ステファン トゥンベリのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ【2026年14冊目】
罪は加速する。ついに爆弾事件にまで発展し、四人の男たちの絆が徐々に揺らぎ始める。突き動かされるように、計画にのめり込んでいく長男、距離を置き始めた次男と三男、疎外感を感じる幼馴染、普通に憧れるシングルマザー、そして暴力に染まっていた父。度重なる強盗事件の行き着く先とは――実際の強盗事件を元にした一作下巻。
下巻はより一層読むのが苦しかったです泣。それぞれの感情がめちゃくちゃ飛んできて、刺さる刺さる。どうしようもない父親でさえ、真に憎しめないし、長男は長男で闇が深すぎるし、次男と三男のやりたくなかったけど、かかわる選択肢のほうがマシだったみたいなのもわかるし、読んでて動悸がすごかった。
上巻は銀行強盗の描写ハラハラ〜とか思ってましたが、作者さんが本当に見せたかったのはそこじゃなかったというのが下巻でありありとわかって、というか作者の一人が銀行強盗犯の実の兄弟だと知ってひっくり返りました。そ、そんなことある?!
家族の在り方を考えさせられたというか、血は濃いというか、切ってもきり離せないというか、こんなに辛いなら、そもそも家族という形が間違ってるんじゃないかとまで思わされたり。警部の一件に関しても、最後の最後まで読者のハートにナイフを突き立ててくるやんて思いました。
精神的疲労がかかる話でしたが、なるほど選書していただいたのもわかるな、と思う一作でした。だが疲れました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ読み終わってしまった…
割とあっけない幕切れ…
と思ったが、史実に基づいているし、こういった終わり方の方がある意味リアルなのかも知れない。
父も少年時代の周りの人も兵役も込みで、暴力というものに触れさせられ続けていると感覚が変わってしまうものなのか。
個人的には最終手段として持つのは良いと思うが、ひけらかすとなると、、
守りたいものがあったとしても考えてしまうものはある。
そして誰がドアを開けたせいで母が殴られたのかに関して、それぞれ自分のせいと本心から思っているあたり、本当に家族のことを思っていたんだなと…
ただ、父親は最後印象が少しはかわったものの、不器用がすぎてもはや同情できなかった(苦笑) -
Posted by ブクログ
ネタバレ最初から、最後は破滅で終わるのだろうと思っていた。
だってこれ、実話をもとにしているのだもの。
怪盗ルパンや二十面相とは違う。
犯罪者をヒーローにするわけにはいかない。
だけど、彼らは本当に成功し続けた強盗だったのか?
確かに警察に尻尾は掴ませなかったが、いつも目標を下回る金額しか奪うことができなかった。
そのことについてレオは一度でも考えたことがあるのだろうか。
そしてレオは、家族は一致団結するのが当然と考えていたけれど、レオと弟たちは団結していたが、最初から一致なんてしていなかった。
レオにはそれが見えていなかった。
フェリックスが言ったとおり、彼らを統率するのが父親から長兄に代わっただけだったのだ。
どちらもフェリックスやヴィンセントの気持を考えるなんてことはなかった。
ただ黙って俺について来ればいい。
フェリックス21歳、ヴィンセント17歳。
ようやく自分たちの気持をレオに伝えて、彼らは袂を分かつ。
だけどレオはもう後戻りできなかった。
強盗することで得られる成功体験の依存症になってしまったと言ってもいい。
どう考えてもレベルの下がったチームで大仕事をやろうとしていたのだから、全く正気ではありえない。
レオは暴力を振るわないことを自分に課し、仲間に課し、それが守られることで自分を正当化していたけれど、銃を突き付けられた人は、命の恐怖にさらされた人は、決して消えない傷を心のうちに負ってしまったことにレオは気づくことができなかった。
なぜならレオにもその傷があり、その傷を見ないことでレオはかろうじて自分を支えてきたのだから。
父のイヴァンが自分の気持ちのままに暴力を振るって家族を従えてきたことが、結局家族の心を壊してきたのだ。
イヴァンがレオに「家族を頼んだ」ことが、レオの人生を狂わせてしまった。
たった10歳の子どもがどうやって家族を守ることができるのか。
父のとおりにふるまうしかないではないか。反面教師だとしても。
作者の一人、ステファン・トゥンベリは強盗に参加しなかった彼らの実の兄弟だという。
本当は4人兄弟だったのだそうだ。
レオはこの本を読んで自分や周りの人たちをどんな狂気にさらしていたか、これで理解できた」と語った。
自分を客観的に見ることができるようになったのなら幸いだと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ実際の事件をモデルにした、父親の暴力で育てられた兄弟が起こした、などの事前情報をついうっかり読んでしまって、読み始めるのがちょっと億劫だったけど、ページを開いたら一気呵成に読み終えてしまった。
確かに父親の暴力シーンは読んでいて辛かった。
まだたったの10歳のレオ、7歳のフェリックス、3歳のヴィンセント。
父の暴力は子どもたちに向かうわけではない。
けれど、少なくともレオとフェリックスは、父の暴力の気配を怖れながら育ったように見える。
特にレオは、暴力を抑えられない父を、暴力に支配された男とみる。
だから自分は決して暴力に支配されることがないよう、自分を律して生きてきた。
で、何でそれが銀行強盗になるのかわからないよ。
結局自分を律することのできる自分ってのに酔ってるの?
