篠原信のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
X(旧Twitter)で大人気の篠原信先生が書いた哲学の本とあれば、読まないわけにはいかないだろう。これまで何冊もの哲学入門本を読んでは挫折したり、読んでもまったく頭に残らなかったりしたが、この本に書かれていた内容はわりと覚えていられそうな気がしている。
哲学・思想版の『びじゅチューン!』を目指したというこの本は、もちろん哲学・思想のすべてを語ってはいないし、著者の主観がかなり強く、各項目ごとに割かれているページ数もまちまちで、網羅性も低い。だがそれが良い!
著者は、プラトンが「国家は人間がデザインできる」と言い出したことが、のちの『理性教』を生み出し、デカルトの「すべてを疑い、否定せよ」が、副作用としてナチスを生み出したとして警鐘を鳴らす。
その処方箋として、カール・ポパーの「反証可能性を自ら示さねば科学とは言えない」という主張を紹介。完璧な理論は存在しないからこそ、今までの理論を当面妥当なものとして活用し、反証が出てきたら修正してアップデートすることを提唱しており、穏当で当たり前に感じるが、とても大事なことだと思った。
アリストテレスが普及させた「観察」のアプローチは、キリスト教の世界観にとって脅威だったため中世ヨーロッパでは封印されていたが、十字軍を契機にイスラーム世界から逆輸入されたという流れは、学校で習ってはいたと思うのだが、あらためて腑に落ちた。
「神の見えざる手」で知られるアダム・スミスは、あくまで当時の重商主義真っ只中の時代において、政府の市場への過剰な口出しを戒めたのであって、新自由主義的なルール無用のデスマッチを推奨したのではないこと(産業革命で貧富の差が広がったのはアダム・スミスの死後!)や、マルクスは「資本論」においてスミスの本を頻繁に敬意を持って引用していることなどはもっと知られてもいい。
また、ダーウィンの「適者生存」の考え方が「弱肉強食」と曲解されていること(この本では指摘されていなかったけれど、優生思想の根拠として悪用されていることも)は、ダーウィンにとっては気の毒な話だろう。
こうした発想の転換を生むターニングポイントになった思想や哲学をポイントで押さえておくことで、哲学史の理解がだいぶ深まったように思う。わかった気にさせるのが得意な篠原先生だが、極端なことや過激なことはあまり言わないので信頼できる。この本を取っかかりに、哲学の本にまたチャレンジしてみたい。 -
Posted by ブクログ
哲学により、人々の考え方のみならず政治や生活の変化していく様を歴史的に述べているのが面白かった。
印象的だった部分はギリシア哲学者3人。
高校で学んだときとは違う印象を受けた。
ソクラテス→ごくわずかの天才に知識が開かれている世界から凡人でも自ら問い続けることで知性を磨くことができる世界に。
プラトン→人知が介入できないと思われていた国家は優れた個人であれば国家を形成することができると説いた。(リュクルゴスによるスパルタ王国の影響)
アリストテレス→観察によって知性を磨くことができる。専門家でなくても物体を観察し、細部にこだわり、誰も気にもとめていなかったことに気づくことで真実にたどり着く事ができる。凡人にも知を開いた。
デカルトが疑い続け真実導き、絶対真実を増やしていく考えを主張。
その後もカント、ヘーゲルが理性説を進化。
イギリス経験論もあったが、どちらも個人の賢さや優位性を追求する面があった。そういった人間として優れている人はこうゆう人だと言った考え方があるからこそ、ナチス、スターリン、ポル・ポトが生まれた可能性もあると記述。
今自分の考えた方に近い↓
フロイト、ユング→適応できず精神を病む人の存在。理性だけが大事じゃないよね。
レイチェル・カーソン→大切なのは知識の量ではなく興味関心の強さ。体験を重ね、体験ネットワークを広げることでじぶんの興味の範囲が広がり、その分野に関して深い知識を身に着けようとする同期が生まれる。
カール・ポパー→絶対などない。科学理論として成立するには、それが成立しない諸条件を示す必要がある。逆にその条件が示されるまではその理論を妥当なものとして受け入れる方が生活はしやすくなる。
ケネスjガーデン→優れた個人を絶対視してはいけない。存在ではなく関係。関係でしか存在は把握できない。また客観的な事実よりもその人自身の経験からなる意見のほうが共感できる。
また経済学の流れもわかりやすかった。
アダム・スミス(市場経済)→マルクスの共産主義→ケインズの修正経済学→新自由主義→共産主義の再興
