あらすじ
アメリカの社会、政治、外交を考える上で、宗教、すなわちキリスト教の役割ははずせない。伝統的なキリスト教が衰退する一方で、プロテスタントの非主流派「福音派」が政治化・多様化し、それがトランプ前大統領誕生へとつながり、世界に大きな影響を与えたのだ。福音派の歴史や信仰から現代社会に与える影響、アメリカでの宗教ロビーの役割をわかりやすく解説。新型コロナ感染症に対するカトリック、福音派の動きや、2020年大統領選挙に与えた影響も盛り込む。
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Posted by ブクログ
アメリカの政治における宗教の存在についてはずっと気にはなっていたが、初めてその流れが理解できた気がする。
昔、アメリカで生活した時には、キリスト教が生活に根付いていることが印象的だったのだが、それと民主主義的な価値観は、ギリギリと詰められることはなく、なんとなく共存している印象を持っていた。宗教的なものは、時代とともに、脱宗教化していくだろうと思っていた。つまり、政治とか、社会とか、経済にとってはマイナーな存在であると思っていた。
今回、トランプが2度目の大統領に選出されたのをみると、やはりこうしたアメリカの宗教性がかなりの比率で原因だったのではないかと思った。
私は、民主主義の国アメリカは好きなんだけど、神の国アメリカはとても苦手。
これからは、アメリカだけでなく、各国で宗教をベースとしたナショナリズムが力を増していくのではないかという感じがしてきた。
Posted by ブクログ
同著者の前著『熱狂する「神の国」アメリカ 大統領とキリスト教』がとても良く、ぜひ同著者による「その後」(トランプ後)の解説も読みたいと思っていましたので即買い。私が既に色々と知っているからかもしれませんが前著ほどのインパクトはありませんでしたが、まさに「その後」の解説を興味深く読みました。
宗教的背景が分からないとアメリカの政治や外交の半分も分からないとつくづく思う次第。
Posted by ブクログ
アメリカ政治、特に大統領選において大きな存在感を発揮している福音派やカトリック保守の関連団体・人脈がいかにトランプ陣営の大物たちと深く関わっているかを解き明かす。2020年の大統領選でトランプは敗北を喫したとはいえ、彼の政策に賛同した宗教ナショナリストの勢力がなくなったわけでもなく、今後もアメリカ政治において存在感を増し続けるであろうことを思うと、現代アメリカ政治を動かす要因である宗教ナショナリズムのネットワークにいちはやく解剖のメスを入れた本書の内容は、今後のアメリカ政治の動向を観測する上での基礎となるのではないだろうか。
Posted by ブクログ
アメリカのキリスト教徒は、大統領選をも左右する?トランプ前大統領の誕生、他国への“人道的介入”、反中国政策。アメリカの社会、政治、外交を動かす宗教ロビーについて説く書籍。
アメリカでは、宗教が政治に大きな影響を与えている。同国の人口の約85%がキリスト教徒で、カトリックが23%、プロテスタントが55%。つまり、人口の半数がプロテスタント。
プロテスタントは、主流派と「福音派」に大別できる。
福音派の定義は曖昧だが、新約聖書の「福音書」を絶対視する原理主義的なキリスト教徒を指すことが多い。中絶に反対し、進化論を否定し、神による創造論を信じる人たちである。
プロテスタント教会は、国単位で発展してきた。
その影響もあり、プロテスタント(特に福音派)は愛国心と結びつく傾向が強い。例えば、アメリカプロテスタント系最大教派の南部バプティスト連盟は、神学的・政治的に保守・右派的である。
アメリカでは、地域によって信仰態度が異なる。
中部および南部のキリスト教信仰が篤い地域は、福音派の比率が高く「バイブル(聖書)・ベルト」と呼ばれている。
福音派が共和党、保守政治にとって重要な要因となったのは、1980年のレーガン政権以降である。
→積極的に政治参加を行わないと、キリスト教的な価値観によるアイデンティティと社会や生活が脅かされると感じたため。
妊娠中絶合法化の判決を支持するなど、キリスト教的な価値観を脅かすカーター大統領に対抗すべく、真逆の政策を掲げるレーガンを大統領選で支持し、当選させた。これが「政治化」するきっかけとなった。
→福音派の支持を獲得するためには、大統領本人の信仰心より、いかに福音派が求めている政策を公約として掲げ、それを実行することが重要であるかを示した。
アメリカが行う「人道的介入」にはキリスト教的な発想がある。トランプ前政権は「宗教の自由」を外交の1つの軸とし、イスラム国を倒した。そして今、最大の敵は宗教を弾圧する中国となり、宗教をめぐる外交は大きく転換しつつある。