今井キラのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
学生時代、『待つ』を読んだ時に、この短い文章でこれだけ不安定な心情を表現できる文豪の才に衝撃を受けた記憶があったのと、乙女の本棚シリーズの本が欲しいなと思っていた頃にたまたま書店で見かけたので購入。
最初の数ページは、百年前の太宰の語りと、現代調のイラストに隔たりを感じたが、しだいに、じわじわと、この作品で語られている心許なさとイラストの虚無な眼をした少女が重なってきて、何度も読み返してしまう。眺めれば眺めるほど、小説世界を深掘りしていく耽美で病みを抱えたイラスト。
関係ないけど、ゲスの極み乙女の「id1」という曲に「ぼくらは少しだけ明日を待ちすぎてる気がする」という歌詞があるのを思い出した。戦争が始まって世の中に置いてきぼりにされたように感じて、生きづらさを拭ってくれる突破口を求めている。
この作品の最後の一文に、学生時代の私はただならぬものを感じたのだが、歳をくってから読むとそこまでの衝撃はない。ただ、確かに、どこかしらの駅に、こういう若い子はいるだろうなと思った。昔は私もそういう子どもだったかもしれない。そして、そういう頃の感性を忘れないでください、と語りかけられている気になった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ十二歳ぐらいの七人の少女がきゃいきゃいやっていたところに現れた、十四五と思われる西洋人形のような"平和の破壊者"。
少女たちと同じように、彼女も泉を汲んで飲もうとするのだが、取り出した杯は黒ずんでいて馬鹿に小さく、少女たちの大きな銀の杯とくらべてずいぶん見劣りがする。
少女たちはそれを口々に貶しながらも、哀れみから「あたいのを借そうかしら」と差し出すが——
「わたくしの杯は大きくはございません。それでもわたくしはわたくしの杯で戴きます」
という凜とした主張は、なにかしら人生に対する訓戒のように思えた。
パステルかつメルヘンながら毒を感じる今井キラさんの絵が、森鴎外の文章と絶妙に融合する一冊。 -
Posted by ブクログ
〈乙女の本棚シリーズ〉
太宰治+今井キラ
あさ、目をさますときの気持ちは、面白い。の書き出しで始まる女生徒。
1日の出来事で感じたことを言葉にしている。
その言葉ひとつひとつが音符のようでリズムを感じる。
女生徒ならではの女に関する言葉も鋭い。
草をむしっては、形はちっとも違っていないのに、いじらしい草と、にくにくしい草と、どうしてこう、ちゃんとわかれているのだろう。
理屈はないんだ。女の好ききらいなんて、ずいぶんいい加減なものだと思う。
けさ、電車で隣り合わせた厚化粧のおばさんをも思い出す。ああ、汚い、汚い。女は、いやだ。
自分が女だけに、女の中にある不潔さが、よくわかって、歯ぎしりするほど、厭だ。
女生徒の言葉とは思えないほど辛辣である。
彼女には亡くなった父への思いがあるのだろうが、母には何も求めていないことに不穏さを感じる。
朝目覚めるとまた灰色で虚無で意地悪だと思うのだろうか。
王子さまのいないシンデレラ姫だと言うのは辛い。
儚さが絵に現れている。
色も柔らかく、溶けていきそうだ。
そっと箱を開ける手は、何かを期待しているのに…。
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Posted by ブクログ
文豪と有名イラストレーターで紡ぐ「乙女の本棚」シリーズ
森鴎外「杯」×今井キラ
同じような格好をした同じ年頃の日本の少女7人が、それぞれ銀の杯を持ち、森の泉の水を飲みに行く。そこへ一人の異質な西洋風の少女が一人、小さな黒い杯を持って現れる。
粗末で小さな杯を(持つ少女)明らかに下に見つつ立派な杯を貸そうとするも、自分の杯で飲むときっぱりと断られる。
横並びの日本人を皮肉り、自分を持つ西洋人を称える意図があるのかな?
イラストは柔らかい色調で少女は可愛い。が、大きなくすんだ色の蝶(蛾?)を7匹の小さな赤い蝶が囲んでいる絵が一番印象に残った。
ともあれ、森鴎外はやはり西洋の女の子が好きなのか。