松本佐保のレビュー一覧
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ネタバレアメリカの政治における宗教の存在についてはずっと気にはなっていたが、初めてその流れが理解できた気がする。
昔、アメリカで生活した時には、キリスト教が生活に根付いていることが印象的だったのだが、それと民主主義的な価値観は、ギリギリと詰められることはなく、なんとなく共存している印象を持っていた。宗教的なものは、時代とともに、脱宗教化していくだろうと思っていた。つまり、政治とか、社会とか、経済にとってはマイナーな存在であると思っていた。
今回、トランプが2度目の大統領に選出されたのをみると、やはりこうしたアメリカの宗教性がかなりの比率で原因だったのではないかと思った。
私は、民主主義の国アメリ -
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その昔、教会は絶大な権力を握っていた。それはローマ帝国
がキリスト教を国教と認めた時から増大して行った。王権神
授説なんてのがあるくらい、世俗の王侯よりも偉い存在だ。
「破門」という武器の下、世界は教皇庁に膝を屈した。
ただし、破門されても気にしない。本来は教皇が指名する
枢機卿を自分たちで勝手に決めて送り込む等、舐め切った
態度を取ったヴェネツィア共和国は別だけど。
しかし、フランス革命以降、カトリック教会の権威は
失速を始める。本来であれば教皇が授けるべき王冠を、
ナポレオンは自身の手で掲げた。
本書は近世から現代にかけてのローマ教皇及び教皇庁の
生き残りをかけた闘いの歴史だ。
小 -
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国際関係史の松本佐保先生によるローマ教皇庁を中心としたバチカンの近現代史についての一般向け新書です。
本書では1789年のフランス革命から2013年の教皇フランシスコの即位まで、この200年強のバチカンの歴史を次の2つの側面から描いていきます。
1つ目が「バチカン市国の成立」という観点です。
フランス革命から勃興したナショナリズムは19世紀に入るとイタリア再統一という大きなうねりを引き起こします。更に産業革命によって経済的な近代化がヨーロッパ全体に波及してきます。この二つの「近代化」にたいして、宗教的権威を正当性にもつローマ教皇庁がその領土(いわゆる教皇領)をどのように支配し、1861年に誕 -
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マイクロターゲティングで個々の有権者の動向を徹底的に洗い出す。例えば、ある人が、これまての5回の大統領選挙で1回も投票した事がなければ、その人のところへは戸別訪問する事はない。ある人が、1回は選挙に行った事があって、それも自政党へ投票していれば、そこをターゲットに戸別訪問する。その人が投票に行って、自政党へいれたかどうかは、一部の郡では選挙を管理する側が投票結果まで見せてくれるところからわかる.そもそも聞き込みを入れるとわかってしまう。これに加え、ネットの書き込みとか、ブローカーから売られているクレジットカードのデータとか、それらを分析していくと、かなり精度の高い人物像がわかる。そして、その人
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バチカンが近代化と向き合い、近代化と共に台頭した革命や共産主義やその他の思想や社会運動に対して、どのように対応し、また闘ってきたかについて、フランス革命の時代から現代に至るまで、ひとりひとりの教皇の考え方を中心にまとめられている。
特に、第二次世界大戦前後の時期の教皇であるピウス11世・12世は、反ユダヤ主義および、徹底した共産主義忌避の思想のため、ナチスを容認していたという件については、残念ではあった。ただ、バチカンのその徹底した反共産主義は、のちにポーランド民主化のきっかけとなるなど、明るい側面にもつながっていく。
第二次世界大戦頃までの記述については、もう少し、共産主義忌避の背景について -
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ネタバレ近現代の世界の変化に対応するヴァチカンの歴史。特に20世紀のソフトパワーを生かした外交手腕は日本も参考になると思われるすごさ。
プロテスタントとの抗争(?)おおむね敗北したあと、改革の芽も出てきて保守派と改革派のせめぎ合いとなる。一方各地で国民国家が生まれ、特にフランス革命後は宗教の否定を含む社会/共産主義も生まれ、対応を迫られる。19世紀半ば以降のイタリアではフランスの影響を受け国民国家への動きが貴族支配を打倒して行く動きが強まる。ヴァチカンは改革派教皇が出てくるが、フランス的国民国家の動きにはついて行けず、むしろ反動で保守的な対応に戻ってしまい、教皇領を失いヴァチカンに限定されてしまう。 -
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何でも世界一に興味ある子どもなら、バチカン市国が世界最小の国家であることは知っているだろう。でも、大して信心深くもない私にとって、世界各国の群衆がサンピエトロ広場に集結するニュース映像には違和感があり、なぜバチカンが世界に多大な影響を及ぼしているのか、理解できなかった。本書では、バチカン(ローマ教皇庁)がたどってきた歴史や国際政治における活動・影響力について、フランス革命のころから説き起こしている。特に、共産圏に対するバチカン外交について詳述しており、興味深い。ただ、世界史をあまり勉強してこなかったので、前史としてローマ教皇の権威がどのように盛衰していったのか、なぜイタリアの地に諸国家が分立し
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ネタバレアメリカのキリスト教徒は、大統領選をも左右する?トランプ前大統領の誕生、他国への“人道的介入”、反中国政策。アメリカの社会、政治、外交を動かす宗教ロビーについて説く書籍。
アメリカでは、宗教が政治に大きな影響を与えている。同国の人口の約85%がキリスト教徒で、カトリックが23%、プロテスタントが55%。つまり、人口の半数がプロテスタント。
プロテスタントは、主流派と「福音派」に大別できる。
福音派の定義は曖昧だが、新約聖書の「福音書」を絶対視する原理主義的なキリスト教徒を指すことが多い。中絶に反対し、進化論を否定し、神による創造論を信じる人たちである。
プロテスタント教会は、国単位で発展 -
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アメリカにおける宗教と政治の結びつきについて解説したもの。アメリカにおけるプロテスタント、カトリックの歴史を紐解きながら、具体的などのような政策、政治家が支持されていったかということが示されており、2016年の大統領選の状況についても、ごく簡単な記述がある。
アメリカ宗教史とでも言うもので、概観するレベルを超えて、結構子細な点に渡っている印象を受けた。基礎的な世界史、アメリカ史、アメリカの政治についての知識がないと難しいと感じる。ただ、アメリカの歴史を宗教の点からとらえ直し、新たな視点が得られるという面白さがあった。
例えば「禁酒法とカトリックの関係」(p.58)では、「アイルランド人の