あらすじ
第一回島田荘司推理小説賞受賞作
2020年、台湾政府は大地震の被害で寂れた台北きっての繁華街・西門町をネット上に仮想都市として再建する計画を進めていた。仮想都市=ヴァーチャストリートの制作に携わるエンジニア・顔 露華はシステムのバグを点検するため、上司の大山とともにヴァーチャストリートへ進入し、謎の男の撲殺死体を発見する。
仮想空間でその人間に起った出来事は、特殊なスーツを装着することで現実の人体にも反映される。つまり、現実世界でもその男は殺されたのだ。だが、殺人が起った時間帯にヴァーチャストリートに存在したのは露華と大山のみ。しかも二人には完璧なアリバイが? SF的設定の中に構築された高度なトリックと、結末に思わず涙する感動のストーリー。アジアから逆輸入された21世紀本格ミステリーの傑作登場。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
第1回島田荘司小説賞受賞の台湾ミステリ。仮想空間での殺人というSF的設定に隠された端正な仕掛けに大満足。さらにその仕掛けが小説全体の主題と密接に結びついているのも素晴らしい。すごいぞ台湾ミステリ!!。
Posted by ブクログ
久しぶりの華文ミステリー!
ヴァーチャル世界を上手く扱った作品で、後半に行くほど面白くなった。
仕掛けもありきたりだが上手く読後感に惹かれた。
華文ミステリーにハマりそう!?
Posted by ブクログ
VRという題材を活かした実に巧妙なミステリ。Who, How, Whyどれもよく練られている。物語の構成も見事だ。そして日本での刊行が2010年であったことを知り驚く。華文ミステリの台頭は最近のことだと思っていたが、当時からこんな作品が執筆・翻訳されていたとは。2015年以降は台湾でも新作を出していないらしいのが残念だ。
Posted by ブクログ
仮想空間で産み育てていた死んだ娘が間違って人を殺してしまったという話。縁は仮想であっても義理であっても、血の濃さではなくその人その人の性格・資質によるところが大きいのだろうなあと感じた。
ギミックとしては、仮想空間で現実の80%の力が出せるというのがやや疑問だった。相対的な制限ではなく絶対的な制限(○○キロ以下)を設けるのが、MITでドクターまで取った研究者なら、やることなのではないかと。それもソフトウェアではなく現実世界のハードウェア側に。ただそこを制限してしまうと殺人事件が起こらなくなってしまうから無理なのかな。まあそこがやや不満だったので☆4です。
Posted by ブクログ
ヴァーチャルリアリティと現実世界、過去と現在が交錯して... とややこしそうな設定ではありましたが、それほど難解ではなく分かりやすかったです。読後はスッキリ。なるほど島田荘司っぽいなあと思いました。
Posted by ブクログ
ヴァーチャルストリートで起きた殺人事件、現実の都市の過去の姿を模したその仮想都市で実際に何が起こったのか…?凝った設定と緻密な展開、途中一瞬「ああそういうことか、ありきたり」と早とちりしかけましたが、実際にはそんな浅い読みを裏切る“一枚上手”なミステリになってて、非常に面白い。ネットを利用した生活が当たり前になっている世代には読みやすい、SFになりすぎていないリアルさが良い。台湾物ということで普通の海外ミステリとは翻訳の雰囲気も異なりますが、漢字表記にカタカナルビで中華世界の香りがきちんと出ていたのも良かったです。
Posted by ブクログ
ヴァーチャルと云うものが、それほど実際に全く縁遠いものでもなくなりつつある昨今。
そしてSFのガジェットとしてはもう、全然目新しいものではなくなっている昨今。
ただその仕掛けをどのようにして利用するか、その利用の仕方にアイディアが要求され得る訳ですが、解説によるとこの物語ではそれが斬新であった、とのことです。
私はミステリもSFも両方ともに詳しくないし、何が「新し」く、「本格」かとかよく判らないので、プロがそう云うならそうなのでしょうが、何となく割り切れないと云うか。
何となく、どうしようもなく、「物語の為の殺人」と思えてしまいました。
ミステリとしての仕掛けが凝っていればいるほどそう思えてしまうジレンマがあるのかもしれませんが。
しかも、ある一つの謎が解かれずに残っていると云うのは、「本格」としてはありなのか、と思うのですが、どうなのでしょうか。
SFとしては、ヴァーチャルやAIなどもう少しで実現出来そうなガジェットを使いつつも、全体的に80年代っぽい雰囲気を醸しているのは、面白かったです。