神里達博のレビュー一覧
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本屋でパラパラめくって気になって買ってみてよかった。今年読んだノンフィクションのなかで今のところ一番面白い。
ただ、どんな内容の本かと問われると難しい。実際、このタイトルと帯で本の内容を想定すると科学と歴史についての本なんだろなぁ、というくらいだ。あと、ある程度、教養があった方が間違いなく楽しめるほんでもある。(特に科学哲学、科学史あたりの知識)
タイトル通り、今は時代の節目なのか、という問いを中心に話は進むが、オリンピックの話、地震の話、音楽を含むコピペ文化の話、江戸の経済の話と、話題だけ見ると?しか浮かばないだろう。
個人的に面白かったのが、申の巻の芸術は文明を先駆けるの話。音楽などい -
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ネタバレ自然環境やエネルギーの観点から社会や文明の成立を考えることが主要テーマとなっています。内容を少し挙げると、、、
・日本人は地震や火山噴火といった大災害が所与の条件である場所で暮らしており、天災が時の権力や社会体制を破壊或いは卑小化してきたという側面がある(日本の中央政府は古来意外に弱い)。
・天災と付き合ううちに、人間が作ってきたものは必ず壊れるという意識が醸成されてきたとも考えられ、これが「無責任の体系」(責任の所在があいまい、問題になりにくい)を形成してきたのではないかと推論。
・人類にとって定住による農耕開始が人類史における最大の革命(「農耕⇒定住」ではなく「定住⇒農耕」の順で、実は当 -
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コロナ禍が本格化した2020年に編集された本。日本社会にある様々な「リスク」の背景と、それにどう向き合うべきかを説いている、新聞の社説集のようなテイスト。
あとがきで「リスク」という言葉のいい日本語訳が無く、それゆえに日本人はこのリスクという概念に向き合いきれてないのではという疑問が呈されている。その反動として日本語で広がったのが安全安心だ、とも。言い得て妙な感じを受ける。
技術の発展で様々な便利と快楽を享受できると同時に新たな危険(リスク)も生じる。平和慣れしすぎてそのことに蓋をしてしまい、安全安心を当たり前に捉えすぎてワガママな国民性になってやしないか。そしてそれが積み重なった結果が「 -
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時代の節目と入った何を持ってそういうのか。今まで思ったこともなかったのでこの本を読んで衝撃を受けた。一風変わったテーマを取り上げているのが今回の本。
「今日の運勢」人気の謎では、「暦」同様、依存することによって自分で何をするか決断する負担が減る。その一方で責任を他者にゆだねることにもなると指摘している。
「ぐるなび」のようなグルメサイトがよく利用される理由も、他人の意見を参考にしてできるだけ「ハズレ」と言う要素を排除して、楽に決断したいという心理が透けて見える。
「やっぱり予知できないのか」では、地震の予知が話題になっている。よく週刊誌でいつ頃地震が起こる可能性が高いと言う特集を -
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資本主義は成長をし続ける宿命にある。
資本主義を加速させようとする人はそのことをよく理解している。
そしてそれに異を唱える人をナイーヴのように評価する。
しかし実のどころナイーヴなのは無批判に資本主義に乗っかったままの人だったりする。
資本主義は構造的に早晩限界を迎えることを理解していないのだ。
本書は論点も整理されており資本主義がなぜ、そしてどう限界を迎えるのかを理解する手助けになる。
確かに資本主義は恐ろしい加速度をつけて疾走している巨大なシステムだ。簡単にはとめることはできない。そしてとめることが正しいこととも思えない。
しかしその先を見据えるためにはきちっとその限界を理解して -
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対談本なのですっと読み切れてしまうがなかなか面白い指摘が多い
長いスパンで日本史(といっても有史より前も含むが)を見ると大災害が歴史的変換点の起点になっている、ということか。
日本では革命の代わりに大災害が起こっている感じが近いのか。
大災害にさらされてきた日本人はその無力感により基本的に反権力であるとの指摘が結構説得力があった。
それと何故アジアの人口密度が高いかについての指摘で単位面積当たりの米と小麦の収穫量(カロリーベース)が6倍あるとの指摘もおもしろい。
もう一つ、4大文明のうち中国文明を除く3つは滅亡したがこれの原因は資源収奪のための自然破壊(森林伐採)による砂漠化が原因との指摘に納 -
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地震や火山活動、台風などによって日本の統治システムが瓦解していくことは、実は珍しいことではない。江戸幕府が倒れたのも、黒船よりも安政の大地震によって既存の統治機構の信頼性が揺らいだからと言われている。
果たして、東日本大震災後の日本社会はどうだろうか。誰も今の政府の言うことなんか信じちゃいない。それでも世の中を覆う漠然とした不安に、我々は向き合っていかなければいけないのだ。
文明論においても、経済成長という幻想は戦後のたった40年程度のものであると結論づけている。それでも現代社会は、経済成長という至上目的を守るために、年間3万人もの自殺者を生み、数十年後には空き家率が40%に達するというの -
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景気循環だとか、資本主義の限界だとか言われている今日この頃ですが、
そんなスケールの話ではなく、
今の化石燃料をベースとした文明の終わりを
我々は、今まさに経験しているのだということを、
萱野氏と神里氏が対談で確認している。
萱野氏の超マクロな視点と
神里氏の科学史的視点が、
今まさに転換点であることを示していくのが、
逐一納得させられる。
多くの人は、この転換点を生きることは、
不安に思うだろう。
だが、それはこの上のない経験なのだ。
道を誤らないように適切に判断して、
行く末を見届けたいと思う。
自分が生きてる内に大転換できるかどうかは、
わからないが、
子供たちが、路頭に迷わないよ -
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隠岐さやかさん、瀬川至朗さんの論稿が面白かった。
隠岐さんの論稿は、近代フランスにおけるprofession(法律家・聖職者・医師等の、特定領域での公的判断を行う者)とexpert(個別領域における技術的な助言を行う者)の関係性を取り上げ、expertがどのように地位を確立していったかについて文献に基づいて解説している。
瀬川さんの論稿は、自らの記者としての失敗経験をもとに、記者としてどのように専門家への取材に臨むべきか、専門家としてどのように記者からの取材に臨むべきかの提案を記載している。
その他たくさんの著者による論稿があるが、誰がどのような視点で稿を寄せているのかを、冒頭でまとめておい