注意しなくてはならないのはアダム・スミスも完全な市場経済を望んではいないということ。市場に委ねすぎると格差や怨恨につながるからだ。成長を邪魔しない範囲である程度の制度を作ることが政府には求められている。
またこの時代に求められているのはリカードの条件付きの【比較優位説】であると思った。各国が複数の強みを有し、一つの強みが失われても脆弱性を保てるようにし、役割を分担しあうことが効率性の観点から必要。
-
Posted by ブクログ
とても読みやすく書かれている。
ダメだと思いながらも子どもにやってしまう、良くない声かけや態度。
私はきかれたことに対してすぐに直線的な回答を与え、揺らぎを許さないタイプなのではないか。
もっと子の間違いや勘違いを楽しみ、フラフラと遠回りさせ、フフフと影から観察する余裕を持ちたい。私の不安を消すためじゃなく、本人の学びなのだからね。
尋ねられる→答えるの応酬では、結果的に本人は何も学んでいない。
自分に置き換えればわかる。誰かが正解として提示してくれたら安心。でもまた何かあれば、訊いて安心したくなってしまうだろう。
自分で考えるとしんどいし、よくわからん。
でも、「こういうことか?!」と何かをひらめいた時の喜びに勝る学びはなさそうだ。
-
Posted by ブクログ
塾を主宰したり、子育て相談をしたりする中で筆者が得た“こうすると子どもは伸びるのではないか”という方法を、惜しげもなく書いてくれています。
私は普段から子どもと多く関わる職業に就いていますが、「なるほど」と深く納得させられました。
この本には、押し付けがましいことや、全ての子に画一的に当てはめられるようなことは書いてありません。
いわゆるハウツー本ではなく、どちらかというと、親側の「心構え」に近い内容です。
子ども自身が考え、動き、成長していくために、大人側がどう土台を整えてあげるのか。
そのような関わり方のヒントがたくさん載っていました。
とても素敵な本でした。
手元に置いて何度も再読したいと思います。 -
Posted by ブクログ
自発的に他人に動いてもらうには全てを教えるのではなく、ある程度自分で考えさせる必要があることは何となく誰もが思うところ。この本はその「なんとなく」を具体的な手段として言語化しているところが凄いと思いますし、とても勉強になりました。
上司・部下の関係だけでなく、この本の内容は組織のトップと現場の関係にも言えるかも、なんて思ったり。トップダウンで命令を出すくせに面倒なところだけ「現場主導でやれ」みたいに言われたときは「言われたことだけ最低限やって、とっとと次のプロジェクトに行こう」なんて考えていたかも(汗)。
そのように自分の体験と重なるところも多かったので、この本に強く共感したのかもしれません。 -
Posted by ブクログ
子育てのヒントになる本。
言葉の発達を促すにはどんな教え方がいいか
→目にしたものの実況中継がおすすめ
子と何を話したらいいか困ってしまう私。そうか、実況中継ならできそうだ。あまりお話をしなかったせいか言葉が遅かった娘。今からでも遅くないのではと思った。
子育てだけでなく、自分自身の生き方についても考えさせられた。
家事、交友(遊び)、運動、休息、課題(学習)の5つのバランスとメリハリが学習への集中力を高める。
親に恨み言を言うヒマがあったら自分でなんとかする。それが大人になるということです。(中略)自分を再構築するには、二つのコツがあります。己を知ること、そしてメモです。
章が大きくなるにつれて対象年齢も大きくなるので、数年ごとに読みたい本。 -
Posted by ブクログ
歴史上の哲学や思想について、
歴史的な背景や文脈を踏まえながら平易に説明した書。
その後の人類社会に与えた影響を含めて噛み砕いて説明されているため、現代社会構造の源流を知る書としても読める。
ソクラテス以来の西洋哲学の潮流を一望できる章立てになっているものの、
各哲学者や思想家に充てられているのは2〜3ページであり、サクサクと読み進めることが出来る。
全体を通して「前提そのものを問うこと」の重要性と実践方法を勧めていて、各哲学者や思想家の実際の営みを通して具体的な実践例を浮かび上がらせている。
東洋思想についても、代表的なものを紹介している。
「驚く感性が大切」といった、著者自身の考えや価値観も色濃く反映されているが、
歴史上の哲学や思想そのものを歪めるような記述ではないので、好みは分かれるかもしれないが、
ざっと西洋哲学・思想と東洋思想を概観するのにも適している。
個人的には、西洋哲学・思想の総括の部分で、
「存在そのものは把握できず、関係性を把握している」
と締め括っているのが白眉だと感じた。