豊田徹也のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
デビューから10年間の短編を集めた作品集。前作の「珈琲時間」と同じく豊田徹也らしい作品ばかりなのだけど、読みたかったのはこれじゃないという印象のも同じ。どの話もいい話ではあるけど、行動の動機や考えがいささか表層的。どこかで読んだような作品になっているので、もうひとひねりふたひねり欲しい。
あと、豊田徹也の絵はよく映画的表現と言われて確かにその通りだが、これも必ずしも良いことばかりではないと思う。映画という動画での作品と漫画という静止画での作品とでは当然、効果的な演出が違ってしかるべき。漫画でいうコマ割り、映像でいうカット割り一つとったって、両者は交換可能ではない。にも関わらず、映画的表現をその -
Posted by ブクログ
アンダーカレントから四年豊田徹夜の四年ぶりの単行本。前作『アンダーカレント』は、日常の中の葛藤を切り出した中編だったが、今作は珈琲をモチーフにした連作短編集。珈琲が出てくること以外は、作品間にほとんど共通点はない。やり方としては黒田硫黄『茄子』や山川直人『コーヒーもう一杯』と同じ。前作から四年もあっただけあって、絵はだいぶ上達しているように思う。線に危うさがなくなった。『EDEN』の遠藤浩輝と『プラネテス』の幸村誠を足して二で割ったような絵柄で、嫌われづらいタッチだと思う。マンガ技術も洗練されていて、作中の雪が降る場面はなかなかよろしかった。ちょっとそのトーンがCGっぽかったけど、CG作画して
-
Posted by ブクログ
とてもキレイで細かいタッチの、繊細な絵。初期の吉田秋生の絵によく似ていると思った。
微妙な表情の描き方がものすごく上手く、美しいのだけれど、それでも、なんとなく全体としてシンと冷えた印象を与えるのは、主人公の目に生気がないからだろうと思う。元気に笑っていても、心を映したその目には気が宿っていない。
この「アンダーカレント」というタイトルは絶妙なネーミングだ。表面上は何事もなく平穏と暮らしているように思える人々の中にも、その一つ下の層で何が流れているのかは、誰にもわからない。
それは目に見えないものであるだけに、当人がひたすらに隠し通せたとすれば、そこにどれほど大きな暗渠が巣食っていたとしても