豊田徹也のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
世界のトヨダの短編集。描かれた時期が疎らで、デビューからの軌跡をたどるのに良い一冊になっています。
表題作「ゴーグル」だけでなく「ミスター・ボージャングル」「とんかつ」「海を見に行く」、シリアス系の作品は家族のお話。どれも違うのですが、根本には家族の苦しみと葛藤が共通しています。家族だから、家族なのに…悪意が無くても苦しめあうその関係に明確な救いを用意はしていませんが、すっきりと読むことが出来ます。
良く練られたネーム、セリフ回しに背景、そして伏線とヒント。どれも丁寧で魅力的でした。
「スライダー」みたいなバカ話も面白い。アフタはいい作家を見つけたものです。 -
Posted by ブクログ
標題のデビュー作を含む短編集。
近年、一番アフタヌーンらしい作家と思っている豊田徹也の短編集。この人の作品はニューウェーブと言われた作家の影響をガッチリと受けつつも現代の軽さ関係性の薄さを心地よく描くから好きだ。人間同士ってそれほど熱く濃く付き合っていけないよね。でもそのさらりとした空気の中にもそれぞれ思いってのは確実に存在するのだ。
『スライダー』は全くのギャグ。だが、人と言うのは自分の状況を誰かのせいにしたいと言う欲望は必ずあると思うんだよね。まぁ、デフレスパイラル。
『ミスター・ボージャングル』人の二面性、さらに違う視点。その中から人はどの評価を採用するべきなのか。
『ゴーグル』 -
Posted by ブクログ
ネタバレきっとまた読み返したくなる作品
最後、サブじいが堀さんに言ってたことが全てだと思う
人のことを、その心まで完全に理解することはできない。でも、自分のことは分かってもらえないだろう、言ってもなんにもならないだろうと決めつけて、黙って離れるだけで解決することはない。少しでも分かってもらうために、お互いに分かりあうために言葉を交わす。それで分かり合えるとは限らないし、どういう結果になるかも分からないけど、苦しみを内に秘めても身を腐らせるだけ…
悟は本当にかなえが好きだったんだろうな
堀さんが戻ったのが、別れを告げるためではなく、言葉を交わして分かり合おうとするためであって欲しいと思う -
Posted by ブクログ
「自分のことをわかって欲しい」と言えない苦しみ。それは薄っぺらい承認欲求とは違って、本当は自分の心の奥底に沈めたままにしておきたかったものをさらけ出すことへの恐怖があるからだろう。そして、わかってもらおうとすることをあきらめた閉ざされた心は、他人のそれに気づかなかった。夫がある日突然何の理由も言わずに失踪してしまう事件をきっかけに主人公が「わかってほしい」と言える気持ちを取り戻そうとする歩みと、それを見守る男たちの物語。男たちと書いたのは、もちろんメインは主人公の経営する銭湯に新しく働きにきた男だが、脇の探偵や近所の爺の果たした役割もまた大きいと思った。おそらくキャラのモデルであろうリリー・フ