感情タグBEST3
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夫が突然蒸発、銭湯を切り盛りするかな。
組合からの紹介で働きたいとやってきた男。
探偵下請けの山﨑が追う、夫の行方。
人のことを本当にわかっているのか?そう、そんなことはわからない。でもわかったような顔をしてしまう。興味を持って聞かないといけないし、興味を持っていることが相手にとって本当に大切なことなのかもしれない。失ってわかる重さはいつも興味を持っているかどうか、から始まっている。
言いたくても言えなかったんだ、という夫の告白と、働いている男、そして過去の失踪事件がどれも重なり合っていく見事な構成と展開に、ぐっと引き寄せられていく感覚は本当に素晴らしい。心の底をえぐられたような、そんな読後感と救われた感、余韻を感じながら長いこと住んでいる、日本ではない、外国の空を眺めてしまった。
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初・豊田徹也
なんだこれ
凄まじい緊張感、迫力が全ページ、どのコマにも満ちている。
シリアスなトーンが通底していながらも、ところどころでコミカルな描写がしっかりと差し挟まれており、それらがシリアスさを中和するのではなく、むしろひとつの雰囲気の醸成に奉仕しているようなのが凄い。
主人公の描き方が良すぎる。
ジェンダーレスでハードボイルド、格好いいのもそうだし、人と改まった形で会うとなった時には「女性的」な身なりをしなければならないことの、なんとも言えない哀愁と切なさよ。
最後、出かける前に口紅を手に取っても結局つけなかったこととか、ビンタすると言ってマフラーをかけてあげることとか、凄まじいとしかいいようがない。
誰も幸せになるわけでもなく、しかし単なる薄っぺらい「鬱」だとか「狂気」とかでもなく、ただただ、そこに常にある暗流を見つめて、それでも生きていくしかないことの弱さと強さをともに感じさせる物語だった。
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映画を観てから。映画がすごく丁寧に作られてたのがこちらを読んでよく分かった。原作を一本の映画を観ているような、と評するものがあったが、確かに。
映画のパンフで、原作のラストは完璧、との監督の言葉があった。でも堀さんが去るのをやめたのかどうかを読者に任されたことよりも、映画の方が良かった。
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ふとした時に読んで、そして毎回考えてしまう。
けれど私はこういう本が好きで、こういう本で悩んでしまう、人間関係に繊細な自分で良かったと思えたりもする。内容についてはうまく言えないけど、私にとってそんな本。
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“人を理解するということ”
ただ長く一緒にいるから、たくさん話をしたから、家族だから、、それでも「わかる」ということにはならないんだな…
哲学的であり、様々な感情を抱かせる作品
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コミック。Yに借りた。銭湯を営む主人公の女性と、その周りの人々の物語。ときどきはさまれる怖い記憶も、最後には明かされる。バッドエンドでなくてよかった。さらっと読めてじんわり良い作品だった。
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ネットで評判になってて、ずっと気になってた漫画。
けど、近くの本屋でなかなか見つからなくて……。
この前寄ったときに見つけたのは嬉しかった。
なんか淡々とした感じの話だと思った。
初め、失踪した旦那が新しく派遣されてきた人だと思ってたけど、全然そんなことなかった。
途中でラブコメ入るのかなと思って、少しわくわくしたけど全然違ったよ。
脇役さんたちもいい味出してた。モブにならない。
最後の結末は、彼は再び主人公の元へ戻ろうとしている、という意味で取ったけどはたしてどうなのかしら。気になる。
いいお話でした。機会があれば、同じ作者さんの別の話も読んでみたいなあと思う。
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丁寧で奥深い何度も読みたくなる作品。ただ優しいだけの物語ではなく、その人のささやかな優しさを表現するためにコマ割りや演出にかなり気を使っていて作り手の作品に対する本気度が伝わってきます。
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以前から評判を聞いていて気になっていたのだが、いやはや期待以上に素晴らしい作品であった。
細い線で描かれる、決して特別ではない市井の人々である登場人物たちの人生の機微に、心を掴まれる思いで一息に読んでしまった。読後はしばらく余韻に浸ってしまい、物事が手につかないほどであった。(これだから漫画を読むのは辞められない!)