警察に銃を向けられた時のために備えはするが、自らは暴力を振るわない銀行強盗。
権力にたてつき、強かに裏をかいて、勝利を得る。
レオの心理としてはそういうことなのだろうか。
しかし、頑固なフェリックス、臆病なヴィンセント、そして短絡的で自制心のない幼馴染みのヤスペル。
彼らをうまくまとめて、何があっても決して彼らを危険な目から守ってやる男として、レオは存在する。
だけどレオのしていることは、肉体的な暴力ではないけれども、精神的な暴力ではないのか?
弟たちは、特にヴィンセントは積極的に銀行強盗をしたいなんて思っていない。
そして、現在17歳のヴィンセントは、普通に生活していさえすれば、それほど兄の庇護を必要としないはずだ。
「守ってやる」そう思った時点で、レオは兄弟たちを精神的に縛ってしまったのではないか。
そして彼らを追うストックホルム市警のヨン。
彼もまた暴力に支配された家庭で育って来たらしい。
だから彼はレオたちのしていることは単なる『強盗』ではなく『安全の強奪』だ、と思っている。
過剰な暴力にさらされた人は、身体の瑕が癒えても心の傷が癒えないことが多いからだ。
レオたちの中で一番やらかしそうな人が、計画に反することをやらかして、単純な銀行強盗が大事になってしまったところで次巻に続く。 -
Posted by ブクログ
<上下二巻、併せての評です>
過去と現在の出来事が、交互に語られる。親子の物語であり、家族の物語であり、類い稀な犯罪小説でもある。人はなぜ理に合わない犯罪に走るのか。やむにやまれぬ強迫観念に突き動かされた行為の裏に隠された過去が、記憶の鍵をこじ開け、じわりじわりと顔をのぞかせる。子ども時代からこだわり続ける抜け落ちた記憶。本当は誰がしたのか。物語が進むにつれ、次第に明らかになる真実。
冒頭、四年ぶりに家族のもとに父が帰ってくる。ドアが開くなり、父は母親の顔を殴り、腹を蹴り、髪をつかんで引きずり倒し、なおも蹴り続ける。二人の間に体を入れ、止めようとする長男。その長男に「あとは頼んだぞ、レオナルド(略)わかるな? おれはもう、ここにはいられない。これからはおまえが束(たば)ね役だ」と言って立ち去る父。のっけから凄まじい暴力シーンではじまる、波乱の幕開けだ。
第一部。成人したレオは弟のフェリックス、ヴィンセント、それに幼なじみで軍隊仲間のヤスペルと組んで、軍の武器庫に収蔵された銃器を強奪しようとしている。大胆かつ細心な計画はレオが立てた。レオが営む工務店を隠れ蓑に、四人で盗んだ銃器を使って現金輸送車を襲う計画だ。後に「軍人ギャング」と呼ばれることになる強盗グループの初仕事である。この作品は、そのグループの胸のすくような仕事ぶりを描くと同時に、追う側と追われる側、双方が抱える過去との確執を描く。
こうした大掛かりで計画的な犯罪が起きた場合、警察はまず過去の事件を洗い、よく似た犯罪を起こした者を探す。しかし、今回はそれが全く役に立たない。なにしろ、犯人たちはまだ二十代で、前科などないからだ。顔には覆面、指紋は残さない。犯罪に使用した着衣その他は焼却し、銃器は分解してコンクリート詰めにし、水中に沈めるという徹底ぶり。練りに練った計画、それを完璧に行うための訓練、盗んだ大量の武器弾薬の隠し場所、それらを手配し、仲間を率いて実行に移してゆくレオの采配が光る。
