ブクログ
『まほらば』で忘れられない台詞を上げるとすれば、その一つは第32話で登場する沙夜子の「恨むわ…呪うわ…」だったりする
だからそんな台詞が登場して、沙夜子と朝美の関係について掘り下げられるこの巻はかなり好きだったりする
棗の再登場から始まる第6巻。隆士に懐いている様子を見せ、鳴滝荘の面々とも仲良くしたいと思っている棗。だというのに交流の様子は以前棗が登場したときと変わらぬ様相を呈す。以前と比べて鳴滝荘の面々に変化があるわけではないし、棗も積極的になったわけではないのだから当然の事態
その事態を変えた、というか両者の仲介となったのが隆士であったのは印象的なポイント。隆士が梢の別人格とどの様に接していくことになるのか、その方向性が見えた話であるように思えた
そしてこの巻の本命とも言える『大事』は3話も使って描かれてかなり豪勢。
この話で印象的な点は沙夜子の口数の少なさか。これらの展開に置いて中心になるのは沙夜子と朝美の関係性なんだけど、第30・31話において沙夜子は殆ど発言をしない。発言をしないということは彼女の心情が描かれないということでもある。普段からセリフ量が少なく何を考えているか判らない人物であるが、第30・31話では沙夜子が中心となるのに何も話さないためにその傾向が更に顕著になっている
少しの台詞はあるし、表情変化は見られる。一応彼女の心情変化を推察することは出来るのだが難しいことに変わりはない。だからきちんと自分の気持ちを口に出し寂しそうな表情をする朝美に感情移入してしまう。苦しい境遇に追いやられてしまいそうな朝美の立場から話を見てしまいそうになる
それだけに溜めに溜めてどす黒いとも言える沙夜子の本音がぶちまけられる第32話は衝撃的。
死んだ者は生き残った者の幸福を願うという道徳的な考えを沙夜子は否定する。あの場面で沙夜子が語る考え方はあまりに独善的で過去に囚われていて、だからこそ彼女がどれだけ黒崎を好きで居たかが判ってしまう。彼が遺した朝美にどれだけ感謝しているかが見えてきてしまう
それは沙夜子と朝美と今は亡き黒崎によって構成された家族の輪の外にいる者によっては止められない形だ。これほどまでに強烈で温かみに満ちた家族の形を自分は他に見たことがない
ただ、沙夜子と朝美の関係性を丑三が邪魔できないのはその通りなのだけど、それでも沙夜子と丑三の間の絆が無くなるわけでもないのは確かなこと。それが「どこぞなりへと行くがいい!!」と言って、しばらくしてから丑三が静かに「帰ってくればいい…いつでも…」の台詞に現れているように感じられた
本当にこの『大事』は記憶に残るような部分が多くて時折読み返したくなる。改めてそれを感じられた
それにしても沙夜子の母親である夕は幾ら何でも若すぎると言うか……。あれってむしろ吸血鬼とかそういう存在なんじゃ…… -
Posted by ブクログ
第一巻の頃のようなお色気描写は鳴りを潜め、代わりに隆士の良い奴っぷりが前面に出てきたことで本作の良さがより強調されたように思える第3巻
隆士って巻き込まれ体質ではあるんだけど、巻き込まれることを不幸だと感じずにそこに暖かい想いを見いだせる人間。だから作中で恵が褒めるように、同じようにほんわかした梢だったり、複雑な思いで毎日を送っている朝美からは信頼される人間である
恵が語る所によれば、彼女も遠くに居て会えない彼氏に対してもやもやした感情は溜まっていて。だから隆士の裏のない温かみに溢れた態度には心惹かれる部分もあったのだろうけど、だからこそそんな隆士と居ても彼氏のことばかり思い出してしまう自分を知り、彼氏への想いを確かに出来たのだろうね
ここで自分を使って試されたと知っても、憤慨すること無くむしろ笑顔で感謝を伝えられる隆士って本当に良い奴だよなぁ
隆士の温かみある人間性は他の場面でも発揮されていて、それがこの巻で最も顕著なのは14話
梢が持つ人格の一つでありながら、鳴滝荘の誰とも会話しようとしないために誰も名前すら知らない「あの子」。今回登場したことで鳴滝荘の面々は「あの子」と会話するために試行錯誤するけど、次々と撃破されて別の遊びに夢中になってしまう。
これは既に何度も「あの子」との会話を試みて失敗してきたからというのもあるんだろうな。けれど、まだ会ったばかりの隆士はそうではない
せっかく出会えた相手だから仲良くしたいというのもあるだろうし、鳴滝荘の面々が真心から「あの子」と仲良くしたいと努力していると理解したから自分が何とかしたいと思う
隆士の行動が実を結んで「あの子」こと棗と会話できるようになったのは、本当に隆士の心の在り方に拠るものなんだろうなと思える。友達になってもきっとつまらないと臆病になる棗に対して真剣な言葉で本心を伝える隆士は格好良い
鳴滝荘の誰もが出来なかったことを成し遂げた隆士。いつの間にか鳴滝荘にとって無くてはならない人間になっていたことが判るかのようなエピソードだった
他に印象的な物語「ハル」も収録。短い話なんだけど、人と人の出会いの尊さを説くような話であり、とても記憶に残るような話 -
Posted by ブクログ
「めぞん一刻」や「ラブひな」の流れを組むハーレムもの……と思われがちな作品であり、かのガンガンお家騒動を逃れてガンガンWINGの看板にまで上り詰めた作品。
ストーリーの概要としては「鳴滝荘に引っ越してきた絵本作家のたまごである白鳥隆士と、大家であるヒロインの蒼葉梢、そして鳴滝荘の住人が織り成す日々」というものですが。
鳴滝荘の住人たちは。
・過去の出来事がきっかけで解離性同一性障害を発症しているヒロイン
・幼い頃からヒロインに想いを寄せるも同性であるということから”親友”の壁を越えることも壊すことも出来ずにいる少女
・周囲の期待に押し潰されリストカットを行ったことをきっかけに夢も家族も失った女性
・心の底から愛した夫と死に別れた女性と、その夫の連れ子である娘。血のつながりのない親子。
鳴滝荘の住人たちは皆、心に深い傷を。
悲しみや苦しみを抱えています。
それはもうどうすることも出来ない過去であり。
どうにもならない想いであり。
拭い去ることなど出来ない喪失感。
その現実はあまりに受け入れがたいものでありながらも、それぞれがそれぞれに今、この胸に抱えている”いとしいもの”のためにこれからを生きていこうとしています。
孤独や絶望、別離や嘆き。
そういったものに襲われた者たちの「その後」を描いた。
そんな作品。