著者の豊田徹也氏は寡作の様だが、たとえペースが遅くとも、このように繊細で素晴らしい作品を今後も生み出していって頂きたいと、一漫画ファンとして心から願う。
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中年になって漫画を余り読まなくなった。雑誌を見てもすぐに読み飛ばしてしまう。年のせいだと思っていたが、この本は珍しく1コマも読み飛ばさずに最後まで一気に読んだ。一見地味に見える絵やストーリーなのに、実はかなり考え込まれて作られているのだろうか。でもサラっと読める。そして読みたい時に、すぐに読みたい所へ戻って読める漫画の特性を生かした話になっている。最後まで読み終わって、また最初から読んだ。
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物語に大切なものは何かと聞かれたら、その一つに「リズム」と答えたい。著者の作品は初めて読んだけれど、回想や風景の差し込み方は映画的であり、細やかに演出されたリズムに乗って物語に没頭することができた。
大切なものの喪失=不在が、アンダーカレントの姿を明らかにする。痛いほど分かる。再会の場面で語られた悟の言葉は、かなえの苦悩や不安と比べると掴みどころがなく呆気ない。現実もそのようなものかしれない…だからこそ、完璧に理解することは難しくても、相手を分かりたいというその気持ちが尊いのかもしれない。
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「自分のことをわかって欲しい」と言えない苦しみ。それは薄っぺらい承認欲求とは違って、本当は自分の心の奥底に沈めたままにしておきたかったものをさらけ出すことへの恐怖があるからだろう。そして、わかってもらおうとすることをあきらめた閉ざされた心は、他人のそれに気づかなかった。夫がある日突然何の理由も言わずに失踪してしまう事件をきっかけに主人公が「わかってほしい」と言える気持ちを取り戻そうとする歩みと、それを見守る男たちの物語。男たちと書いたのは、もちろんメインは主人公の経営する銭湯に新しく働きにきた男だが、脇の探偵や近所の爺の果たした役割もまた大きいと思った。おそらくキャラのモデルであろうリリー・フランキーは映画版でまたまた儲け役だったなぁ。
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登場人物が少なめなのに、物語が浅いわけでもなく、書きたいことが明確にあって、それをキレイにまとめている、といった印象を受ける、良いお話でした。
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静かで、ともすれば盛り上がりに欠ける作品だけど、どこまでも映画的で、繊細な描写で、タイトルやイメージのとおりにじわじわと水に沈められて行くように胸に迫ってくる読後感。
人間ドラマ。本当にそのまま人間ドラマ。自分と他者を理解することとは?常にその問題を投げかけてくる。
淡々と進むしキャラクターの感情も希薄だけど、繊細な描写や構図でぐいぐい引きこまれて、些細な描写の中からも色んな意味を汲み取ろうと自然に見入ってしまう魅力があった。
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漫画を褒めるのに映画的文学的というのはどうかと思うが、どうしてもそのフレーズが浮かんでしまう。
すなわち行間がある。コマとコマの間に、描かれていない人物の表情があり、それが読み手に降りてくる。
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銭湯「月之湯」を継いだ主人公・かなえには夫が居たが、2ヵ月前に突如失踪。暫く営業を休んでいたが、改めて再開することにした。組合から技師である堀を紹介され、彼の寡黙ながら真面目な仕事ぶりに助けられつつ、順調に銭湯は運営される。しかしかなえには夫の失踪のほかに、ずっと心の奥に閉まっていた辛い過去があった。
本作で出てくる登場人物はみんな極端に口数が少ないけれど、内に各々想いを抱えながら生きている。多くは語らずとも、登場人物のちょっとした心の動揺や変化が伝わってくる絶妙な描写。結局のところ何も変わらないかもしれない。でも、それぞれが前に踏み出せればいいなと思う。
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この人の作品は映画を観てるようだという評価がされているが、その要因として
「内容が小説っぽいこと」
「細い線で綿密な描写」
この二点が挙げられると思う。まぁ細かいことは置いといても、温かさを感じてノスタルジアを覚えさせられるところが僕がこの人の作品を好きな1番の理由かな?
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突然失踪してしまった優しい夫。何も分かっていなかった自分。そして過去の傷との対面。ほのぼのした情景の中にチクチクと骨が刺さっている感じ。ミステリー要素も漂いつつ静かにでも確実に時が流れていく。ラストは賛否分かれるところだけど、あえて私は白黒つけず読者にゆだねる結末でもありだったのではないかな?と思う。そういう雰囲気でも許される作品であったと思う。
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さらっとした絵柄だけど、ふとしたところがかなり書き込まれていたり、ちょっと可笑しいシーンがあったり。正直なところそんなに大した話ではないけど、構図とか話の流れとか、すごい良いと思った。
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「あのね さっきからずっとお話聞いてて思ったんだけど、なんかこう見えてこないんですよ。あなたのご主人悟さんのパーソナリティーみたいなものがさ。人当たりがいい、面倒見がいい、責任感がある。そんなのはその人がその人たりえてるモノとはなんの関係もないですよ。」
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人を知ること、それをどんなに求めたところで、どうしても知られたくないことはある。対話や過ごした時間ではどうにもならないとこもある。だから世界はこうなっている。
そんな風に考えてしまうのは、悲観的だろうか。
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よくできたストーリーで、評判が良いのも頷けるけど、漫画としてみるとパンチ不足。映画化されそうでされない不思議。私は最後まであの旦那が好きになれなかった...。
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とてもキレイで細かいタッチの、繊細な絵。初期の吉田秋生の絵によく似ていると思った。
微妙な表情の描き方がものすごく上手く、美しいのだけれど、それでも、なんとなく全体としてシンと冷えた印象を与えるのは、主人公の目に生気がないからだろうと思う。元気に笑っていても、心を映したその目には気が宿っていない。
この「アンダーカレント」というタイトルは絶妙なネーミングだ。表面上は何事もなく平穏と暮らしているように思える人々の中にも、その一つ下の層で何が流れているのかは、誰にもわからない。
それは目に見えないものであるだけに、当人がひたすらに隠し通せたとすれば、そこにどれほど大きな暗渠が巣食っていたとしても、他の誰にも気付かれないままやり過ごすことは出来る。
主人公の内部に空洞があるにもかかわらず、この物語が救われるのは、その周りにいるサブキャラクターの明るさのせいだ。その影響を受けて、主人公の表情も段々と変化を見せていく。とても良い後味を残す作品だった。
彼がどういう人間だったか正直いってよくわからなくなってきてるんです。
彼はいろんなこと私に話してくれましたよ。でも本当に大事なことは話してくれなかったのかもしれない・・。今思い出すと、時々、彼は私に何か重要なことを伝えたがってたように思うんです。ちょっとした表情とか間とか・・沈黙とかそういったものを私も感じてたと思います。(p.202)