しかし、そのレオもはじめから優れたリーダーだったわけではない。子どもの頃、年上の悪ガキに目をつけられ、痛い目に合わされた。それを父親に見つかり、やられたらやり返せ、と毎日喧嘩の練習をさせられた過去を持つ。父のイヴァンは半分セルビア人で、半分はクロアチア人。国が自分たちを守ってなどくれはしないことを骨身にしみて知っている。家族(クラン)の結束が何よりも大事だ、と信じ切っている。
練習の甲斐あって、レオは自分より大きくて力もある相手の顔面を殴りつけ、鼻骨を折る。まず、鼻をねらえ、というのが父の教えだった。相手が自分より強くても、鼻を殴られれば一瞬怯む。涙で目が見えにくくなり、動きが止まる。次は顎に一発。そうして相手の周りを動き続け、隙を見ては殴る。それを続けていれば相手の闘争心は鈍り、勝機をつかめる。題名(原題は『熊のダンス』)はその戦法を指している。
自分のあとを継ぐ長男には、家族を守る力がいる。自分の始末は自分でつけるしかない。そう考える父に対し、スウェーデン人の母は話し合いで解決するべきだという。妻は夫の過剰な暴力に耐えられず、家を出る。イヴァンは実家に帰った妻を無理矢理連れ帰ろうとし、家に火をつけ、駆けつけた警察に逮捕される。レオと違って年端のいかない弟たちは母に乱暴した父を許すことができない。冒頭の一幕は、四年の刑を終えて戻ってきた父と母の再会の場面だったのだ。
犯人を追う立場である刑事のヨンにも過剰な暴力の覚えがある。兄のサムは、母に暴力を振るう父をナイフで刺し殺し、今も獄中にいる。人はなぜ過剰な暴力を振るわずにいられないのか。ヨンは夜毎、警察に泊まり込んでは過去の暴力事件のファイルを読むのが日課になっている。そんなある夜、現金輸送車襲撃の一報が舞い込む。事件の担当を命じられたヨンは早速現場に向かう。
犯行は計画的で緻密、人目につかない場所を逃走経路に選んでいるところから、ヨンは犯人には土地勘があると見る。その後もグループの犯行は続き、次第にエスカレートする。そしてついにはストックホルム駅構内のロッカーが爆破される。もともとは陽動作戦で、警官たちを爆破予告した場所に引きつけておき、その隙に離れた場所の銀行を襲う計画だった。爆発は想定外。レオが作った爆弾をロッカーに仕掛けたのはヤスペルだ。まだ十七歳のヴィンセントは、この事態に動揺する。フェリックスはヤスペルに詰め寄るが、レオはヤスペルをかばう。兄弟間にひびが入り始める。
弟二人がグループから離脱を考えはじめるのをよそに、レオは新たな犯行計画を披露する。それを最後に、強盗を引退するという言葉を信じ、渋々参加した弟二人だが、思っていたような戦果が得られず、レオは更なる襲撃を口にする。そんな兄に対して、フェリックスは自分の思いをぶつける。兄貴のやってることは、異論を力で封じ込め、相手を自分の思い通りに動かそうとする、かつての父親と同じだと。
人はなぜ暴力に訴えるのか。そこには理由があるはず。実際に起きた事件をその内部からながめることで、ことの本質に迫ろうとする、フィクションではあるが、限りなく事実に近い位置に身を置いて描かれた小説である。なんと、作者の一人は実行犯の兄弟の一人で、強盗には加わらなかったため作中には登場しないが、計画は知っていたという。それだけにあれだけ強かった兄弟の絆が、一度ひびが入ってから見る見る脆くなってゆく様が手に取るように分かる。そして、悲劇が待っていた。犯人の側にこんなに身につまされる小説を読んだことがない。上下二分冊。どちらもかなりの厚さだが、読ませる。