一條次郎のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
新潮社の夏の100冊かなにかで買った本。特に前提知識なく読み始めたので、てっきり昭和~平成ころのナンセンス小説の1つかと思ったら、かなり新しい本だった。
この手の本は世界観やSFっぽい部分に合う合わないがはっきり分かれると思う。例えば、キョリスの姿を何でもいいからイメージできる人は強い。
残念なスパイが市長を狙うはずが、その市長と仲良くなった、という導入はまあありそうな話ではある。そこから、この話にどうやってオチをつけるのかが気になったので、そこまでダレることなく最後まで読めた。とはいえ、じゃあ一條さんの本を追いかけたいかというと、そこまではまらなかったのも事実。年を重ねて自分がこういう本を受け付けなくなっただけかもしれないな。 -
Posted by ブクログ
〈「映画なんてどうでもいいさ。百年後だって見れるんだからな。その気になればいつでもだ。人類が滅亡してものこってるんじゃないのか。あんなのはただの人工的な光の明滅だ。わざわざ見る気もせんよ。だが、おまえは世界だ。人間たちは世界を見ずにスクリーンばかり見てるがな。真の世界が映ってるとでもおもわされてるんだろうな」〉
悪名高きマフィアのボス、シベリアーリョ・ヘヘヘノヴィチ・チェレンコフは殺された。武装警官隊の銃弾を全身に浴びて。オウムガイの密漁が原因だ。生き延びたペット、アザラシのヒョーはチェレンコフの亡霊(?)の言葉に従うように、誕生日にボスから貰ったアザラシ専用座席のあるゴルフカートに乗り、レストランを目指す。
……というなんだか不思議な導入ではじまる本作は、アザラシが世界と対峙する作品です。強烈なブラックバイト、聞こえるオウムガイの呪詛、生き別れの兄弟、迫りくる世界の変容。枠組みから逸れたようにはじまる物語は、枠組みの中に入ることなく、どんどん枠組みから遠くへ離れていく。この物語は、この世界は、私をどこへ連れて行ってくれるのだろう、とわくわくしてしまう物語です。不条理な会話はコミカルなのに、なんだか心を抉ってくる。そんな素敵な作品です。 -
Posted by ブクログ
伏線かと思っていたものは伏線ではなかった。小説たるもの、張られた伏線は回収されるものだという先入観があった。次から次へと描かれる不可解な現象は、それ自身で完結しているもので、特に他の現象と何か関係があるわけでもなかったような気がする。とりあえず、よくわからなかったが、わかるわからないとかそういうことではないのかもしれない。その中でもなんとか掴むことができたのは、自我とは何か、自分とは何か。何が自分を自分たらしめているのか。現実は思ったよりも不確実で説明できないよってことなのかな。読んでいる間は、没入感があって楽しかったけど、読み終わったあとは夢から覚めた後にも近いような感覚で、急に自分がいた世界が全く理解できないまま閉じてしまった感じ。終始不穏な感じもまた良い。
-
Posted by ブクログ
「市長を暗殺しにこの街へやってきたのに、そのかれと友だちになってしまった……。」
この最初の一文で、「え、どういうこと?」と引き込まれてから、最後までずっと「え、どういうこと?」という展開が続く。
こんな適当な小説はなかなかお目にかかれない!そのくらい面白かった。
主人公は73歳のおじいちゃんスパイ。初めての指令が市長暗殺。そしてダンスが得意。
この時点ですでに面白いのだけど、さらになぜか自分がスパイであることが街中に知れ渡り、奇天烈な言動をする人たちの騒動に巻き込まれてしまう。
主人公も、読者である私も、常に?マークを頭に浮かべながら、怒涛の意味不明な展開に飲み込まれていく快感。これぞ小説の醍醐味。
巻末の伊坂幸太郎さんとの対談も面白かった! -
Posted by ブクログ
ネタバレ前回の長編「レプリカたちの夜」よりもかなり読みやすくなった気がする。前回は話が何処に向かっているのか分からない怖い程の闇を覗いた感じやったけど、今回はそういう恐怖は感じず、まだ安心して(?)最高にぶっ飛んだ感を楽しむことができた。
幼少の頃からスパイの英才教育を受けた73歳のスパイが初任務で市長を暗殺しようとして、友達になってしまうというふざけたストーリー。暴動のくだりなんかはホントにどうやってこの話終わるの大丈夫かなと不安になったけど、あんなにカオスだったのに結局殆ど誰も死なないハッピーエンドになのが良い。「ニホーン国」とか「ロッキン肺炎ブギウギ流感」とか「フリースタイルオクラホマミキサースペシャル」とか「キョリス」とか色々ふざけ倒してるのも好きだし、「用心するのを忘れないように用心しよう」のくだりは健気過ぎて73歳のおじいちゃん可愛すぎてやばかった。一方、「わたしたち」と「あいつら」の違いの区別がどこから来るのかという大きなテーマも出てきて、ふざけ倒してるるのにいきなり真面目になるからドキッとする。「手数料がかかるかどうかわからず試しに千円だけおろしてみる」っていうのが作者の実体験というのには笑った。色んな描写に作者の性格が濃く出ているのだろうな。最後の伊坂さんとの対談も面白かった。
1+1=2になるような文章しか受け付けない人は多分一條さんは読めないないと思う。この本は人を選ぶ作風ではあるけど、文章でどこまで面白いことが出来るかを試している様な作品なので(たぶん一條さん本人は直感で書いててそこまで深く考えてないと思うけど)。個人的には読書は1+1=無限であってほしいタイプなのでこういう本はたまに読むととても楽しい。ウェス・アンダーソンやフランツ・カフカ辺りが好きな人は好きになれると思う。不条理を楽しめる人は是非。 -
Posted by ブクログ
男より女が強い作品はいいぞ
本作を一言で表すならなんじゃこりゃ(笑)
しかし非常にテンポがよろしく痛快
数々の参考文献のリストが裏打ちするように
本作には相当な準備と推敲を重ねたのだろうが
しかし結果として載せられている文章は大胆
実に大胆に軽やかに情景を心情を台詞を回していく
そしてスルスルと次の場面へと移っていく
でも強引でもない
不思議だけど不快感はない
きっと、この作者特有の文章力がなかったら
それだけでこの作品は破綻していたはずだ
それほど文章力には天性の魅力を感じた
なによりキャラクター達の台詞回しがいい
どのキャラクターも下手にアニメ臭くない、
真の意味で言葉選びの差異によるキャラ立てが完了している
うみみずなんか特に痛快だ
男キャラより女キャラの方が強い魂をもっていると感じる
こういう作品はそれだけで当たりだ
作者の本音は悪役に喋らせろ、
なんてメソッドがあるとかないとかだが、
それでいくならこの作者は実に巧妙に
発露したい・表現したい事柄を魅力的なキャラクター達に潜ませている
その出し入れの繊細さがアニメ臭くない上品な雰囲気を出しているのかな
安心してまったり読めた
アール!!!!