玉田誠のレビュー一覧
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『炒飯狙撃手』もう、タイトル買いです。
炒飯のレシピも知れて、狙撃手についての知識も得られるのでは? なんて魅力的な本!と、かなり軽い気持で読み始めました。
主人公は、炒飯の名手にして一流のスナイパー。台湾とヨーロッパ各国を舞台に、追手から逃れながら真相を追っていきます。
イタリアで炒飯店を営んでいた主人公が、チャーシューが手に入らず思いついた「サラミ炒飯」が美味しそう。サラミを刻んで卵とご飯と一緒に炒める。サラミは脂が多く香りもよいうえ、塩気があるのでご飯に塩を足さなくてもいいらしい。これは作ってみたい。
さて、次はどんな炒飯が出てくるのかなと楽しみにしていたのですが、スナイパー、忙しい。追われる、撃つ、逃げる、居場所を転々とする。なかなか炒飯を作ってくれません。
けれど、主人公を狙う黒幕の正体が見えてくるにつれ、炒飯!スナイパー!と浮かれて読んでいた気分も変わっていきました。
退役軍人、不法な養子縁組、諜報活動。軽快なエンタメとして楽しめる一方、その奥には台湾が歩んできた歴史や社会の影も見えてきます。
タイトルに惹かれて手に取った本でしたが、読み終えてみれば炒飯よりも台湾についての知識が増えていました。
とはいえ、サラミ炒飯は忘れない。
作ってみよう。 -
Posted by ブクログ
イタリアのマナローラで持ち帰り炒飯店を営みながら潜伏するスナイパー、小艾。指令に従ってローマの街中でターゲットを射殺し、店に戻った小艾だったが、その夜襲撃を受ける。セーフハウスへ逃れるも、執拗に迫る追手との戦いが続く。
一方、台湾では軍に関係した二件の殺人事件が起き、退職間近の刑事、老伍が捜査を開始する。イタリアでの狙撃事件を知った老伍の上司蛋頭はローマへ。台湾とイタリアでの事件に関連性はあるのか。そして小艾を狙ったのは誰か。
サスペンスとミステリーの要素がうまく噛み合って面白かった。構成で腑に落ちないところや細部で気になるところもあるけれど、勢いで読める。 -
Posted by ブクログ
保険の調査員と言うと、平成初期の全中2男子憧れの職業ですね。
彼は元軍人だった。
本作では元刑事。やはりおいそれとなることはできない仕事なのだろう。憧れは憧れのまま真相を包み込んでしまった。
チクショウ、どうやったら保険のオプに転職できるんだ!!
本作では炒飯は鳴りを潜め、主役は専ら龍珠(いかとんび)。
こちらは珍味なので食べたことがなく、想像するのみ。食べたい。
私も龍珠の真相を知りたいよ。
ついつい安倍元総理の銃撃事件を連想しながら読んだけど、台湾で起きた事件を元にしているとのこと。
古今東西、こういうことはあるのね。。。
クワバラクワバラ -
Posted by ブクログ
ネタバレ2025年の15冊目は、張國立の「炒飯狙撃手 弐
第3の銃弾」です。チャーハンスナイパーPart2です。2004年に実際に起きた陳水扁台湾総統狙撃事件が下敷きになっています。不可解とされている事件の作者なりの真相解明をお得意のスナイパーアクションを盛り込み、エンターテインメント性の強い作品に仕上げています。作品中に登場する料理を想像するのも楽しい、いかにも台湾らしいです。登場人物とその会話も良いです。蚤頭と老伍の会話は、一癖二癖も有り最高です。
主人公の小艾が日本に飛び、佐々木と組んで高野山での追っ手のスナイパーとの対決は、今作でのハイライトだと思います。傭兵時代のアフガニスタン山中での回想を交えながら、高野山の神秘的雰囲気も加えた緊迫感あるシーンに仕上がっていると思います。
☆4.6次作も楽しみです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ果たさなかった復讐の果て、死んだ妹の「本当の姿」に出会う姉の物語。ギリシャ神話の復讐神ネメシスの名を冠する、復讐代行ハッカー「アニエ」が、とにかくかっこよかった。
現代の香港、広州から香港への移民三世にあたる「アイ」は、相次いで父と母を失い、妹の「シウマン」と二人、公営住宅で暮らしていた。しかし、妹のシウマンは、地下鉄での痴漢被害がきっかけとなったネット掲示板への書き込みにより、自殺してしまう。妹を死に追いやったネット虐めの犯人を見つけ出すため、「アイ」は、裏稼業の探偵ハッカー「アニエ」に、犯人の捜索を依頼する。
いわゆる義賊モノで、「アニエ」が、その犯罪を暴き、復讐という私刑の形で罰を与える人々は、法では裁くことのできない、あるいは、裁いたとしても、軽い罰則で揺らされてしまう人々である。著者自身もあとがきで語っているように、違法なやり方ではありながらも、正義を実行する「アニエ」には、アルセーヌ・ルパンのイメージが重ねられているようだ。
何よりも印象的なのは、やはり「アイ」が妹の「シウマン」が生前にfacebookへと書き残した言葉を読むシーンだった。「妹のため」に犯人への復讐を果たすことだけを生きがいに、ついに犯人を自殺させる寸前まで追い込んだところで、「アイ」は、それまで知ることのなかった妹の本心をそこに見ることになる。
「どうして『妹の敵』なんだ? 『あんたの復讐』だろ。あんたは家族を失った苦しみから、その怒りをぶつける対象を見つけて憂さ晴らしをしたいだけなんじゃないか。妹さんにその責任を押しつけるな。妹さんの敵は、『あんたの復讐』だ。あんたの妹さんはもういない。なのにどうして、あんたは妹さんが『敵を討って』もらいたがっていると思うんだ? 死人に口なしだからって、そいつはあまりに虫がよすぎるんじゃないかね」(p456)
「アニエ」の言葉は辛辣だ。「誰かのため」は、いつでも「自分のため」というエゴのカモフラージュになる。「アイ」は、「妹のため」に敵を討とうとしたが、妹の思いは別にあった。
「その自撮り写真は、左側のほとんどをシウマンの顔が占めていて、右側には、バスルームから出てきたのか、タオルで髪を拭っている女性の姿がある。それは紛れもないアイ自身だった。アイの隣には夕食の準備をしている母がいる。二人はお喋りに夢中で、シウマンが隠し撮りをしていることに気がついていないようだった。」(p472)
ほとんどのデータが削除された、自殺した妹「シウマン」のスマホに残された二枚の写真のうち一枚は、おそらく好意を寄せていたのであろう友達とのツーショット。そして、もう一枚は、姉と母に気が付かれないように撮られた家族三人の「家族写真」だった。
「アイ」は、その写真とfacebookに残された遺言を読んで、初めて妹が何を思い、何を望んでいたのかを知ることになる。突きつけられたのは、一番身近にいたはずの妹に対する、自分自身の無知だった。
「アニエ」は、高度なコンピュータ技術を駆使し、他人のデバイスをハッキングし、ネット上から個人情報を奪いだしていく。インターネットに残された個人の足跡は、一人ひとりの、現実以上に現実な姿を、ときに死人の生前の姿さえも留めている。
それらは、誰に向けてあるのだろうか。少なくとも、「シウマン」のfacebookは偽名であり、「アニエ」が「アイ」に見せなければ、誰の目に触れることもなかったであろう心の内だった。
誰にも向けられていない言葉。インターネットには、そういう言葉が溢れかえっていることを思う作品だった。