トーン・テレヘンのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ児童文学なのか大人の作品なのか、詩には長くて散文には短い。
全体にちょっと中途半端に感じました。
哲学だというのなら、幼年文学にアーノルド・ローベルの『ふくろうくん』がありますが、そちらの方が好き。
会話または対話の哲学的やりとりなら、同じくアーノルド・ローベルの『がまくんとかえるくん』やA・A・ミルンの『クマのプーさん』の方が互いの信頼や友情を感じられる。
短い作品でポンポンとテンポよく展開するシュールリアリズムなら稲垣足穂が上だろう。
思うにこれ、読んで理解する本ではなく、一日一話ずつ、寝る前に読んでもらう本なのかもしれない。
けれど気持ちの良い眠りにつくには、暗くてカタルシスもないんだよなあ。
何だかもったいない。 -
Posted by ブクログ
真っ黒だったぼくの心が洗われ、汚れがかなり落ちました。
動物たちが書く手紙の、何と温かで愉快なこと。
たとえば。
◇◇◇
カタツムリ君へ
ぼくにダンスをさせてくれませんか。
場所はどこでもいいな、きみの小さなお家でもいいです。
ちょっとステップをふむだけでいいんだ。
ぜひぜひお願いします。
そっとそっと踊るから。
お家の屋根を突きぬけたりしません。
約束します。
でも、そんなことは約束するまでもないよね。
象より
◇◇◇
とうが立ったぼくみたいなおじさんが読むと、たしかに気恥ずかしいところもあります。
でも、寓話などと侮ることなかれ。
どこぞの政治家の空疎な言葉より、ここに登場する動物たちの言葉の方が、よほど内実があります。
たとえば。
◇◇◇
亀さんへ
なんとも悲劇に見舞われたものですなあ。
実に痛ましいことです、せかせかせっかちとは。
それをぐっとこらえて、ぐいっと抑えつけて、ぎゅっと丸めてしまうのです、
それがほんの取るに足らないちっぽけな球になるまで。
次にはそれを地面に埋めます。
その上でじっとしていること。
あなたやぼくが落ちつきをなくしたら
どうなります?
カタツムリより
◇◇◇
含蓄があります。
世の中の状況、自分の置かれている立場で、この手紙の印象は随分異なってくるのではないでしょうか。
さて、皆さん、新型コロナで大変なことと思います。
本書を読んで、大切な人に手紙を書いてみるのも良いかと。
私は後で息子に書くつもりです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ週めくりのカレンダーに合わせて作られたため52編の動物たちの短編なんだそう。
一気に読むには気が滅入るになるほどの、ハリネズミの杞憂ぶり。そして個性が豊かすぎる動物たち。
だけど身に覚えがある。
P17 『みんながたがいを訪ねあっていた。ぼく以外のみんなが。』
P21『自分を訪ねてくるどうぶつたちを頭の中でつくりだしてみるといい。そのどうぶつたちと話をし、踊り、キミって思っていたよりずっと親切なんだね、と言わせればいいでしょ?』
P26『絶望しそうになったときには自分のなかで「おい!」という声が聞こえることを、ハリネズミは知っていた。けっしてぶつかってはならないところにぶつかりそうになったときのように』
1人は好きだけど、独りは怖い。
妄想で何度もシミュレーションはするのに、現実は直視できない。
挑戦して嫌われるなら、安全な孤独を選ぶ。
この煩わしいハリネズミは、私のことだ。
だからなおさら気が滅入る。
しかし最後に救世主がやってくる。リスだ。
リスはブナの実のハチミツをもってきていた。
P40『ベッドの脇に立ち、〈孤独〉がとつぜん消えて、みんなが部屋に押し入ってくるようすを想像してみようとしていた。いや、それよりも誰かひとりだけがドアを開けて入ってきて、〈孤独〉がその横をすり抜けて外に出る方がもっといい。
それはきっと度を超えて思いやりのあるやさしい誰かに違いない、とハリネズミは思った。
訪問の際は必ずブナの実のハチミツをもってくるだれか』
“あの人にはどんなおもてなしをしようか”と悩み、『招待』ではなく『訪問』についての本を読んでしまうほど、相手への思いやりに溢れるハリネズミに、
同じくらい“どうしたら喜んでくれるだろう”を抱いてくれる、ただ一人の友人の存在が、
“独り”だとしても“孤独”ではなくなるんだろう。
-
Posted by ブクログ
2017本屋大賞(翻訳小説部門)受賞作なのに、なぜこんなに低評価なの?と疑問をもち、手にしました。孤独なハリネズミの、究極の取り越し苦労と大いなる妄想の物語です。一見児童書のようで、なかなか哲学的な要素もあり、深い内容でした。
自分のハリにコンプレックスをもち、他の動物と上手く付き合えないハリネズミ。そんな彼が家に誰かを招待しようと思い立つのですが、ここからネガティブ思考の無限ループが続きます。
読むのも辛い、イライラ、単調…と、私もある程度感じましたが、待てよ、レビューそれで終わっていいの?と問われている気がしました。
人間関係に悩み、改善を望むものの、面倒さが先に立ち億劫になって…という経験は、誰にも思い当たりますね。だからこそ、ハリネズミを笑える?と声が聞こえ、もしかしてこれは自分の物語かもしれない、と錯覚がじわじわともたげてきました。
側から見てもどかしいことでも、当事者にとってはそんな単純な話じゃないことはあるので、ハリネズミの逡巡にこそ、人間の核心がある気がします。
勇気をもって一歩踏み出し、現実を少しだけ変える行動ができたらいいですね。
解釈や評価は読み手に委ねられているのは承知の上ですが、谷川俊太郎さんも絶賛している本書。もっと深読みされるべき内容と思いました。