小田中直樹のレビュー一覧
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何回か読み直しましたが、その都度考える機会をあたえてくれる是非ともお勧めしたい書籍です。あまりしないことですが、知人に何冊かお配りしました。
かつて、大塚久雄、丸山眞男、内田義彦などが文化系大学入学者の登竜門でした。色々な著作を読み、ゼミなどで自分の専門分野を深めていくいくにつれて、これらの書かれた啓蒙書の意味などがわかってきたように思われます。本書はいきなり理解できます。
本書は、タイトルのように歴史学とはいったいどういうものであるのか、あらねばならないのかを解説しています。だが、深いですね。社会、人文科学というものは科学たりえるのかという考察をしています。言葉の定義づけもしっかりされていて -
Posted by ブクログ
本書は「素人のための歴史学入門講座」(「内容紹介」より)と銘打っているように、歴史を専門的に学んだことのない人々-特に、歴史は“暗記”であり、社会の役に立たない“虚学”だと思っている人々に向けた一冊である。
筆者が強調するのは、歴史学における“プロセス”の重要性である。それは、歴史家に必要な資質を「疑い、ためらい、行ったり来たりすること」(p.151)だと規定していることからも分かるだろう。つまり、教科書の記述(解釈)を暗記することが重要なのではなく、むしろ、その解釈を疑い、史料を通じて「より正しい解釈」を導き出す営みこそが、歴史学の本髄であると指摘する。さらに言えば、与えられた前提を疑い、 -
Posted by ブクログ
「フランスは分裂と統合の弁証法」のプロセスを生きている、と著者が言います。フランス革命をはじめとして、フランスは近現代の歴史の中で、幾度も国内での対立を統合する新しい力が生まれて、新しいフランスが生まれてくる、と。
フランスの特徴として良く上げられるディリシズム(国家介入主義)、テクノクラートによる政治・経済界の支配、失業や移民問題が、第二次世界大戦後の時間軸に沿って明快に解説されています。
またフランスの現在の政治状況を、a) 親欧州/経済自由主義とその反対および b)親移民受入/文化多元主義とその反対という2つのベクトルにより分類しています。環境など他にもベクトルはあるのでしょうが、フ -
Posted by ブクログ
分かりやすい言葉で書かれた歴史学の入門書です。
そもそも歴史学とは何かという問いを立てるのであれば当然、史実の認識可能性についての議論に立ち入らなければなりません。本書でも、構造主義の源泉となったソシュールの言語論以降、私たちは歴史をあるがままに認識することができるのか、という深刻な問いにさらされたことに言及されています。さらに、上野千鶴子が構築主義の立場から従軍慰安婦論争に参戦した経緯などの例をあげて、歴史学者はどのようにして「史実」にアクセスできるのかという問題が、単なる歴史哲学上の理論的な問題にとどまらず、アクチュアルな意味を帯びた問題であることが浮き彫りにされています。
ただし著者