一條次郎のレビュー一覧
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〈「映画なんてどうでもいいさ。百年後だって見れるんだからな。その気になればいつでもだ。人類が滅亡してものこってるんじゃないのか。あんなのはただの人工的な光の明滅だ。わざわざ見る気もせんよ。だが、おまえは世界だ。人間たちは世界を見ずにスクリーンばかり見てるがな。真の世界が映ってるとでもおもわされてるんだろうな」〉
悪名高きマフィアのボス、シベリアーリョ・ヘヘヘノヴィチ・チェレンコフは殺された。武装警官隊の銃弾を全身に浴びて。オウムガイの密漁が原因だ。生き延びたペット、アザラシのヒョーはチェレンコフの亡霊(?)の言葉に従うように、誕生日にボスから貰ったアザラシ専用座席のあるゴルフカートに乗り、 -
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伏線かと思っていたものは伏線ではなかった。小説たるもの、張られた伏線は回収されるものだという先入観があった。次から次へと描かれる不可解な現象は、それ自身で完結しているもので、特に他の現象と何か関係があるわけでもなかったような気がする。とりあえず、よくわからなかったが、わかるわからないとかそういうことではないのかもしれない。その中でもなんとか掴むことができたのは、自我とは何か、自分とは何か。何が自分を自分たらしめているのか。現実は思ったよりも不確実で説明できないよってことなのかな。読んでいる間は、没入感があって楽しかったけど、読み終わったあとは夢から覚めた後にも近いような感覚で、急に自分がいた世
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「市長を暗殺しにこの街へやってきたのに、そのかれと友だちになってしまった……。」
この最初の一文で、「え、どういうこと?」と引き込まれてから、最後までずっと「え、どういうこと?」という展開が続く。
こんな適当な小説はなかなかお目にかかれない!そのくらい面白かった。
主人公は73歳のおじいちゃんスパイ。初めての指令が市長暗殺。そしてダンスが得意。
この時点ですでに面白いのだけど、さらになぜか自分がスパイであることが街中に知れ渡り、奇天烈な言動をする人たちの騒動に巻き込まれてしまう。
主人公も、読者である私も、常に?マークを頭に浮かべながら、怒涛の意味不明な展開に飲み込まれていく快感。これぞ小説 -
Posted by ブクログ
ネタバレ前回の長編「レプリカたちの夜」よりもかなり読みやすくなった気がする。前回は話が何処に向かっているのか分からない怖い程の闇を覗いた感じやったけど、今回はそういう恐怖は感じず、まだ安心して(?)最高にぶっ飛んだ感を楽しむことができた。
幼少の頃からスパイの英才教育を受けた73歳のスパイが初任務で市長を暗殺しようとして、友達になってしまうというふざけたストーリー。暴動のくだりなんかはホントにどうやってこの話終わるの大丈夫かなと不安になったけど、あんなにカオスだったのに結局殆ど誰も死なないハッピーエンドになのが良い。「ニホーン国」とか「ロッキン肺炎ブギウギ流感」とか「フリースタイルオクラホマミキサー -
Posted by ブクログ
男より女が強い作品はいいぞ
本作を一言で表すならなんじゃこりゃ(笑)
しかし非常にテンポがよろしく痛快
数々の参考文献のリストが裏打ちするように
本作には相当な準備と推敲を重ねたのだろうが
しかし結果として載せられている文章は大胆
実に大胆に軽やかに情景を心情を台詞を回していく
そしてスルスルと次の場面へと移っていく
でも強引でもない
不思議だけど不快感はない
きっと、この作者特有の文章力がなかったら
それだけでこの作品は破綻していたはずだ
それほど文章力には天性の魅力を感じた
なによりキャラクター達の台詞回しがいい
どのキャラクターも下手にアニメ臭くない、
真の意味で言葉選びの差異